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 家の前に着いてすぐに、転移直前にアイテムボックスに入った物を確認する。


 それは、世界樹の枝だった。60cm程の枝の先には若葉が付いている。


(世界樹が新居のお祝いをくれたのかな? ありがたい)

 とりあえず、湧水を入れた花瓶に挿し、玄関横に置く。

(これ、挿し木できるかな?)


 家の中に入る。綺麗な室内に気分が上がる。

 まずはリビングに、昨晩見繕っておいたラグ、ソファ、テーブルを置いていく。


 他の家具や家電製品を置く前にソファに座って、日本の四季からコーヒーと園芸の本を取り出した。

(うん、いい座り心地。挿し木の方法を調べよう)


[1~2時間水に浸ける→土を入れた鉢に挿し、たっぷり水やり→半日陰で管理。乾燥に気を付けてまめに水やり→1か月後、庭に植える]


 先程挨拶したばかりの世界樹の下に戻り、また挨拶。

「枝をありがとうございました。挿し木にして育てたいので、土を分けてください」


 森の気温を計り、鉢に土を入れて、世界樹に礼をして家に戻る。

(無事発根するといいなぁ)


 ◇◇◇


「はぁ~」

 こちらの世界に来て初めての風呂だ。お湯は魔法で出した。洗浄魔法で汚れは取れるけど、やっぱり湯船に浸かりたい。



 世界樹の枝を挿した鉢は、家の東側の庭に置いた。

 家から約3m、結界で覆っている範囲内を庭と呼んでいる。


 ここは世界樹の森より気温が高く、挿し木が大丈夫か心配になったので、結界内の温度を世界樹の森と同じ23度に保つようにした。

 それと、結界に《迷彩》を重ねがけした。これで外からは家と庭が見えない。



 風呂上がり、大画面で好きなバンドのライブの映像を見ながら、ソファに座ってシャンパンを飲む。つまみはオリーブとチーズのピエダングロワ。


 以前はお酒を飲むとすぐ赤くなり、あまり量は飲めなかったのだが、状態異常耐性があるこの体は酔わないようだ。

 気持ち悪くならないのはいいが、酩酊状態になれないのはかなり残念。あのふわふわ感もお酒の楽しみだったのに。


 今日はリビングと寝室を調えて終わった。明日はキッチンと書斎の予定だ。


 昼食はざるそば、夕食は名店の寿司だった。日本にいた時よりずっといい物を食べている。


(でももう新曲は聴けないし、ライブにも行けないな。小説や漫画の続きも読めない。…まあ、まだ聴いたことない曲も読んだことない本もいっぱいあるけど)


 シャンパンを味わいながらこの数日を思い返す。

 魔物とはいえ生き物なのに、魔鹿と魔猪に石槍を投げる時、緊張はしたが躊躇はしなかった自分に今になって違和感を覚える。

 魔蛇は向こうが先に攻撃してきたから私が反撃して当然だし、魔蜘蛛はあの見た目だから攻撃しても罪悪感は無い。

 蛇からの流れで戦闘モードだったからだろうか? 勇者だからだろうか?


 でもまぁ、シャンパンを一本空ける頃には、魔鹿と魔猪が美味しかったらまた狩ろう、と思っていた。


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