エピローグ 魚の雨
「帰りは送ってもらえるの?」逃去は長亥に尋ねた。
「えぇ、それは勿論」
「ヘリに乗ってみたいな。私は行き帰りで、同じ道は通らない主義なんだ」
繋架は、絶対嘘だと思ったが、何も言わなかった。
警察のヘリコプターが、駅前の広場に降りてきた。
巻き起こる音と風で、霧が渦のようにうねり、飛ばされていった。
ヘリから、捜査員が3人歩いてきた。
「探偵協会の方ですね!」
「えぇ!」
「こちらにどうぞ! 協会までお送りします!」
ヘリコプターが上昇する。
全ての物が急速に下に流れ、霧を抜け――
「あっ!」繋架は声を出した。
屋上に、大量のカモメ。
ここにいたのか……。
繋架の視界はさらに上昇し、団地は足元に。
そのビルだけでは無かった。団地すべての屋上に、カモメが営巣していた。
「カモメは海で小魚を食べてね、集団で行動するんだ」
ヘッドホンから逃去の声が聞こえた。
「彼らが一斉に飛び立つとどうなると思う?」
どうなるのだろう?
太陽が隠れるとか?
「魚の雨が降るんだ」
逃去は笑った。
繋架も笑った。
霧に覆われた「きぼう」はゆっくりと小さくなってゆく。赤い光が「きぼう」に集まってゆくのが見えた。警察だろうか?
「きぼう」と、他の海上都市とを分断する運河はどんどん細くなる。長方形の島々は混じり合い、大きな陸地となって、「きぼう」は消滅した。
繋架はヘリの行く先を見た。
夜の街に灯がともっていた。
あの灯の一つ一つに人の営みがある。
繋架はそんな風に思った。
やがて思いは薄れ、じんわりとした感覚だけが残った。
それは一瞬。
全ては朝に消える幻。