1章までの『キーワード事典』
― レーション ―
基本的には、軍用糧食のこと……なのだが、アガシーが取り出すチョコレートに似た見た目のソレは、いったい何をどうしたらこんなにマズくなるのか、というようなシロモノらしい。
どうやら、「レーションはマズいモノ」というイメージを、マズければマズいほどレーションなのだ、と曲解したことにより生み出されたと思われる。素材は永遠の謎。
ちなみに、『土壁の味がする』とは、食わされている裕真の談。
――そもそもお前土壁食ったことあんのか、ではあるが。
【 クソマズさ:測定不能 】
― 聖剣ガヴァナード ―
異世界アルタメアに、創世以前より存在するとさえ言われる最強の聖剣。
その真の力が解放されれば、闇の極致たる〈魔王〉をも圧倒する。
アルタメア歴代の勇者たちが、聖霊アガシオーヌの加護のもとに振るい続けてきた。
所持者に、体力の自動回復効果と状態異常への耐性を付与する。それは本来、呪いの装備に打ち負けるほど弱くはないはずだが……?
【 使用回数:たぶん壊れない 】
― 異次元アイテム袋 ―
意識するだけで、何でもいっぱいしまって、いつでもどこでも取り出せる便利グッズ……のようだが、実際は異なる。
基本的な性能はそれに近いのだが、実は出し入れ出来るのはアルタメアの物だけで、現代日本の物となると、シャーペンの芯1本すら入れられない。
これは、その袋の中身が『アルタメアの』異次元に繋がっているからである。
別世界の物だと、時空間の隔たりが大きすぎて『袋』が認識出来ないのだ。
……というわけなので、現代日本を生きる上でものすごい便利グッズとはなりえない。中に入れていたアイテムを、アルタメアにいるとき軒並み売り払って寄付金にあてた裕真ではなおさらである。
【 容量限界:1種99個、256種まで 】
― 魔剣士装備一式 ―
裕真が正体を隠すために身に付けた全身装備。ガッツリ呪われている。
もともとは、アルタメアで、何度も裕真の前に立ち塞がった魔剣士のもの。たとえて言えばレアドロップ品。
その見た目は、鎧と言うよりボディスーツに近い。
デザイン的にいかにも悪役まっしぐらだが、それゆえの孤高のカッコ良さのようなものも事実としてある…………かも知れない。
ぴっちりとしたスーツに、四肢や胸部をなめし革に似たプロテクターが覆い、首元には長いマフラーが、腰回りには鎧の草摺りのようなラフな腰布が巻かれている。
ヘルメットは、変身ヒーローや覆面レスラーのように顔の全面を覆う形で、イメージとしては鬼面っぽいが、角は無い。目元周りの造形は一般的なヴェネチアンマスク(いわゆる仮装用の顔半分くらいを覆う仮面)に近く、また左右非対称で、左側だけ、大きく後方にかけて鳥の翼のような部分が伸びる。
いかにも呪われた魔剣士の装備らしく、色はほぼ全面にわたって黒系統。目に当たる部分は赤く光る――が、裕真の視界が赤く染まるというわけではなく、普通に見える。
防具としての性能は高く、物理、魔法両面において優秀な防御力を持つが、呪いにより、状態異常攻撃に軒並み弱くなる上に、さらに道具・魔法問わず回復効果を無効化し、また身に付けている間は常に体力が奪われる。
加えて、宿しているその強い〈闇〉の力により、反発する〈聖〉属性の攻撃には致命的なまでに弱い。
なお、着脱は裕真の意志一つでカンタンに可能。しかも、直接アイテム袋とやり取り出来るため、かさばらず、非常に便利。
しかしそれが、また何とも、イメージとしては変身っぽくなる理由。
【 アルタメアにおける推定価値:0 】
― メガリエント ―
魔法が主文化として発達している異世界。科学が魔法に置き換わっているようなところもあるため、世界としての文化水準は高い。
小学5年生の頃、裕真が初めて〈勇者〉として召喚され、災厄から救った世界でもある。
ここでの魔法とは、超能力のようなものではなく、理論立った学問であるため、それを習得すべく裕真は猛勉強を強いられた。
その知識は今でも脳内に居座っていて、高校生としての勉強をしっかり邪魔しているらしい。
【 総人口に対する魔法浸透率:99% 】
― ナクレオ ―
武器では無く、拳による戦闘技術が発達した異世界。……といっても、世紀末的に無秩序な、モヒカンやトゲトゲが跋扈する文明崩壊世界……というわけではなく。
物事の多くが、拳闘(この場合はボクシングではなく、素手での戦い)の勝敗によって決められる――という脳筋な理が柱である以外、世界としては、文化的には18世紀前後ぐらいのわりあい安定した社会構造を持つ。
