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ばあちゃんが出て行った戸を呆然と見るしか出来なかった。

お父さんの話もびっくりだし、

魔力以外の力を検知したって事もびっくりした。


しかし、一番びっくりしたのはあの袋にかかった力だ。


お母さんの優しい声を思い出すような…目蓋閉じるとお母さんの気配を感じるような…

引き出しを凝視する。引き出しに入れたら全く分からないくらいの気配しか分からない。


そっと引き出しを開ける。空っぽに近い引き出しに袋が入ってた。


見るのは怖い。


引き出しをすぐ閉め、お母さんやお父さんの事を考えない方が良いのではないかと思う。私には劇薬だ。


この袋にかかった力が何なのか私には分からない。未知の分野だ。


前の世界でもあったのかもしれないが、見た記憶はない、聞いた事はあっただろうか?

記憶があやふやな分、自信はない。


しかし、はっきり記憶がある事はある。

魔法や魔術なら術後にほとんど気持ちが残っていないのだ。


というか、感情的になると魔法や魔術は大概失敗する。

どんなに気持ちを込めても魔法は魔法でしかない。魔石や魔方陣を使う魔術も然り。


それにこんな気持ちや感情に対応出来る程私は大人じゃない。

どちらかと言うと、無視とまでは言わないが、イヤ見ても分からないからと…イヤよそ見をしてたら、助かる命も助からなかったからと言い訳し…


ただ、この感じる優しい感情に愛情に慣れなくて、他人の母と子の姿を見ようとしてなくて…

きっと前世で欠落していた母親の存在を感じて…


はっきりと記憶にないのに、こんなに感情が揺さぶられるなんて、よっぽど非情な生き方をしていたみたいだ。

やはり私が私でいられるか、この袋の観察は劇薬だ。


ばあちゃんのさっきの様子を見ると、きっとそこまでの力もないただの袋なんだろう。

私と同じように感じてたら、もっと大切に鍵がかかる金庫に入れ、こんな幼児に触らすなんて絶対あり得ないくらいばあちゃんにとっても大切なものだ。


いや、怖い、ただがむしゃらに怖い。

未知の力と言う事も怖い、どう対応したら、間違って対応したら誰かが事故にでもあったら…


一番怖いのは、母親の気持ちが詰まったこの袋。どんな事を祈ってたのか…

もし見たら、傷付くんじゃないか…

逃げたしたい…



怖いのに手が動く、あの優しい感情を知ってしまった。

見なかったら逃げられたかもしれない。


母親の気持ちを受け止める事なく、子供らしく甘える事も出来なかった愚かな私。

もし、お母さんの事故が魔素溜まりなら、この袋も原因の一つの可能性がある!


どう転んでも、ばあちゃんの様子なら私に見せただろう、それが早いか遅いか…


今、私が催促した形になり少し早くなってしまったが、逃げてもきっと気になって、何も手につかなくなるだろう…

私が私でいれなくなるかもしれないが、傷付くかもしれないが、見よう。


お母さんの祈りを調べてみよう。


お母さんごめんなさい、きっと普通はこんな覗き見出来ないと思う。


見せたくてこんな気持ちを込めてなかっただろうし…


普通じゃない事がこんなに心が痛いって初めて分かった気がした。



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