第一話 転移
「どうゆうことだ…」
俺、笹原 荘太は神様に選ばれ、異世界に強制ワープさせられていた。
しかしその世界は魔王軍によってすでに人類が滅ぼされていたあとだったのだ。
「神様め…」文句は言いたくなる。神様はこの異世界の事などあまり説明しなかったのだから。
これは一日前に遡る…
「おめでとう!君は私に選ばれたんだ!」
「…貴女は?俺は確か学校に居たはずなんですが」…此処はどこだ。当たり一面真っ白な世界だ。俺は確かに学校に居たはずだが。
「あぁ、自己紹介をしようか、私の名前はフェルアラース。フェルと呼んでくれ。」
「俺は…笹原 荘太と言います。それでフェルさん、此処はどこなんでしょうか。」
「此処かい?此処は君たちの世界で言うところの天界さ。」
「天界!?なぜ俺が天界に!?しかもさっき選ばれたとか言ってましたが!?」
「そうさ、君は私に選ばれた。君は世界を救う救世主になる存在だ。」
「世界!?救世主!?ちょっと待ってください!いきなり言われても意味がわかりません!」
「まぁそうだだろう。しかしだな、あまり時間が無いんだ。悪いがすぐに君には異世界に行ってもらう。」
「ちょ、話が本当に理解できないし、そもそも俺は死んだんですか!?」
「何を言っている。君は死んではいない。私の所にワープさせただけだ。まぁ、君がいた世界では君は心臓発作で死んだことになってるがな。今頃クラス中大変なことになってるだろうな。」
「え、俺死んでないのに!?」…駄目だ、頭が痛くなってきた。これ以上はもう考えたく無いな。
「とにかくだ。もう時間がない。今から君に行ってもらう世界は人類と魔族がいる世界だ。その世界では人類側が魔王軍により絶滅しそうになっている。それを君になんとかして貰いたい。それと、少しばかりではあるが私の力を授けよう。」
「まだ話は終わってないんですが!!」俺が言い終わると同時にあたりが暗く、そして何も見えなくなった。
…次第に辺りが見え始めてきた。此処は土が乾燥し、でかい石が沢山ある。どうやら俺は荒地にいるようだ。
「はぁ…」俺は大きな溜息をつく。ワープさせるならもっとマシな場所があっただろうに。なぜこんな場所なんだ。
あの神様、絶対次に会ったら許さない。俺は心にそう決めながら行くあてもなく歩き始める。
…どれくらい歩いただろうか。既に周りは暗く、夜になっていた。
「疲れた…」俺は地面に座り、空を眺めた。
「あぁ、キレイだなぁ…」空にはキレイな星達がたくさんあり、異世界に居ることを忘れそうになる。
「しかし、この世界の月は赤いな…」地球で見える月は黄色いと言うのに、この世界の月は真っ赤だ。
俺は赤い月を見ながら今日の出来事を振り返り、寝ることにした。
「お腹すいた…喉渇いた…」そう、昨日から何も飲み食いしていないせいで腹ペコなのだ。
「あぁ、とりあえず水が飲みたい…」そう言った瞬間、目の前に水が降ってきたのだ。
「え?」今何が起きた?此処は水も食料もない場所だ。しかし今目の前に水が降ってきたぞ?
俺は混乱しながらも、もう一度「水が飲みたい」、と口に出して言った。そうしたらまた目の前に水が降ってきたのだ。
「そうか…これが神様のくれた力か…」俺は即座に理解した。いつもの俺だったら理解してないが、だがこの状況だ。無理もない。
俺はこの力を理解し、もう一度「コップに入った水が飲みたい」そう口にした。そうしたら目の前にコップに入った水が出てきた。
「やっぱりな!」俺はすぐに水を飲み干した。これで喉の渇きは解消される。しかし問題は食料だ。
「おにぎりが食べたい」…何も出てこない。
「水飲みたい」…水は出てくる。まさか、これは食べ物は無理なのか。
「嘘だろオイ…」水は出るのに食料は駄目なのかよ…
疲れた体におにぎりは最高だったのに。残念だ。
「仕方ない、早く街を見つけよう」俺は食料確保のため、街を目指すことにした。
お腹は空いてるが食料はない。ずっと歩いているが動物もいないし人もいない。これは早く街を見つけないと死んでしまう。
お腹の減りを水で紛らわしながらひたすら歩いていると夕方になっていた。
「やっと見つけた…」遠くにでっかい街が見える。やっと食料にありつける。俺は限界を迎えていた足をさらに動かす。
もう街が目前と言う所で違和感に気がついた。
「なんだか壊れてる家が多くないか?」そう思い立ち止まると街のスピーカーから声が聞こえてきた。
「ニンゲンノスミカハコノマチデオワリダ!コノマチニイルニンゲンヲワレラマオウグンガミナゴロシニシタ!ヨッテニンゲンハゼツメツシタ!」…オォ!…ヤッタゼ!
…は?皆殺し?人間が絶滅?
「コレカラハ、ワレラノマオウサマガコノセカイノアルジダ!」…マオウサマバンザイ!…マオウサマバンザイ!
「どうゆうことだ…」神様は絶滅しそうとは言っていたがすでに絶滅してるじゃないか。流石に早すぎないか?
とにかくここを逃げよう。ものすごく危険だ。この場所にいたら俺も殺されるだろう。
俺はお腹が空いてるのも忘れひたすらに走った。走っている最中何度も転んだが気にしてられない。
気がつくと俺は倒れていた。限界を迎えて、さらに走った足ではもう立つことも出来なくなっていた。
「俺はこれからどうすればいいんだ…」






