ステイルメイト
どうせ誰かに言うわけでも無いのだから、僕の気持ちを全部、丸ごと、ごっそりと、この紙にぶちまけてやろう。
この苛立ちも、悔しさも、この一枚にぶつけてやろう。
僕の、1年間を。
それは入学式の頃から始まった。桜は既に舞い散り、春の日差しが、桜を照らしつくりだされた絨毯を所狭しと群がるのが恒例。
クラスが書かれたそれを見たとき驚愕したね。友達って言う友達と離れてたから。
まあ、これも運命なのだろうとすぐ切り捨てたけど。
もっと驚愕したのは担任の先生が決まって、教室に入ったあと。
なんでかって、クラスが見事に陽キャの巣窟だったからね。こんな固まるのかって思うくらい。もう、校長先生の所へ押しかけようと思ったよ。
今ので察して貰えると嬉しいけど、僕の学内カーストは最底辺。陰キャの中の陰キャだ。陰キャは認めても、学内カーストの存在は認めたくなかったね。
なんか、差別っぽいでしょ?そういうの、大嫌いだから。
陰キャと陽キャで区別するのはいいんだけどね。...ん?陰キャと陽キャの定義?そんなのは持論で構わないよ。
それで、話は戻って、人によって態度を変えるのはダメだと思う。
なんて、僕が言っても無駄だったね。
これ以降は気をつけるよ。
担任の先生が催した、将来の夢を語る時間があったね。あれには苦い思い出しかないね。
みんな「プロ野球選手」とかカッコいい夢言ってたけど、僕は「小説家」だったからね。理由は、人を感動させたいから。だったかな。
僕の発表が終わってから、馬鹿にされたから、無意味な啖呵を切ったね。「この1年でみんなを感動させてやる!」って。
そんな馬鹿言ったら皆は言い返してきたよね。
「じゃあ、俺ら全員がお前を泣かせてやるよ」と。
そんなの無理だよ。いつか、殴って泣かせに来るんじゃないかって、結構内心びびってたよ。
体育大会、R君は言ったよね。「しっかり練習やれよ!!」って。ここでも対象は僕だった。
リーダーだかなんなのか知らないけど、一番真面目に練習すべきは君でしょ。練習中、笑いすぎ。なんで君があんな事言えたのか、君の世界を見てみたいね。
あと、K君は面白い事言ったね。
「練習してないのに泣くなよ!」だっけ。
練習してないのに号泣してたH君になんで何も言わないのか、疑問に思ったよ。
合唱祭、中々いい合唱ができた気がするよ。
僕なりには頑張った方だ。
君たちがどう思ってたのかは分からないけど、鳥肌がたったね。これは、嘘でもなんでもない。こんな僕らでもあんな凄い合唱が出来るなんて思わなかったよ。
え?僕は入ってないって?そういう事言うから亀裂が入るんだよ。
今までこんな事を綴ってきたけど、僕と君たちはいい間柄なのかもしれないね。
互いに接合しあう事がないからこそ、互いに負けじと何かをやってきた。そんな気がするよ。
ライバルであっても、仲間じゃない。
競い合っても、助言はしない。
居なくなっても、涙を流したりはしない。
そんな関係でいた方が、僕とこのクラスの皆は分かり合えるのかもしれないね。
いや、分かり合えた事なんて一度もないんだけどさ。
なんだかんだで、楽しい一年間だったよ。どうもありがと。
ここで、僕は言葉を吐き出すのをやめた。
そして、もう一度、大きく息を吸って。
「僕の勝ちだね」
満面の笑みを浮かべ、嬉しさ120%で僕はそう告げた。
が、
地面に一粒だけ、水晶が落ちるのが見えた。
「どうやら、引き分けのようだ」
無理矢理、笑顔をつくった。
「これで、僕の卒業文集の発表を終わります」