11 大切な指輪
ボンヤリしていると、ばあちゃんが何か持ってきた。
使い古した皮の袋だ。紐だけが長い。
「これね、ななちゃんのお母さんが大事にしていたの。だからななちゃんも大事にしてね」
ななとしての記憶にもお母さんが肌身離さず持っていた袋だと分かる。
何が入っているか知りたかった。
しかし、その袋を握りしめる母親の様子を見ると、触るのも、覗くのも出来なかった。
それをじっくりと見つめると、何かを感じた。
これはなんだ?私には魔力感知しかない筈だ。
これは魔力じゃない、違う事は分かる、昨日ばあちゃんから感じた力に良く似てる。
袋には守り、決して紛失しないように願う思い?、目立たず視界に入っても気付きにくい?祈り?の力がかかっている。
ななの記憶にもこの力を感じたことはない。
こんな泣きたくなるような優しい気持ちを感じる波長は記憶はない。
ばあちゃんは不思議そうな顔で俯いた私の顔を覗きこむ。
「…さわったら、お母さんがメッ」
どう言って良いか分からず、触るのがダメだと訴える。
「良いんだよ、これはお母さんが大事にしていたものだけど、ななちゃんが触るだけなら、誰も怒らないよ」
ばあちゃんが優しく言う。
涙がポロポロとこぼれる。
だって、大事にしてたんだよ?こんな幼児に許したらダメだよ!
こんなに大切に思う気持ちが分かるくらい大切なものだったんでしょ?
ばあちゃんが困ったように私を見てる。
「今無理に触らせようとは思ってないよ。これね、ななちゃんのお父さんがお母さんに渡したものなんだ。」
私は顔を上げる。何だって?ななの記憶にないお父さん?確か、死んだって言ってた?お父さん?
「私も詳しく聞かなかったし、あの子も言わなかったし、ななちゃんに教えてあげることホント少ないんだけど…」
びっくりし過ぎて、涙がとまる。そうか、ななにもちゃんとお父さんはいたんだ。
「もっとちゃんと話さないといけなかったね…」
ばあちゃんは悲しそうに微笑んだ。
「今触れなかったら、無理に触らなくて良いよ。ここの引き出しに入れとくから、出したらちゃんと直したら大丈夫だから。」
そう言って私の頭を撫でると、部屋を出て行った。