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一話

仕事で嫌な事があったので、息抜きには珍しくプロットをねってから書いた。

仕事と本命の小説(EternityWorldOnline)もあるのに書き出したら止まらない状況に。

本命の更新を待っている方がいらっしゃったらすみません。


いつになるかは分かりませんが、この話は完結させたいと思っています。(完結まで考えてあります)

 

 この世に理不尽なんて物は腐るほどあると俺は知っているつもりだった。

 赤ん坊の時、目の色が紅いということで名前もつけられずに捨てられる。

 小学生の時、目の色と親に捨てられた事を理由に同年代の奴等に虐められる。

 中学生の時、入学初日から喧嘩をした俺を不良と思う教師にやることなすこと難癖をつけられる。

 現在高校生、俺の事が気に食わない奴等が何かと突っ掛かってくる。


 しかし嫌な事ばかりではない。

 赤ん坊の時に捨てられたが孤児院の神父様は優しかった。

 小学生の時の虐めは孤児院に来る元警察官の爺さんに鍛えて貰い、虐められてもやり返せるだけの力をつけた。(ついでに言うと自分からはやってはいけないので、他の奴を虐めているのを見つける度に乱入して虐めが出来ない様にしてやった)

 中学生の時は必死に勉強して学年トップの成績を卒業まで取り続けてやった。(カンニングを疑われたが、疑う教師の監視付きでテストを受けて満点をとってやった。ついでに喧嘩の理由は表向き優等生で教師のお気に入りの上級生が影でカツアゲをしていたのを目撃したから)

 現在は突っ掛かってくる奴等は全員無視。さらにイラつかせる。


 っとまぁ、他にも色々あったり俺の行動が理由の物もあるが、俺こと双葉ふたばあおいは理不尽なんてその辺にいくらでもあると知っているつもりだった。

 そう知っているつもりだったのに。

 



 30分程前に俺は学校で授業を受けていた。

 後5分もすれば授業も終わり昼休みになると思っていたら、急に視界が真っ白になって気付いたらこれまた真っ白な世界にいた。

 その真っ白な世界には俺以外にもクラスの奴等と授業をしていた教師もいた。

 そして動揺する俺達の前に現れたのは女神を名乗る女で、俺達は異世界に勇者として召喚されるので力を授けるとか言い出した。

 既にこの時点で俺は強制呼び出しは理不尽だと思っていたが、こんなのは序の口で女神は俺を見てこう言いやがったのだ。


「貴方のその目の色は不快です。忌まわしい地で死になさい」


 俺がその言葉に何か言う前に、気付けば今いるボロボロの廃城に居た。

 もはや笑うしかない。

 何が女神だ。

 人を強制的に呼び出しておいて、気に入らないという理由で簡単に死ねと言う。

 廃城の窓から外を見れば森で、見たこともない様な生き物がいるのが見えた。

 何故か廃城の中には入って来ないが、食い物が廃城にあるとは思えないので餓死したくなければ廃城から出ないといけない。

 しかし外に出ればちょっとくらい喧嘩が出来るだけの俺では生き物に食われて死ぬだろう。

 あの女神の言う通りに。


 しかしどうする俺。

 あの女神の言う通りに死ぬか?

 理不尽な仕打ちを受けたまま。


 そんなのは否だ。

 俺はまだ死にたくないし、女神を一発は殴らなければ気がすまない。

 ただ受け入れるだけなんて俺らしくもない。

 だから抗って抗って、理不尽な仕打ちを打倒してやる。

 死ぬとしても、少しでも相手の意思に反してやる。

 決まりだ。

 俺は諦めない。

 この廃城から抜け出す。

 そして力を得て、女神だろうが絶対にぶん殴ってやる!

 それでは考えろ俺。

 まずやるべき事は何だ?




