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きぼう捜索2 コンビニエンスストア

 駅を出て、コンビニに向かった。

 繋架(けいか)の想像に反し、団地は縦に長いビル群だった。巨大なタワーが約50メートル毎に整然と並んでいる。この全てが無人なのだ。街を覆う霧には、潮の香りが混じり、遠くで海鳴りが聞こえていた。

 コンビニへの道は所々陥没し、酷い所ではアスファルトが剥がれていた。手を入れる者がいないと、こうも傷むのか。


「引っ越しや旅行……という訳わけでは無いのですね?」

「えぇ」長亥(ながい)はタブレットを鞄から出した。「『きぼう』の出入り口は2か所。1本の電車と1本の橋です。そのどちらにも、監視カメラがあります。我々は、1か月分の映像を確認しましたが、住人の出入りはありませんでした」

 繋架は地図を見た。東京湾に沿って走る線路、本土とを結ぶ橋があった。

「生きてゆく以上、食事やゴミが発生しますよね? 移動が無いとは思えないのですが」

「えぇ、もちろん確認しましたよ。橋には監視カメラがありますので」長亥はタブレットを鞄に戻した。「ゴミ収集車とコンビニ配送車。この1か月、これら以外に出入りした車両はありませんでした」

 住人の出入りした痕跡は無い。しかしここは人工島だ。海という可能性がある。下水道などはどうだろうか? 配送車に隠れる事も可能だろう。

 繋架は頭の中で、「脱出不可能」では無く、「判断保留」の付箋をつけた。


 コンビニの店内は、自動販売機が並んでいた。

「無人店舗……だったんですね」

 繋架は全天球カメラで店内を撮影した。

 冷凍食品や医療品、衛生用品、日用品。

 保存期間が長く、客層に合わせた商品にしているようだ。

「カメラはあそこに」長亥は入り口の対角線上を指さした。

 天井の角。店内を一望できる位置に、監視カメラがあった。

「映像はクラウドで記録され、差し替えられた痕跡は無いとのことです」

 映像の偽造と痕跡を残さないハッキング。不可能ではないが、実行には高度な専門知識が必要だろう。

「確かに、住人はいたのですか?」

「えぇ。月曜日までは。録画に加えて、POSやゴミ収集の記録を確認し、総合的に判断しました」

 繋架は監視カメラを見た。あの位置からでは、顔まで分からないだろう。別人がなりすますことも可能だ。いや馬鹿馬鹿しい。何のために? メリットは?


 分からない。

 確かなのは、先週の月曜から火曜日の間に何かが起こったこと。

 結果として、住民が姿を消したという事実。

 30人が姿を消す程の出来事。

 一体何が起こったのだろう……?



 二人は店を出た。改めて見ると、巨大な団地に不釣り合いな、非常に小さな店舗だった。

「昔はスーパーだったんですよ」長亥は駐車場の端を指さした。

 そこには空き地が広がっているだけだった。

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