中学2年の頃、裕真が〈勇者〉として2度目になる召喚を受け、崩壊の危機から守った世界でもある。
その過程で、過酷な修行により拳闘の奥義を会得させられたため、今でも友人の何気ないツッコミなどに、つい反応してカウンターを繰り出しそうになったりするらしい。
【 総人口に対するモヒカン率:1%以下 】
― アルタメア ―
サブカルチャーが市民権どころか王権すら得ていそうな現代日本において、『異世界』という単語から圧倒的多数が真っ先に連想するであろう、剣と魔法の幻想世界。
裕真が、高校2年生になって――というか、本編時間で言えばほんの2週間ほど前、GWの最中に召喚され、(そちらの時間において)1年以上もの大冒険の末、脅威を退けた世界でもある。
アガシーはこの世界において永きに渡り、歴代の勇者の力となるべく、〈剣の聖霊〉として聖剣を護り続けていた。
以前の二つの世界においては、日本への帰還時にチカラが失われていたにもかかわらず、今回は『まんま』(アガシー談)、〈勇者〉としてのチカラを引き継いでしまっていた裕真だが……その理由については未だ不明。
ちなみに余談ながら、裕真が『男なら決して逆らえない』とすら言われていた、この世界の女淫魔のお誘いを、付き合い始めたばかりの彼女(鈴守千紗)恋しさに、『間に合ってます』とあっさり一蹴してしまったことは、伝説の一つとなっているらしい。
その一件で自信を喪失した女淫魔が、お堅い事務職に打ち込み、デキる女としてメキメキ頭角を現したという後日談も含めて。
【 勇者支持率:計測中 】
― レッドアリーナー ―
赤宮亜里奈の、主にクラスの男子から呼ばれる、畏怖を込めた二つ名。
某レトロゲームの、動きの軌道、スピードがともにトラウマ級にやっかいな、とある敵キャラから取られた。
名前にかけているのはもちろんだが、彼女の必殺のボディブローの軌道が、その敵キャラの、足下をすくうような動きを彷彿とさせるから、らしい。
あとは当然、その恐ろしさも含めて。
ただ、そうは言いつつ……。
単に乱暴なだけでなく優しくもあり、また見た目は充分に美少女な亜里奈のことを、可愛いと思う男子も少なからずいるようだ。
【 某敵が2匹同時に出現:ぶっちゃけムリ 】
― 銀色のペンダント ―
異世界アルタメアから裕真が持って帰ってきたペンダント。
細緻な意匠が施されているが、ハデさはない、落ち着いたデザイン。
かなりの値打ちもののようだが……?
【 装備効果:特になし 】
― 堅隅高校 ―
正式名称、広隅市立堅隅高等学校。裕真たちが通う高校。
校外では「カタ高」と呼ばれている……かも知れない。
創立からまだ10年程度と歴史は浅く、偏差値的にも、部活動でも、特筆すべきところはない、ある意味平凡な学校。
生徒の自主性を重んじる校風のようで、体育祭などのイベント事では、生徒の意見が大きく反映されるらしい。
制服は男女とも、一般的なブレザースタイル。
それに基本として男子はネクタイを、女子はリボンを合わせるが、しなくとも構わない。
【 特徴:学食の七味が結構ちゃんと利く 】
― 世夢庵 ―
堅隅高校の最寄りである、堅隅駅前商店街に居を構える甘味処。
草庵をイメージしたようなデザインの、それでいてモダンでオシャレな店構えに加え、本格的な甘味が楽しめるわりに値段もリーズナブルということで、堅隅高校の生徒に大人気の店。
……なのだが、同時に、店主がヘヴィメタル愛好家のため、店内BGMが基本的にメタルという非常にトガった特徴をもつ、いわば『メタル甘味処』でもある。
そもそもの店の名前が、日本が誇る大ベテランメタルバンド〈アンセム〉から取られているのだから、推して知るべし。
しかし、それで客足が遠のいている……というわけでもないようだ。
もっともそれは、店主がひたすらヘヴィな曲を爆音でかけたがるところを、奥さんが許さず、店内BGMは比較的おとなしめの曲から選ばせているため……かも知れない。
【 店内に並べられたメタルのCDの数:とにかくいっぱい 】
― 仁王立ちパチキカウンター(NPC) ―
裕真の必殺技(?)の一つ。ぶっちゃけ、思いっ切り気合い入れたパチキ。
別に名前があったわけでもなかったが、のちのち、アガシーによって命名された。
心を持たないゴーレム(ミスリル製。メチャクチャ硬い)を泣いて土下座させたという伝説を持つ。