 まずは廃城の中を調べてみる事にした。

 食糧の問題があるが、まず俺には情報が足りない。

 ここが何処なのか、外にいる生き物は何なのかも俺は知らない。

 知らなければ何をすれば良いかも分からない。


 しかしこの廃城はでかいな。

 広さと言う意味でもでかいが、サイズ事態が全体的に大きい気がする。

 俺は身長180㎝以上はあるのに、それでも大きく感じるのだ。

 元々の城の住人はどれ程大きかったのか。

 まぁ、今はそれは置いておいて、城を調べる途中で見付けた物を確認しよう。

 見付けた物は本が一冊と何かが書いてあるA4サイズの紙1枚、赤い宝石のペンダント。

 それと


「玉座に刺さった剣1本…か」


 今俺はそれらの見付けた物を持って玉座の間(?)にいるのだが、玉座には剣が刺さっているのだ。

 それも正面から背もたれに向けて、座っている者が居れば串刺しになる形で俺と同じ位でかい大剣が。

 しかしこの剣はどうしようか。

 玉座に刺さっているという状態も異常だが、剣自体が黒地に紅い装飾が施された剣で、下手に触れば呪われそうな気がする。

 でも他に武器になりそうな物は何も無いし、見付けた本や紙は読めない字で書いてある。

 ペンダントは武器にはならない。

 なのでこの剣以外に役に立ちそうな物は無い。(こんなでかい剣、俺が使えるかは分からないが)


 …………取り合えず抜いてみるか?

 このまま悩んでいてもしょうがないし、何もしなければそのうち死ぬ。

 それに触ったら何か起こると決まっているわけでもない。

 よし、抜こう。

 最悪、触ったら死ぬとしてもしょうがない。

 状況を打破しようとした結果だ。

 後悔もしない。

 いくぞ!


 剣の持ち手を握り、一思いに引き抜く。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『フリード、皆が探していたぞ。何処に行っていたんだ?』


『おっアルか、見ろ!翡翠蝶だ。アリアが前に見たいと言っていただろ!』


 金髪碧眼の少年が話しかけ、黒髪紅眼の少年が翡翠色の綺麗な蝶を見せながら返事を返す。


『はっ?翡翠蝶がいるのは幻惑の森の深部だろ?』


『そうだ。ちょっと行って採ってきた』


 金髪の少年が困惑した様子で質問するが、黒髪の少年は自慢するように胸を張る。


『はぁ、相変わらずフリードは出鱈目だな。普通の奴なら下手をしたら死ぬぞ?分かってるのか?』


『ははは、大丈夫だ。俺は簡単には死なん』


『全く』


 金髪の少年は黒髪の少年に呆れた様子を見せながらもどこか楽しそうな雰囲気を漂わせ、黒髪の少年は嬉しそうに笑う。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 っ!?

 何だ今のは?

 剣が抜けた瞬間に何か見えたぞ。

 この剣に何か関係があるのか?

 あの二人の少年のどちらかがこの剣の持ち主とか?

 ……分からないな。

 何か大事な事の様な気もするが、どうしてそう思うのかも分からない。

 はぁ、後で考えよう。

 今はこの廃城から抜け出す事が第一だ。

 それに剣を抜いてから何だか体が軽い気がするのは気のせいか?

 抜いた剣も重さを感じないくらい軽々振ることが出来るし。

 ちょっと動いて確かめてみよう。




 動いてみた結果だが、俺は異常な程の肉体能力を得た様だ。

 あり得ないぐらい速く動くことが出来、俺よりでかい崩れた壁の残骸も簡単に持ち上げられた。

 剣を持っているから出来るのかとも思ったが、剣を持たずに動いても同じだったので、俺自身の肉体能力が上がっているようだ。

 こうなった原因は確実に抜いた剣にあると思うのだが、これもよく分からないな。

 まぁ、少し不気味だが生き残る可能性は格段に上がったのでよしとしよう。

 他に気になるものもないし、見付けた物を持って脱出を、ん?

 紙に書いてある字が読めるぞ。

 本に書いてある字も読める。

 どうなってるんだ?

 これも剣の影響なのか?

 また分からない事が増えたな。

 でも字が読める様になったのは助かるな。

 本のタイトルは【英雄物語】で紙はペンダントの説明書?

 本は置いておくとして、説明書を読んでみる。


 どうやら俺が見付けたペンダントは魔道具とかいうもので、物を入れたり出したり出来るみたいだ。

 本で試したら入れるのも出すのも自由に出来た。

 うーん、剣の事といい何か意図的な物を感じるが、あの女神が用意したとは考えられない。

 分からない事ばかりだな。

 ペンダントは役に立つので使うことにするが。

 では廃城からはおさらばしよう。

 上手くいくと良いのだが。




 俺は崩れ落ちた正門と思われる場所から真っ直ぐ進む事にした。

 何故ならよく見るとここがただの密林では無く、植物が廃墟を呑み込む形で森になっていると分かったからだ。

 廃城と合わせて考えると、元々この場所は都、もしくは街だったのではないかと考えられる。

 これで俺の考えがあっていれば、最悪でも同じ場所を回ることは避けられる。

 上手くいけば使われていなくても、古い街道に出ることが出来るかもしれないしな。

 それより問題なのはさっきから嫌な視線を感じる気がする事だ。

 多分、窓からみた生き物か動物だと思う。

 出来れば会いたくなッ!?


