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2-2


2-2

 カナタは単身で出かけた。

 貴族と、情報と『魔法の宝石』を取引として交渉をするためだ。


 カナタは貴族屋敷の内部へ案内され、応接室へと向かう。

 建物に入る前から、どこか不気味さを感じていた。

 淀んだ空気感が漂うような……なんだろう……不快な音がする。

 不快感に見舞われつつもそれが何なのか、明確に判明しない。

 カナタはとくに逆らうことなく指示に従った。


 貴族にソファに座るように促され、カナタは着席する。

 まず、情報の冒頭部を小出しにしてゆく。そしてここから先は『魔法の宝石』をもらうのが先だと言った――その時。


 不意に気持ち悪さを感じた。自覚するとだんだん増してくる。はじめから感じていた不気味さが膨張する。


 何か音が聞こえる。なんだ? ノイズが混じった甲高い音だ。

 耳を澄ませていると不快な音が異音へと変わった。

(何の音だ、悲鳴?)


 刀の鳴き声は亡霊の声だ。

 カナタは刀に認められている為、もっていかれることはない。

 これは刀の声ではない。

(では誰の声なんだ?)


 思考の海に囚われていた時。

 ドンッという物音で現実に戻ってきた。

 見ると、控えの貴族が『魔法の宝石』を目の前の机に置いたところだ。

 カナタはさっそく目当ての『宝石』を受け取った。早々にポケットにつっこんだ――のだが。


(おかしい……おれは貴族になにかされている?)

 明瞭に原因はわからなかったが、今の動作ががキッカケか不明だが、グっと体調が悪くなるのを感じる。カナタは、座っていられなくなり前のめりに倒れた。


「……なにを……した?」

 異音に倍音が加わり不協和音を奏でる。徐々に音が拡大して鼓膜が破れそうだ。耳をふさぐも音が鳴りやまない。

 外部からなっているのでなく、内から鳴っているのか?

 うるさい、吐き気がする。もう考えられない……。


 カナタは意識を失った。



(……カナタが帰ってこない)


 シロは、ホームでカナタの帰りを待っていた。

 すでに半日待ったが未だ帰って来ず、さらに連絡一つない。

 半日くらい行方知らずなのはザラなのだが、なんだか胸騒ぎがしていた。

 一人出て行ったっきり帰ってこないことに、そろそろはしびれを切らしていた。

 正体のわからぬもやもやにしびれを切らしたシロは、ホームを降りた。


 闇雲に探しても時間の無駄だとさっさと情報屋に金を払い、一人の指名手配犯の情報を買う。

 顔が知られているということは、こういうとき非常に便利だ。


「こちらシロ。団長が貴族の館へ入る目撃情報を得た」

「……は? 貴族?」

「え? なになに? どゆこと?」

 シロ情報屋を出て、小電伝虫で団員に連絡すると、はてなマークを浮かべる声が返ってきた。


 情報屋にて、カナタが貴族の館へ入っていく目撃情報が手に入った。さらに貴族について情報を得た。

 この島の貴族は、ちょっと厄介らしい。なんでも、苦痛を伴う異常な音を鳴らす魔法者がいること、その異音は瞬間的に鳴る音ではなく、緩やかに、しかし確実に耳を支配するらしいこと。


「――だから貴族の館内に長居は禁物だ。俺が先導するから、後から来てくれ」

「理由は分かったけど、一回戻って来てよ。ちゃんとみんなで奪還作戦立てよ?」

「いや、なんだか胸騒ぎがするんだ。このまま乗り込む」

「まってまって! シロギ……」

 抗議の声を聞かず、小電伝虫の通話を切った。

 敵の魔法の関係から時間はかけられない。短期決戦である必要がある。パっと忍び込み、パっと連れ帰るのがベストだと考えた。

 シロは単身で貴族の館へ乗り込んだ。

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