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第十五部

「また新型機ですか。」


 次の日、アルバートはブライムから渡された資料を読見ながらブライムに尋ねる。


「あぁ、帝国の次期主力機だそうだ。」

「それ、信頼性とか大丈夫なのですか?」


 アルバートは控えめにいう。


「大丈夫だ。少なくともあの高機動型よりはましなはずだ。それに性能もゼウスと比較してかなり上がっている。」


 つまりあまり扱いやすくは無いということかとおもう。


「いえ、そうでなく武器の方ですが。」

「エネルギーライフルとエネルギーサーベルのことか。それに関しては問題ないらしい。それなりの実績ができたらしい。」

「連邦からといった感じですか。」

「それに関してはどうだろうな。逆かもしれないが。」

「それでいつまでに仕上げればいいのですか?」

「現在の情勢から鑑みるに明日までだそうだ。」

「明日までですか。」


 それには暗に無理だという意味も含まれていたが情勢が情勢だけに仕方ないと思う。


「急で悪いが頼むぞ、少尉。」


 アルバートは敬礼でそう了解という意思を表示するとそのまま部屋から出て行った。


「大分時間がかかったわね。」

「悪いな、待たせて。」


 そう壁に背をもたれさせかけて暇そうにしているエミリアに軽く謝っておく。


「それでなんだったの?」

「あぁ。新しい機体の受領だ。機体名はクロノスだとさ。」

「次期主力の?」


 アルバートの言葉にエミリアはすぐに反応した。


「知っていたのか?」

「名前だけは。性能は高いけどバランスの悪さから一部のベテランパイロットなり精鋭に乗せてデータを集めてから調整しなおして実戦配備するというのが目標だそうだけど。確か隊長も乗るんじゃなかったかしら。レーダー系が強化されてるE型だったと思うけど。」

「だからあんなに詳しかったのか。」


 ブライムが具体的に言っていたことを思い出してそれに納得する。


「待て、あの機体って来たのいつだ?」


 だがそれにしてはブライムが忙しそうにしてないことを思い出す。


「確かエドモンド基地の防衛が終わってすぐだから一週間前だったかしら。」

「だから隊長は既に調整が終わっていると。」


 そうため息を吐き出したくなるような声で言う。


「入院してたのだし仕方ないわよ。」


 エミリアはそれを慰めるようにいう。


「そういえば俺に一体何のようなんだ? 大した用事でもないのなら俺は調整に入りたいのだが。」

「言ってなかったっけ?」

「あぁ。」


 首をかしげながら尋ねてくるエミリアにそう答えると忘れてたかという感じで言う。


「そう。まぁそんなに時間はかからないわ。ちょっと私の部屋に来て頂戴。」

「それは別にいいけどなんなんだ? 一体?」


 そう話しているうちにエミリアの部屋に着く。

 中に入るとエミリアは少しだけ早く歩いて机の上に置いてあった書類くらいの大きさの木箱を渡してくる。


「これは?」


 だがそれも自分で開けろと言った感じで目で促すので渡された木箱を開ける。


 すると中に入っていったのはリボルバータイプの黒色の銃とリロード用の器具、そしてホルスターだった。

 ホルスターと銃にはアークウィン家の紋章が入っていた。


「お守りみたいなものよ。」

「お守り代わりに銃か。」


 そう苦々し気に笑いながらアルバートが答える。


「何か不満があるの?」

「いや、特に。だがそれにしてもいいのか?」

「前に欲しがっていたじゃない。それにイニシャルももう彫っちゃったし。」


 エミリアはそう言いながら銃を裏返す。


「本当だ。」


 銃身の近くにイニシャルであるA・Dが彫られている。


「とりあえずお守り代わりに持っていなさい。」


 エミリアはそう言ってウィンクをした。


 *


「それでダール中尉の方のセッティングはどうなんだ?」


 エフゲニー・バラノフが技術士官に対して相も変わらず重々し気な声で尋ねる。


「後数日で完成します。」

「そうか。それで投薬の量は?」

「若干量しましたが今のところ精神に異常は見られません。」

「実戦に影響はありそうか?」

「特にないと思われます。」


 その言葉にオズワルドは満足そうにうなづく。


「そうか。極力急いでくれ。」


 *


 それから数日後、原隊復帰したアインは空母ミンスクの格納庫にいた。


「中尉。」


 ヴィエントがアインの元に体を漂わせながら来るのでアインはそれを受け止める。


「どうかしましたか?」


 そうヴィエントを見つめてアインは尋ねた。


「その、大事な話があるから、その……。」


 だがヴィエントはあまり要領を得ないように答えるが意を決したように声に力を込めた。


「その、この戦闘が終わったら大事な話があるから。」


 ヴィエントはそれだけ言うとドライエントの元に向かう。

 アインは一体何だったのだろうという感じで首をかしげる。

 一方でアズリトがその光景を不安げに見ていた。


「頑張れよ、少尉。」


 その状況を見ていたユリアはアインのそばを軽く笑いながら通り過ぎざまにそういう。


「?」


 だがアインにそれを気付けというのは無理だった。




「全機作戦開始!」


 エフゲニー・バラノフは右腕を出しながら言う。


「ドローンとドミエント大隊を出せ。」


(この作戦さえ終われば計画は次の段階に入る。)