 ヒュンッ


 ヤバイ、背筋に悪寒が走って咄嗟に頭を下げたら、頭のあった場所を勢いよく何かが通り過ぎた。

 肉体能力と一緒に体は頑丈になっているが、あのまま当たっていたら危なかったと思う。

 通り過ぎた物の方を見ると、前足の脇に刃物が付いたイタチの様な生き物がいた。


鎌鼬かまいたちってか。笑えねぇ」


 俺は鎌鼬に注意する。

 次に跳び掛かってきたら剣で迎え撃つ。

 斬れるかは分からないが、当たれば吹っ飛ぶだろう。


 しかし俺の考えとは逆に、待ち構えていると鎌鼬はそのまま何処かに行ってしまった。

 視線も感じないので鎌鼬は一撃離脱しかしないのかもしれないが、それにしても危なかった。

 あの刃物が当たっていたらと思うとゾッとする。

 何時でも剣で迎撃出来るように気を付けよう。


 何かいるな。

 前から気配っていうのか、何かがいると分かる。

 こんな事は日本では分からなかったから、体が変わった影響かもしれない。

 生き残るためには便利そうなので歓迎だが、慣れないから少し変な感じがする。

 それよりどうしようか?

 今まで何とか真っ直ぐ進んできたが、迂回するべきか剣と身体能力で無理矢理進むか。

 うーん、取り合えず相手を見てから決めるか。

 何とかなりそうな相手なら剣を使った実戦の練習相手にする。

 ダメなら気付かれないように注意して迂回する。

 よし、行こう。


 俺の視線の先にいるのは像みたいなでかい牙をした猪。

 猪の体も俺の胸までありそうだ。

 いけるか?

 あの猪なら牙と突撃に注意すれば、今の俺とこのでかい剣があればいけそうだ。

 …………殺るか。

 この世界には鎌鼬や目の前の猪等の危険な生き物がいるみたいだし、安全を確保する為には元の世界と違って力がものを言いそうだ。

 自衛の為にも生き物を殺す事にはなれた方が良いと思う。

 猪なら食えそうだし。


 猪に気付かれないように注意しながら少しづつ近付く。

 猪が背中を向けた所で一気に距離を詰めて剣を上から降り下ろす。


「シッ」


 剣が猪の体の半分以上を左右に断ち切り、切り口から血と内臓がこぼれ落ちる。


「うっ」


 血の匂いと目の前の光景から込み上げてくる吐き気を堪え、首を振って暴れる猪から距離をとる。

 猪はそれからすぐに動かなくなったが結構きついな。

 これからも生き残る為には避けては通れないと思うが慣れないと大変そうだ。

 それと猪はペンダントに入れて早くここから進もう。

 血の匂いで他の生き物がよってくるかもしれない。


 ふー、少し落ち着いた。

 生き物を殺したのはきつかったが、俺でも剣があれば戦えそうなのは分かった。

 この剣は切れ味が凄いので取り扱いには注意が必要だけどな。

 あれ?そういえば剣に血が付いていないな。

 次に使った時に確認しておこう。





「ラァッ」


 俺は剣を横凪ぎに振り切る。

 すると緑色の肌で俺の腰ほどの背の人形生物の首がまとめて三つ飛ぶ。


「アァッ」


 直ぐに振り切った剣を切り返し、背中から近づいていた2体を斬り殺す。

 今の俺はこの生き物の返り血を全身に浴びている。

 集団で襲ってきたこの生き物を既に10匹以上殺しているからだ。

 もう吐き気も感じないし、鼻も血の匂いで麻痺している。


「ッ」


 逃げようとした残りの一匹を背後から斬り殺す。


「はぁ」


 体は疲れてないが精神的に疲れた。

 猪を殺した後は生き物の気配を避けて通っていたが、まさかいつの間にか囲まれているとは思わなかった。

 相手が弱かったから良かったが、状況はヤバかったな。

 後は殺す忌避感も途中から感じなくなった。

 相手が人形の生き物だったので一匹目は躊躇ったが、逆に吹っ切れる切っ掛けになった。

 これからは多分もう大丈夫だろう。


 それより服はどうしよう。

 替えなんて無いが脱ぐわけにもいかない。

 かなり進んだと思うし、全力で走って突っ切るか?

