4
「お前は、わさわざ改めて、魚を釣っているのをダメだと言いにきたのか?」
「へ?」
アイツが言う。
「ばあちゃんやじいちゃんもある程度、私が魚を釣っている事は把握している。まあ、何処で釣っているかまでは知らないだろが。」
表情が変わらないから、俺にはコイツの感情は分からないけど、俺はイライラした。
「…お前って言うな、俺の名前は晃だ。」
「名前?ああ、名前か?源さんの孫のアキラか?」
「…何故、じいちゃんの名前が出る?」
「源さんは友達だからだ。」
当たり前のように言うこいつは、じいちゃんが友達?
「図鑑と本をくれた。お前、アキラが要らないからって、ありがとう。」
「姉ちゃんと兄ちゃんの本?」
俺には高校1年の姉ちゃん、中学2年の兄ちゃんがいる。
どっちも遊んでくれない。こいつは、つまらない姉や兄の本を貰って喜んでいる。
「お前は、友達は俺のじいちゃんだけか?」
「ミオも友達、カスミさんも一緒にお茶する」
子供でミオもカスミさんの名前は近所にいない。友達いるなんて嘘だ。
「友達いないなら、友達になってやっても良いぞ」
「だから友達いるが?」
平然と俺と友達にはならないと言われた気分になった。
「嘘つけ、近所にミオもカスミさんって子もいないじゃねえか!」
「お前が知らないだけだ。」
無表情で俺を見ている。クソ、バカにしやがって!
「嘘つきヤロウ!お前って言うな!バーカ!バーカ!」
俺はムカムカしながら家に帰った。
家に帰った後、居間でふて寝していると、
「お昼御飯食べて!」
かあちゃんが俺のお尻を叩く。
「腹へってない!」
かあちゃんが顔をしかめたが、思い出したって顔をした。
「そういや、ななちゃん家に行ってたね?なんかご馳走になったの?」
しまった。魚を食べさせてもらったのに、お礼も言えてない、かあちゃんに怒られる!
「…魚とトマトを食べさせてもらった」
「あら、本当に?ななちゃんが?」
なんか、かあちゃんはニコニコ笑っている。
「ななちゃんが、魚を10時くらいにオヤツで自分で食べているって北田さんから聞いてて、まさかとは思ってたんだけど、そうか~食べさせてもらったのか~良い子でしょ?」
「何処が?あんな嘘つき!」
俺はアイツの評価が高いのがムカつく。
「ななちゃんが嘘つき?」
「ミオって子とカスミさんって子が友達って言うから!そんな奴いないじゃないか!俺と友達なりたくないから嘘ついたんだ!」
かあちゃんは目を真ん丸にして、首をひねる。
「…カスミさん?仲が良いって事ならカスミばあちゃんの事じゃない?ミオって子は知らないけど」
「え?」
「お隣のカスミばあちゃんとよく話しているよ。角のお地蔵様の掃除をよくしてくれているから、お地蔵様の横でお話ししているけど、見たことない?」
そんなの知らない、お地蔵様の近くは事故が多くて、近寄るなと父ちゃんが言うから…
カスミばあちゃんは、お地蔵様沿いに家がある、わが家の優しい隣さんだ。
一時期元気なかったけど、最近元気になって散歩している。
「アイツの友達ってウチのじいちゃんとカスミばあちゃんかよ!」
ポカリとかあちゃんが頭を叩く。
「痛い!何をするんだよ!」
「何を言っているんだい!ここら辺の子供って、サトシ君とあんたぐらいだろ!あんたがバカに出来る立場じゃないよ」
「バカにしてる訳じゃない!アイツは友達いるから、別に友達いらないって言ったんだ!」
「…バカは、アキラお前だろ?変な言い方したんだろ?」
俺は言葉に詰まる。先に友達いないと決めつけて…嘘つき呼ばわりしたのだ。
「ハー、相手は女の子なんだよ?サトシ君と同じようにしてどうするの?友達になりたかったら、優しくしなきゃ」
「誰があんな奴と友達になるか!サトシ兄ちゃんが女は俺達の遊びに付いてこれないって言ってた!」
かあちゃんは又もや呆れた顔をする。
「…三才くらいにななちゃんと会わせようと思ってたんだよ。でもななちゃんのお母さんが亡くなってから、ななちゃんのじいちゃんが、アキラにはななちゃんの友達は色んな意味で無理だろうって言い出して。詳しくは聞いてないんだけど、アキラの方がななちゃんに付いてこれないくらい活発らしいよ、比べるもんじゃないけど、ななちゃんしっかりしているから」
知っている。俺よりずっと色んな事出来る。
「無理に友達になるもんじゃないけど、女だからとか、体が小さいとか考えてると小学生になったら友達あんたの方が出来ないよ。」
ウルサイ、かあちゃんはいつも本当の事を言って、俺を困らせる。
俺は言い返す事は出来ない。
クソ、なんで、アイツ友達になってくれっていわないんだよ!
サトシ兄ちゃんや俺も相手しなくて寂しくないのか?変だよアイツ!




