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閑話】帝国から見た…

※残酷な表現が多いです、苦手な方は飛ばしてください

・ある帝国軍副官が見た…


「そろそろ着くはずなんだが…」


私は上司である大隊長からエランドリス帝国メラディア侵攻軍先遣隊副隊長を仰せつかい、隣国メラディアのデロリアの湖南岸の村へと進軍中。歩兵や騎士よりも村を橋頭堡とするための物資や機材の方が数多く、細い谷間の道にはなかなか難儀したが、もう先に偵察部隊が村の制圧を済ませてるはず。谷を抜ければ後は楽な行程なのだが…あ、見えてきた、な、なんだ?あれは


「なんだ?どうなってる?」

「ワッサーの奴何やってたんだ?まさか村の鎮圧すら終わってないのか?…どうする?」

「どうもこうもないだろ、後もつかえてるし進め!」


周囲の将兵もざわつき出す。何やら土が盛り上げられ壁のように築かれ、その中心、小さな村の入り口脇に妙な形の鉄の塊が据えられている。イラつきを隠せず隣で先遣隊隊長が周囲の兵に進軍するよう怒鳴り立てるが…


「あーもしもし?何処の誰かは知りませんがそのまま引き返してくれませんか?そんな大軍勢で何をするので?」

「な、な、何が喋ってるのだ?魔獣か?」

突然その鉄の塊から声が響く。また妙に間の伸びた声で警告らしき事を言ってるが…その内容にこちらの混乱は増すばかり


「はじめまして、こんにちは。メルカリウス冒険者ギルドの戦闘ゴーレム、トリーと申します、よろしくお願いします。この辺りはメラディアの領地なのでこれ以上の軍事行為は侵略と見なします」

「何を…言ってるんだ?」

「なにを揉めてる、さっさと進め!ワッサーの奴、ヘマしたみたいだが魔獣一匹だ、踏み潰せ!」


冒険者?ゴーレム?ますます訳がわからん、こうゆう時は無理押ししない方が…とは思ったが隊長は侯爵家の長男坊、箔をつける為の比較的安全な任務で成功体験を付けようと上から捻じ込まれた人事で奴に機転も柔軟さもあるわけ無い。指示の通り兵を進めると再びその鉄の魔獣が声を張り上げる。


「侵入をやめて出て行きなさい、さもなくば対抗措置を取ります」

「お前が出ていけ!ここはすでにエランドリス帝国の領地だ!」

「またまたご冗談を、そちらのようなおマヌケな軍隊に何が出来ます事やら」

「ワッサーの事を言ってるのか?奴など我がエランドリス帝国軍の中ではどうでも良い小物よ」

「その小物に大事な斥候を任せるとは…いやはや帝国とやらの人材枯渇は深刻なようですなぁ」


もうマズい気しかしない、謎のゴーレム冒険者と自称する魔獣に良いように煽られ前進を続けるが…


「…言わせておけば!弓兵!かまわん、撃て!」


ついに弓を射掛け始める、数はそう多くはないが普通なら魔獣でも動きを充分に牽制出来る筈だが。


ドン!ヒュルヒュル…ズドーン!


「なあっ!」


破裂音と重い地響きの後、我々の頭上から何かが降ってきて、少し後方に大きな炸裂!激しい爆風と炎と共に周囲の馬や…同僚の引き千切れた体が飛び散る、自分は必死で馬を飛び降り地面に伏せるのみ。


ドッドッドッドッ!


「ぐっはあっ!」

「やられた!なんだ?魔法か?」


ヒュン!と頭の上を何かが高速で過ぎ去った!と思ったら前方や後方でで魔獣に向かって戦列を組み詰め寄っていた兵達が吹っ飛び、ズタズタにされて片っ端から次々に打ち倒されていく


ドン!…ドガーン!


ドッドッドッドッ!


魔獣から火が吹き、地響きがするたびに兵達がそこかしこで飛び散る…なんなんだこれは!


「ぎゃあっ!」

「や、やめろ!!逃げ…」


死を振りまく炎の魔法が立ち向かおうとする兵も騎士もことごとく打ち倒す。逃げようとしても何処へ逃げればいいのか戸惑ってるうちに不可視の一撃が目の前の馬を穴だらけに…


ドン!バーン!


「くっ!奴一匹だ、なんとか仕留めろ!」


誰かと思えばこれまた良いトコのお嬢ちゃん騎士、確かポメリーと言ったか。戦列も指揮系統もズタズタのなか必死で立て直し反撃しようとするが…その立ち直ろうと奮闘する指揮系統を狙い撃ちされる。明らかにあの魔獣に高い知能がある!


バラバラバラバラ!


ズドーン!


「ぎゃああああ」


地面を舐めるように這い回りやっと近くの林に入ったがそこも首の無い馬や騎士、足が切り飛ばされた兵達が転がって…先の方ではさらにあの轟音が兵達の絶叫と共に響く…生存者の確認の為再び爆発に襲われないかビクビクしながら林の中に足を踏み入れるとグチャグチャに引き裂かれた肉の塊がそこらじゅうに、もう胃の中に何も入って無いのに込み上げてくるモノが止められない。


「もう、どうしたら…どうしてこう…」

「に、にげ」


逃げ惑う兵達の中でもう放心して座り込むしかなく…呆然と周りで次々と同僚や部下達が倒れていくのをただ見てるだけ、空から降る炎の魔法が氷の魔法に変わり辺り一面凍り付き地面に縛り付けられる