 安全な食料を手に入れる為にも早く人がいる場所まで行く必要がある。

 途中で果物を見付けて採集したが食えるか分からない。

 よし、走ろう。

 最低限の注意だけはして、生き物に見つかってもふりきってやる。




「よっしゃあ!」


 森から飛び出した俺は歓声を上げる。

 これで地獄とはおさらばだ。

 二度と来るかこんなとこ!

 いや、マジで焦った。

 あの時に走る決意をした過去の自分を褒めたい。

 あのまま移動していたら死んでいたかもしれない。

 だって服の返り血の匂いで他の生き物がどんどん集まって襲ってくるんだからな!

 あの数に波状攻撃みたいに襲われたら流石に疲れて動けなくなったと思う。

 本気で恐ろしいなこの森。

 途中から避ける為に木とか足場にして三角跳びの水平バージョンとかやったし。

 元の俺だったら確実に死んでた。

 でもやったぞ。

 これで一つ、あの女神の理不尽を覆してやった。

 この調子で抗い続け、いつか絶対に殴ってやる。


 あと疲れているけどもう少し走り続けよう。

 今は何とか食料の為に人を見付けたい。

 猪肉はあるけど火を起こすのは大変そうだし、服も血が固まって気持ち悪いから替わりが欲しい。

 もう一頑張りしよう。


 おっ、道だ。

 遠いけど道らしき物がある。

 もうすぐ日が暮れるが、人がいる場所に着くまで延長で頑張ろう。


 おおー!

 日が落ちて暗いし分かりにくいけど、大きな建物があるのが分かる。

 二分の一で右に行くか左に行くか迷ったが当たりだ。

 喉も渇いてきたし腹も減った。

 あと少しだ!




「止まれ!それ以上近づくな!」


 えっ、何で!

 夜は街に入れないと門の前で夜営していた行商人さんに聞いたから昨日は野宿して朝まで待ったのに、何で門番の人に止められるんだ?


「血塗れの妙な格好で剥き出しの大剣を持つなど怪しい奴め。妙な真似をするなよ」


 ああ、止められて当然だわ。

 俺もそんな奴がいたら警戒する。

 そういえば行商人さんも俺と話している時は何か緊張していたし。

 ここは大人しくしておこう。


 うわー、兵士らしき人が沢山来るのが見える。

 あれ、俺の対応をするためにきているのかな。

 いくら俺が怪しくても少し大袈裟じゃないか?

 おっ、他の人より豪華な格好の人が出てきた。


「そこの男、武器を置いて後ろに30歩下がれ。抵抗しなければこちらから危害は加えない」


 うん、言うことをきいた方が良さそうだ。

 彼方さんも大人しくしていれば悪い様にしないと言っているしな。

 俺は剣を地面に置いて後ろに下がる。

 すると兵士が五人出てきて四人が俺の方を警戒し、一人が俺の剣を回収しようとする。

 やっぱり少し大袈裟じゃないか?

 一人を相手に四人で警戒するとか。

 あっ、剣を回収しようとしている人が、剣を持ち上げられなくて驚いている。

 回収しようとしている兵士の人は大柄で力も強そうなのに。

 やっぱり普通はあの剣は重いんだな。

 結局、三人で引き摺っていった。

 でもいくら重くても出来れば引き摺ってほしくはなかったな。

 あの剣はかなり頑丈だから許すけど。

 あと、あれだけ警戒するのも納得した。

 三人で引き摺るしかない様な物を軽々と持っている奴には、俺も出来れば近づきたくないしな。


「うむ、無礼な行いだとは思うが理解してもらいたい。我々には街を守る責任があるのだ。この後は移動して話を聞かせてもらうが、先程も言ったように何も無ければ危害は加えない」


