女神シンカと妹
一九✕✕年、俺は死んだ。
そう。確かに死んだ、はずだ。
言っている意味が分からない?
そりゃそうだろう。俺も分かっちゃいない。
一体どうなってんだァ!?
────。
俺は死んだ。しかし今俺の目の前には街がある。
意味わかんねぇ。俺は生きてるのか?
そんなはずはない。確かに死んだ。
だが死後の世界がこんなにも、現実と変わらないとでもいうのか?
そんな思いをしている中、明らかに幼い女の子の声が聞こえる。
『転生されし者よ。我が誠意なる声が聞こえるか。』
…は?
『我が名は、神 シンドライト・グリニカル・シンカ。どうだ?格好良かろう。我のことはこれから、シンドライト・グリニカル・シンカと呼ぶがいい。』
────。しばし沈黙。
長ェーよ!!ってか誰だよ!
『誰って…。言わなかったか?我の名はシンドライ…』
そういう事じゃねー!
『仕方がない。姿を現してやろう。』
そうシンドライトなんとかが(俺の心の中で)言うと空から光が降ってきた。
ドドォーン!
「我の名はシンドライト・グリニカル・シンカだ。」
──────。
「幼女?」
俺の目の前に現れたのは神々しく光っている、身長わずか一四〇㌢程度、髪型は腰まで長くて銀髪。すげェ可愛い。が、意味が分からん。
「よっ、幼女ではない!我は神だと言っておろう!」
「あぁー。ハイハイ。」
めんどくさそうなタイプのやつだ。
「で?要件は何?」
不機嫌気味に俺は言う。
「おぉ。話が早いのう。佳輝よ。」
おっとそうだ。自己紹介をしていなかったな。
俺は神童佳輝/(生きてた時は)一八歳/身長は一七六㌢くらいかな。
俺の前に立っている幼女、シンドライト・グリニカル・シンカとやらが語り出す。
「よく来たな!神童佳輝よ!」
とりあえず聞いてやるか。
「其方は残念なことに死んでいる。しかし、ここ、黄泉でくらいてもらう。」
「黄泉?死後の世界ってやつか?」
「間違ってはいない。しかし、ここで優雅に暮らすのは無理。其方は神によって転生されし者、これからの試練に頑張って貰わねばならん。」
「なんで俺が神によって転生されし者なんだよ?」
「分からぬか?お前の苗字に“神”が入ってるではないか!それにお前のおやぼそばそ…。」
「なんだって?」
「と、とにかくだな!お前の苗字の神がここに転生させたのだ!」
とても慌てた様子でそう言う。
なんだ?こいつ。
「で?俺はなにをすりゃいいんだ?」
「世の中の神と友達になりその中の一人と結婚すればいいのだ!」
──────。十秒が十分に感じた。
「はっ?お、俺、俺が、か神と結婚しろだと?」
「そうだ。そのために佳輝は転生されたのだからな。」
平たい胸を張って言う。
「俺、生きてたときも友達いなかったんだぞ?」
「あぁ。もちろん知っている。」
「じゃあ何故俺をその、結婚させようと思ったんだ?」
「神が付く苗字の死んでいる奴をダーツで…はっ!」
「サイテーだな。」
苦笑いする俺。
やってしまった!と思うばかりの表情をする女神。
「わかった、わかった、もういい。」
ほんと?見たいな可愛い顔で俺を見る女神。
俺はすっと目をそらし、
「俺、友達作ったことねーから作り方とか知らねーし…。」
「安心しろ。」
笑顔で女神は俺をのぞき込む。
「時折我が其方にアドバイスをしてやる。」
「どうやって?」
俺はまた目をそらす。
「其方のここに隠れている。」
女神は拳を俺の左胸にトンとあてた。
「あぁ。シンカだ。」
「ん?」
「長いからシンカでいい。これからはシンカと呼べ。」
はは。自覚あったんだ。
「世界の危機なのだ。」
「何が?」
いちいち主語を言わない奴だな。
「今神世界で混乱が起こっている。それは、リア充に対する嫉妬だ。」
…。ちいせぇ!神世界ちいせぇ!
こんな小さなことが大事になるのか!?
