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ある日、咳をするカスミばあちゃんの背中を撫でた。


魔素が体にどう流れ込んでいるか、探ってみると、石みたいに肺に固まっていた。

ゆっくりと流れるか試しに、弱く肺の中の魔素を撫でるように干渉してみる。

びくともしなかった。

長い年月で肺の中に積もり積もった魔素なんだろう…


「ななちゃんの手は温かいね…」


うん、難しい…カスミばあちゃんの年齢も考えないと、急激な変化はダメだ!

取り合えず、血に流れている魔素を小さな金剛石に吸収出来るかな?


少しだけ吸収出来た。でも、まだまだ末端で止まってたり流れてたりしている。

毎日、背中を撫でて、吸収しながら、この凝り固まっている少しずつ魔素をほぐした。


お守りを作って、私がいない間も溜まらないようにしよう!




取り合えず、毎日吸収した魔素を空っぽにするために、家に帰ってから炭を金剛石へと変性したりした。


この頃、お風呂の調子が悪いから銭湯に毎日のように行っていた。


ガラスの素材を手に入れる為に、瓶のオレンジジュースや牛乳の瓶を銭湯で買って、家で飲むからと、持って帰るを繰り返す。


しかし、何回も繰り返したら銭湯のおばちゃんに今度瓶を持って来てねと言われてしまったのだ…

瓶は回収して、洗ってリサイクルらしい、困ってしまった。

取り合えず、謝まった。


だってもう原型を留めてません。下手に返せなかった。


おばちゃんは謝ったら、今度からは回収させてねと言ってきた。


問題が起きたが、取り合えずのガラスは集めた筈だ。


まあ、カスミばあちゃんの為だ!いくらでも頭を下げれる。

風呂掃除の手伝いで許して下さいって言ったら、其処まで大層な事じゃないと笑われた。

常識が難しい。


魔方陣を刻む小さなガラスの錬成、持ち運べる小さい魔方陣の練習を繰り返し。

魔方陣がキチンと作用するか試しに自分のお守りも作った。


取り合えず1つの魔方陣、分かりやすく筋力2倍の魔方陣だ。


上手く行ったが、次の日の筋肉痛には辟易した。

説明が面倒なので、普通に動こうとするが、バレバレだっただろう。


取り合えず、猫のミオと鬼ごっこをしたって言っておいた。

ばあちゃんは不信そうな顔をするが、諦めたようにため息を吐いてた。


大丈夫だからと無理矢理仕事に行かせた。

その後、筋肉痛で震える手で頑張って回復促進の魔方陣を錬成し、少しマシになった。


こんな失敗が私なら全然良い、お守り作製には為になる。

私でも2倍は体に負担になると分かった。


5才の体だからかもしれないが魔方陣の力が強くかかった、やっぱり使ってみないと分からないもんだ。


カスミばあちゃんのお守りには魔方陣の重ね合わせが必要だろうし、喧嘩しないよう調整も必要だ。


三才の時の汚いメモ書きがとても役に立った。魔方陣の細かい記憶があやふやになっている。残してくれた三才の私は偉い!


しかし、魔素を込めない時は、正しい角度とかはキッチリしなくちゃダメだけど、魔素を利用し刻む時は多少の誤差は大丈夫なんて知らなかった。

魔石がない不便な事で新たな発見がある。


その柔軟性があったから、魔方陣の重ね合わせが可能なのだ。

魔方陣の書き方1つでこんなにも奥深いと感動した。


何回か、お守りの実験を繰り返し、じいちゃんやばあちゃんにもお守りの実験台にもなってもらった。コッソリと、普段持っているお守りにいれた。

事故回避とか、厄除けとか、疲労回復とか喧嘩しないようにユルーク入れたお守りだ。

相乗効果?で1つ1つは小さくても地味に効いているみたいだった。


カスミばあちゃんに魔素排出と疲労回復と厄除けの重ね合わせにしてみた。

私には魔素がまだ体に入ってないし、持っててもなんの効果も感じられない。

うん、それくらいの力の作用が良いだろう。


無理矢理引き出そうとする方がオカシイし、カスミばあちゃんに渡してみた。



ドキドキの1週間だった。

他の人に見せたら効果が無くなるからと、小さな袋に入れて渡した。

カスミばあちゃんの背中を撫でるが、なんの変化も分からなかった。

失敗だったかと、落胆し、その日の作業は手につかず。


2日目、顔色が良いカスミばあちゃんを見てホッとする。

背中を撫でると、少し血にあった魔素が少なくなっていた?


3日目、咳が出るからと、カスミばあちゃんに会えなかった。


4日目も5日目も会えなかった。




6日目、お守りを返してもらおうと、絶体に会うと覚悟を決めてお地蔵様の所に行くとカスミばあちゃんがいた。




マスクをしているが、掃除をしている。



「カスミばあちゃん!」



耳が遠いって知っているのに声をかけた。

カスミばあちゃんが振り向く、


「あら、おはよう、私が来てない時は掃除1人でしてたの?お見舞いにも来てくれたんでしょ?ありがとうね。これ、飴ちゃん食べる?」


小さな袋を貰った。


「あんなキレイなお守りくれたのに、お返しちゃんと出来なくて、取り合えず、お掃除頑張ってくれた、お礼ね。」


少し掠れているが、先週の力ない声でなかった。


「ちょっと風邪引いてしまって、嫁が家から出るな!って言うから、出られなかったけど、風邪ひく前より元気だったの、まだ咳が出るけど、来ちゃった。」


そう言ってニコニコ笑った。


「ななちゃんがくれたお守りのお陰だね。」


そう言って、咳をする。マスク越しに魔素がこぼれ落ちた。



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