 こんな怪しい奴にきちんと気を使うとか、いい人だな。


「分かりました。俺も何かをするつもりは無いのでよろしくお願いします」


 俺は兵士の皆さんに囲まれて詰所まで行くことになった。

 ちょっと大袈裟な事になったが、街には入れたので良かったな。

 それと出来れば飲み物か何か食べるものが出されると嬉しい。

 よく考えたら俺、無一文だし。


 街の中にある詰所に到着した。

 しょうがない事とはいえ、道中は恥ずかしかったな。

 だって街の人達がこっち見てひそひそ話をしていたから。

 話し声は小さいけど、五感も良くなった俺には内容が聞こえたし。

 血塗れで怖いとか変な格好とかヤバイ人かもとか。

 …………恥ずかしいのもあったけど、心が痛いです。


「では話を聞かせて貰おうか。まず君のその格好は何かな?ついでに血塗れになった理由も話してくれ」


 あっ、豪華な格好の人の質問が始まった。

 落ち込んでいる前に話をしなければ。


「この格好は故郷では一般的な服装です。血塗れになった理由は緑色で腰ほどの背の人形生物に襲われて、返り討ちにしたときの返り血です」


 これで良いよな?

 多分、他の世界から来たと言っても信じてくれるとは思えないし。


「ふむ、故郷の服装と緑色の生き物」


 あれ?

 何か不味かったかな。

 それだけ呟いて考え込んでいるんですけど。

 はっ!もしかしてあの生き物を殺したのが不味かったか?

 一応、話しかけても襲ってきたから返り討ちにしたけど、人の形をしていたし。


「緑色の生き物はゴブリンの事だと思うが、君の故郷にはいなかったのかな?それと魔族にその様な格好をする地域があるとは聞いたことがないが」


 ん?あの生き物、ゴブリンとやらを殺した事は大丈夫なようだが、名前を知らないのがおかしい位にあの生き物は有名なのか。

 それと魔族。

 ここまで俺やあの少年と同じ、黒髪紅眼の人しか居なかったから、そういう人種かと思っていたがどうやら違うようだ。

 もう少しそれっぽく話すか。


「故郷でゴブリンという生き物の名前を聞いた事はありますが、実際に見た事はありません。それと自分が何なのかは分かりません」


 これでいけるか?

 豪華な格、もう隊長でいいや。

 隊長は俺の答えを聞いて驚いているけど、嘘はついていない。

 元の世界でゴブリンという言葉は聞いたことがある気がするし、俺はこっちの世界の人では無い。


「君は魔族ではないのか?その髪と眼の色は魔族特有の物だ。両親も同じ色だっただろう?」


 ゴブリンについてはもういいのか?

 いや、それだけ俺が魔族ではないという事が大きいという事か。

 なら


「俺は捨て子なので親は知りません。それと故郷には同じ髪と眼の色をした人はいませんでした。色以外は同じでしたが」


「……すまない。しかしそれでは大変だっただろう。よく生きていられたな。それと何故捨てられたのかはわからないが、おそらく君は魔族だ」


 何か凄く重たく受け止められたみたいだ。

 嘘はついてないけど心が痛い。

 でもここまできたらやり通そう。


「拾ってくれた人は良い人でしたし、鍛えてくれた人もいましたので」


「そうか、人族にも良い者がいる事は知っているが、君は運も良かったようだな。うむ」


 隊長が優しい声でそう言うと深く頷く。

 本当に心が痛いです。

 あと話から分かるが、人族は色が違うだけで姿は魔族と一緒の様だ。


「少し疑問に思う事もあるが、君は嘘を言っている様でもないし、人には隠したい事もあるだろう。悪人でも無さそうなので、街へ入ることを認めよう」


 この人には感謝してなるべく迷惑をかけないようにしよう。

 それではついに街だ。

 そろそろ本当に腹が減った。


「では身分証、無ければ大銅貨五枚を支払ってくれ」


 あっ、まだそれがありましたか。

 どうしよう。




 現在、俺の所持金は大銀貨3枚、銀貨8枚、大銅貨9枚だ。

 隊長さんに金が無いことを話したら、何か売れそうな物はないかと聞かれたので猪と果物を出した。

 すると二つとも売れば良い値段がするらしく、俺の代わりに売りに行って金に変えてくれた。

 ついでにそのままの格好だと騒ぎが起きそうということで、井戸で水浴びをさせて貰い、服と大剣に巻く布も買ってきて貰えた。

 きちんとした大剣の鞘は飯を食った後に注文しにいこうと思う。

 注文というのは、剣がでかすぎて丁度良いサイズは無いだろうと教えられたからだ。

 武器はいつでも使える様にペンダントには入れたくないからな。


 しかしこれでやっと一段落ついたし、飯を食いに行けるな。

 そろそろマジで腹が減ってヤバイ。

 何処の店が良いだろうか?