「このままやられっぱなしで終われるか、このっ!」


振り返るとさっきの女騎士が土の壁を越え魔獣に向かっていこうとするが、なにかに引っかかってもたついてる間にあっさり打ち倒されるのが見える、もう無理だ…


気がつくと地に伏せてる、周囲は静まり返りさっきまで一緒に行軍してたはずの兵達の死体、いや、肉片だらけ、逃げなくては…武具を捨て這いずり回って拠点へ戻ろうとするが、魔獣からの魔法弾は行き先へ落ちて行く…


「こんな…こんな事が…」


もうどこをどう歩いたのか…どこもかしこもあの魔獣の攻撃で穴だらけ、道無き道をなんとか抜けて出発点である平原の砦へ、日が暮れてようやっと辿り着く…が。


「どうした!一体何があった‼︎」

「先遣隊の者がほとんど帰ってこない、帰ってきても要領を得ない、なんなんだ魔獣とは?、ドラゴンでも出たのか?」

「信じられん…なにかの見間違いかこいつらが逆にたらし込まれ間諜にでもされたか?」


砦の本隊は混乱を極めてる。先遣隊に身内がいる者などは特に。胸ぐらを掴まれて問い質されてもなんと答えて良いのか…ただ他の者と同様に魔獣が現れたとしか答えられない。こちらの言い分は隠す事なく伝えたが信じない者も多く指揮をとる侯爵も判断に困る様子。


そうこうしてるうちに明日再び偵察隊を放つ事だけが決まり、やっと事情聴取から解放され休む事に。こうしてる間にもあの魔獣が…メラディアに飼いならされてるのかはわからないがあの村からこちらに攻め入るかも知れないのに


ドン!…ドン!…ドン!


あの音!あの魔獣だ!やはり来てしまった‼︎しかもこんな夜中に。さっきまでのあの恐怖が蘇る、頭を抱えて地面に伏せることしか出来ず身動き一つ取れない。周りも混乱をきたして声を張り上げ火を消すように指示する者、敵を探そうと人員を集めようとする者、なんとか組織立って対抗しようとする者もいるが…あの魔獣の恐るべき知能が見逃すはずもなく、組織立った動きをする所からあのおそるべき火の玉が降って来る。


ドン!…ドン!…ドン!


「て、敵だ!敵襲ー!」

「魔獣というのは本当だったのか、魔獣が来たのか!」

「いったいどこから、この炎はどこからだ!」

「そんな遠いはずがない!探…うわぁっ」


恐る恐る頭を上げ休んでた天幕から顔を出すと辺りは火の海、兵達も右往左往するのみで火消しめ効果が上がらない…天幕から出るしかない、このままでは…とは思うがもう体に力が入らず這い出るのみ。


…夜が明けて、やっと火がおさまり被害の全貌が明らかになるが、輜重から集中して焼かれたようでひとつ残らず消し炭に。もうこれ以上侵攻するのは無理だろう。


この後どうするのだろうか。無理くり侵攻を続けるにしてもあの、謎の魔獣が湖の村に待ち受けてるだろうし他のルートにするには食料など諸々足りない…さて、上の者が陛下にどう申し開きするか、だがもう俺には預かり知らぬ事。田舎に帰って畑でも耕すのも良いか…


◇◆◇◆◇


・エランドリス皇帝の憂鬱


「そうか、御苦労だった下がって良い」


側近の近衛団長がそう言って先遣隊隊長を下がらせる。頭が痛い。せっかくかなりの時間と資金を費やして密かにあの谷間の道を切り開き、奇襲の機会を探って我自ら工作して来たのに…魔獣?なんだ?それは、そんな…メラディアの奴らがいつの間にそのようなモノを飼いならす事に成功していたのか…


「陛下、如何なさいますか」


今回の被害を民に知らせない為に謁見の間ではなく執務室で報告を受けてたが…首を揃える関係閣僚、将軍達も渋い顔。どうしたものかこちらが聴きたい。


「被害は確かなのだな?先遣隊が半壊というのは」

「は、はい…人的被害に加えて物資の被害が多く…さらに侵攻ルートを知られたのが…」


報告書の羊皮紙を見ながらこめかみを揉む。冷や汗を拭きながら補足する将軍が…目障りだから早いところ消えてくれんだろうか。


「とりあえず作戦は中止だ、それよりも至急その魔獣の事を調べ上げろ!奴らが真にその魔獣を飼い慣らしてるとしたら逆にこちらに侵略して来るかも知れん」

「ははっ」

「それから至急メラディアへ会談を申し入れろ、どうせ抗議を言ってくるならこちらから先手を取った方が良いだろう」

「はっ」

「その機会に間諜をたっぷり忍び込ませておけよ?こんな醜態はまっぴらだ」

「は、そのように…」


はあ…やっと気の重い報告会を散会し閣僚どもを追い出して侍従が淹れるお茶で喉を潤す…まったく、帝国とは言っても内憂外患が山盛り。地方の諸侯はこちらの事など歯牙にも掛けずしたい放題。官僚供もいつもは女子供と軽んじてるくせにこの様な時は指示を受けねば動こうとはしない。大きな領土ゆえに接する国は多いのに友好国が少ない。頭の痛い事態が続くその上さっきの様に会議のたびに脂ぎった狒々爺達の下卑た目線で穢されたような気分でいつもスッキリしない…お茶を飲み干してカップを置き椅子から立ち上がる。


「湯浴みをする、支度をせい!」


もうこれはお湯で洗い流さなければ!執務室から私室へと下りながら豪奢な服を脱ぎ、引き締まるところは引き締まり出るところは出てる女の自分から見ても惚れぼれする様な身体を晒しながら浴場へ向かいつつ侍従達に指示をする。



皇帝陛下は女性でした。綺麗なお姉さん成分追加で

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