「小さくなどない!このままでは宇宙が破滅するのだぞ!」
「なんで嫉妬でそうなる!」
「神の嫉妬は人間が思っている様なものではない!神の嫉妬はえっと…。とにかく危機なのだ!」
テキトー!シンカ様適当過ぎですよ?神ですよね?やばくない?適当は。
「うっ、うるさい!」
顔を赤くして言った。なんとまぁ可愛らしいこと。
あれ?俺今口に出してたってけ?
「お前の心は全て分かっておる。」
なんじゃとぉ!?女神ヤベェ!!
「そ、そうかな。」
「なんで時折そう可愛くなんの?お前!しかもその服!露出度高すぎね?」
「何を言う!これは神聖なる我ら神々の制服なのだ。若干違うがな。」
「それはそうと、なんで神様は嫉妬をするんだ?」
「本当に切り替えの早いやつだな…。ズバリ!人間への嫉妬!だから宇宙の危機なのだ。」
「あぁ。何となくわかった気がするぜ。」
「よしっ!じゃあ其方の宿に案内してやろう。」
そう言ってシンカは小さな黄色い光になり俺の胸に入った。のかな。
『そこ右。そこの所左だ。』
シンカの案内で俺は進んでいく。
周りには普通の町並みだが、何かがおかしい。神の世界だから違和感があるのか。もしくは死後の世界、黄泉だからか。いや…
『ここだ。』
「ここかぁ。」
『ここが其方の宿だ。』
「いやこれ宿っていうより家だよね。これ俺一人で暮らすのか?」
『あぁ。さいしょはな。』
「最初は?」
『そうだ。将来其方はここで女神と暮らすのだ。』
「うーん、イメージがつかん…。」
さっぱりだ。なぜ俺なのだろうか。シンカは適当な言い訳をいていたが…。
シンカが俺の胸から出てきた。
「ところでシンカ、ここには俺以外に男っているの?」
「いないことはない。しかし、五・六人だろう。一人は一番偉い人間界でいう、『ゼウス』だ。」
「へぇ。会ってみたいな。」
ぼそっと俺がそう言うと、慌てた様子で
「そ、それは出来ない!」
「わ、わかってるよ。」
なんだよ…。
俺は玄関の前まで行った。そこにはすでに“神童”の表札がある。
「この家、豪邸まではいかねぇけどだいぶでかいよな…。」
「もちろんだ!だから何人子供を作ってもかまわんぞ!」
平たい胸を張って言う。
「こ、ここ子供ぉ!?」
「む?お前結婚するのなら子供を作るだろう?」
「そ、そうかも知らねぇが俺はそんな…そん…な。」
顔がやばく熱くなっているのがわかる。
とりあえず中に入る。
ギィィ。
よく聞くドアの音。
見た感じ、すごく綺麗でまるで新築。フローリングで大きい部屋が五部屋以上はあると思う。キッチンも綺麗で大きい。
家の一番奥にある部屋に足を踏み入れる。
──────。
驚きのあまり声が出なかった。
「し、シンカ?これは…?」
「ん?ギャルゲの事?」
「ギャルゲの事?じゃねーよ!なんだこの壁一面、いや二面程のギャルゲは!?」
「それは、其方があまりに下界で友達作りがヘタクソだから見本になるようにと神聖なるこの私が用意したのだ!」
ありがたく思えだと?
クソ…。完璧になめられている。まぁ。実際にそうなんだけど!
「まぁ部屋はわかった。俺は何をすればいいんだ?」
「ふむ。そうだなぁ。」
チラッとこっちを向き、愛らしい顔をして
「お風呂、入ろっか。」
「な、ななな何を言い出すんだ!?」
赤くなりながら俺は言った。
「い、いい一緒にふふふ、風呂だなんて!」
首を傾げていたシンカだったが、おぉと拳を手のひらにポンッとさせた。
「我が神だから行けないのだな?」
「え?いやそういう訳じゃ…」
「そうか。そうだな…。」
「あ、あのぉシンカさん?」
聞いちゃいない。
シンカは考え込んだ様子からハッとして
「よしっ!我は今日から其方の妹になろう。」
──────。
はァァァァ!!!???
続く
この度は「神様は人間とどうなりたいんだろう」を読んで下さりありがとうございます。
この物語はまだまだ続く予定です。
これからもよろしくお願いします。