また、実は最大の敵である〈魔王〉相手にもブチかましたらしい。
「他のすべてで劣っていても、根性さえ勝っていれば相手を打ち負かせるのが頭突き」――とは、彼にケンカの流儀を教えた母親の談である。
【 攻撃力補正:気合いとか根性とか 】
― お仕置きコンボ ―
相手のヒジ、スネ、足の小指と、悶絶必至の3箇所を立て続けに狙って攻撃するエグい連続技。
当然命に別状は無いが、とにかくひたすら痛くて泣ける。
【 特性:防御不可 】
― 救国魔導団 ―
広隅の地に現れるという謎の存在〈世壊呪〉を狙う一団。魔獣を使役している。
シルキーベルとは敵対関係にある模様。
サカンなる代表者が率いるという以外、他に詳しい情報は無し。
ただ、庶民的な雰囲気というか、ザンネンな気配がちょっとする。
とりあえず、国からはまだ認可されてないらしい。
【 名前負けしてそうレベル:70 】
― 世壊呪 ―
字ヅラの通り、北欧神話に出てくる『世界樹』とはまったくの別物――のハズ。
広隅に現れるらしく、〈救国魔導団〉が狙っているようだが……。
ともあれ、どこをどうひっくり返して見ても、「良いモノ」とはまったく思えず、そしてそれぐらいは分かってしまうあたり、表意文字というのは偉大だと実感させてくれる正体不明の存在。
【 まぎらわしさ:99 】
― オレンジジュース ―
オレンジジュース。オレンジのジュース。何をか言わんや。
ただ、亜里奈にとって、果汁30パーセントを超えるそれは、もはやオレンジジュースではないらしい。
風呂屋の娘らしく、至高は『みかん水』だそうで……しかしそれこそもはやオレンジジュースではないのだから、ではオレンジジュースとはなんぞや、と議論が哲学めいてきそうだが、ぶっちゃけどうでもいい話である。
【 果汁:無果汁〜30%まで 】
― 天の湯 ―
結構長い歴史をもつ、地域の人たちに愛される大衆浴場。わりと大きい。
裕真と亜里奈の実家の家業。
もともとは母方の商売だったため、『赤宮家』の家業となったのは、厳密には、結婚して赤宮姓に変わった兄妹の母が責任者になってから、と言える。
……そんなわけで、経営の中心は母と、母方の祖父母。
お役所で公務員として働く父と子供二人は、ヒマを見て手伝うような形。
昔ながらの銭湯といっても、ちょっとずつ手が加えられており、番台は古い形ながらちゃんと仕切りの壁が設けられているし、番台と玄関の間には畳敷きのキレイな待合所と、さらに地元の催しなどで使ってもらえるよう、ちょっとしたイベントスペースも設けられていたりする。
それでなくとも、ご近所さんにとっては憩いの場。
露天風呂こそ無いものの、あつ湯にぬるま湯、ジェットバス、薬草風呂、電気風呂、サウナに水風呂……などなど、代表的なものはだいたい揃っている『ザ・銭湯』。
ちなみに、亜里奈が番台に座る日は、特に客足が増えるらしい。
【 入浴料:大人450円 中人170円 小人70円 】
― 裏手のミリタリーショップ ―
〈天の湯〉の裏手、商店街からもやや奥まった路地にある。
その名も『蜂巣火砲』。
思い切り筆字の看板を掲げていながら、店内はポップで明るい色彩とデザインが施されたミリタリーショップで、〈風名アキラ〉なる気さくなにーちゃんが店主を務める。
イマイチコンセプトが分かりづらいが、とにかくミリタリーやらサバゲーやらの魅力を広めたいと、ひたすら間口を広めようとしたらこうなったらしい。
『初心者、大大大歓迎!!!』――の謳い文句に偽りなく、異世界の聖霊をも虜にしてしまい、そのユルミリオタ化の全責任をそれと知らずに背負い込んでしまった、罪な店。
【 サバゲー講習参加者:常時募集中 】
― 聖鬼神姫ラクシャ ―
今、もっともアツいと大流行の魔法少女アニメ。
鬼の国のお姫さまでありながら、その優しさゆえに人間界に追放された少女が、魔法の力を得て〈聖鬼神姫ラクシャ〉となり、裏切り者と後ろ指をさされるのを承知で、二つの国の平和のために戦う物語。
単なる子供向けの勧善懲悪ものではなく、人々の葛藤や心の内を丁寧にしっかり描いていたり、そもそものデザインセンスやアクション描写が秀逸だったりと、様々な方面で高い評価を受けている。
劇場版も鋭意制作中らしい。
【 放映時間:毎週日曜朝8時 】
【お得じゃない4勇コラム】
・前回の続きから再開するとき、パスワードの
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