 そう考えると笑いが止まらないがそれを押し殺すことは今までのことに比べたら容易だった。


(これでやっと魔術師の地位も名誉も上げることができる。だが念には念を入れておくか。)


 帝国側の協力者が裏切ったときのことも考える。


「それとシルスキア大隊とクーガー大隊も出せ。」

「ベロワ小隊とケニア大隊ははよろしいのですか?」


 そう副官がいうがエフゲニーはそれに首を振る。


「いや、そっちは出すのはまだ早い。」


 エフゲニーは考えがあるといった感じでそれに答える。


(それにしてもあれのクローンの完成が後もう少しか。楽しみだな。)


 そう思いながらも戦闘の推移を見守った。


 *


『エイブラウ小隊接近!』

「あまり聞きたくない情報だな。今目の前にいる敵で結構大変なのにな。」

『じゃあ、目の前の部隊を倒してついでに敵の親衛隊も倒してしまえばかなり昇進できそうですね。』

「それはいい! やってしまうか! それが終わったら飲みに行くぞ!」


 クーガーは威勢のいい副官の言葉に嬉しそうに笑う。自身にこのようないい副官が付いたのは本当に僥倖だと思っている。


「じゃあ、仕事でもするか、大尉!」


 クーガーはノーヘッドを加速させる。


「第一中隊及び第二中隊各機! 敵小隊へ攻撃をかける!」


 エフゲニーから言われていた通りの指示を出す。その瞬間乱戦状態である第一及び第二中隊は持っていた戦線を第三及び第四中隊に預け指示通り攻撃を始める。



 クーガーの動きを見てブライムもこれはまずいなと思いながらも応戦をする。


「慣れているな。」


 ブライムは動きを冷静に判断しながらライフルを撃って行った。



「クーガー大隊の第一及び第二中隊が敵エイブラウ小隊と交戦中!」


 それを聞いてバラノフはそろそろかと思う。


「ベロワ小隊をそのポイントに、ケニア大隊をD-52に向かわせろ!」


(これでひと息付ける。)


 エフゲニーは画面を見ながらその口元を歪ませた。



「アイン・ダール、ガブリエル、出撃する!」


 そのまま電磁カタパルトによってガブリエルが射出される。


『我々は宙域11にいるクーガー大隊の援護だ。そこにはいつもの部隊がいるらしいが大隊との戦闘で消耗しているはずだ。今日こそ撃破するぞ!』


 ロマンの声と同時にアイン達は機体を一気に加速させた。



「二時方向に敵一個小隊、この反応は……!」


 索敵能力が他の機体より高いクロノスEが敵部隊の接近を感知した。


「例の部隊か。」


 中隊規模まで減らした敵部隊を見てブライムはどうするか考えようとするが、それを許さないかのように敵部隊からの砲撃が激しくなる。



「ブリッジ! ライフルの回収とレールガンとエネルギーサーベルを!」


 アルバートはクロノスの装備についてドローンの要請をする。これが一昔前なら自分で後退して装備変更か補給するしか無かったが今のドローンが発達した時代では弾の補給はドローンが自動的にやってくれるので大分楽になっている。


 それに先ほどの会話から後もう少しでアインが来るのは分かっている。そして恐らくそれにはあの新型機も含まれているはずだと考える。

 そう思いエミリアに気を取られているノーヘッドにライフルを向け撃墜する。


「後もう少し!」


 そのままエミリアと連携しながら一気に敵の数を減らしていく。

 後もう少しと思った時であった。

 アルバートは目の前を通りすぎるレーザーライフルをギリギリでかわした。


「もう来たのか!」


 忌々しげに叫びながらも撃ってきた相手を射線から探す。


「なんだ、あの機体は……?」

『あれは……。』


 アルバートが撃ったと思われる機体を見つけると共にそのシルエットを確認する。エミリアもアルバートと同じ方向を向くと黙る。


 その機体は白色をベースとしてところどころに金色のモチーフがあった。それは自身の信念が絶対正義というような神々しさを持ち合わせていた。


 その機体、ガブリエルは背後にある羽のような二基四門のレーザー砲を再びクロノスに向ける。

 アルバートはその射線を回避しようと動くがそのときまた一門のレーザー砲がクロノスの左肩を掠める。


「クソ! 」


(あの時みたいに未来が見えれば……!)


 自身の修練の足りなさを嘆く。

 ブライムが言うには自由自在に制御するにはある程度の訓練が必要らしい。今のところは危機を感じれば出るのではないかというアニメでしか使えないような意味のないものだと自身で思っている。


『大丈夫!?』

「特に異常はない! それよりあともう一機の方! あれは!」


 アルバートはもう一機の機体、ヴィエント・バラノフの駆るドライエントを忌々し気に睨む。



「少尉、今支援を……!」


 だが言い終わる前にロマンの駆るダリウスがクロノスの前に立ちはだかる。


「ここは通さない! あの計画が始まるんだ!」


 ロマンはコクピットの中で叫ぶ。


「ロマン・ベロワか!」


 ブライムは厄介な敵が来たと思う。


「中尉! あの二機の援護を!」

『了解しました。』


 そう言われる前にすでに動いていたエマソンを見送りながらもブライムはダリウスをにらんだ。


「押し通らせてもらう!」


 クロノスEはダリウスに突っ込んだ。

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