 屋台で売られている串焼きも旨そうだが、今はがっつり食べたい。

 おっ、あの店が良さそうだな。

 旨そうな匂いが漂ってくるし、人も良い感じに入っている。

 詰所に行っていたので朝飯時は少し過ぎている様だが、それでも人がいるということなので期待が持てる。

 よし、あの店に決めた!


「いらっしゃいませ。お泊まりですか?お食事ですか?」


 うん?どうやら飯屋だけでなく宿屋でもあったらしい。

 丁度良いので宿も取っておこう。


「両方でお願いします。いくらですか?」


「はい、一泊大銅貨3枚で朝と夜のお食事も付けると大銅貨4枚と銅貨5枚です。それとお食事ですが、こちらでお出しした料理以外を追加で頼む場合は別料金になります」


 可愛い女の子が対応してくれたがどうしようか。

 屋台とかの売り物をみると銅貨1枚で100円位だから、二食付で4500円。

 普通の宿がどの程度かは分からないが、金もあるのでここにしてみよう。


「飯付で四泊お願いします」


「はい、お食事付で四泊なので、銀貨1枚と大銅貨8枚になります」


 俺は銀貨2枚を払って、お釣りに大銅貨2枚を貰う。

 この世界の通貨は計算するのが楽だ。

 鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨があって、全部が10進法だからな。

 でもよく考えれば白金貨1枚で元の世界だと1億円か。

 俺が使う機会は無さそうだが、持っていたら無くした時を考えると恐ろしいな。

 この世界に銀行の様な物があるかは分からないし。


「それではこの鍵がお客様のお部屋の鍵になります。部屋番号は25番。鍵にも書いてあるので忘れた時は鍵を見てください。それとお客様のお名前をここに記入してください。宿を出るときに鍵をお預かりしますので」


 女の子に渡された帳面(?)に名前を記入しようとして日本語で書くか迷ったが、次の瞬間には解決した。

 何故かこちらの世界の文字が思い浮かび書けるのだ。

 どういう事かは分からないが、文字は読めるし書けるので良しという事にしておこう。

 いずれ理由も分かるかも知れないしな


「アオイさんですね。それではあちらの席にどうぞ。注文がお決まりになりましたら声をお掛けください。それと宿泊に付いているお食事は今日の夜からなので、今回は食べたい物を全て注文してください」


 女の子はそれだけ言うと他の客の注文を取りに行った。

 少し素っ気ない気もするが、はきはきしていて俺的には好印象だな。

 俺は漂ってくる料理の匂いに期待しながら、指定された席に付いてメニューを見ることにした。




「旨い!」


 ついそう言ってしまう程、飯が旨い。

 空腹ということもあるが、料理自体が普通に旨い。

 これはこの宿に決めて良かったな。

 この料理なら泊まっている間の飯も期待が持てる。

 腹が減っていたので沢山頼んだが、追加で何か他の物も頼もう。


「まだ頼むんですか」


 追加の注文をしたら、女の子が呆れたように呟く。

 さっきまでの態度が嘘の様だが、おそらくこっちが素のようだ。


「ほぼ1日の間、飯も食わずに動いていたから腹が減っているんですよ。ここの料理は美味しいですし」


「それは大変でしたね。料理の誉め言葉は父に言っておきますよ」


 俺以外に客がいなくなったせいか、それだけ言って注文を伝えに行くとまた戻ってきた。

 追加の料理が来るまでの話相手には丁度良いか。


「料理を作っているのが親父さんって事は、この宿の娘さん?それと何か話し方と態度が変わってないですか?」


「そうですよ。そう言うお客さんは冒険者か傭兵ですか?そんなにおっきな剣を持っていますし。それとさっきまでは営業用。元に戻した方がいいですか?」


 思っていた通りだったが、気になる単語があったな。


「そのままで良いですけど、冒険者や傭兵って何ですか?」


「あれ?違いましたか?話からもてっきり仕事帰りの人だと思ってたんですけど」


 何だか面白そうな話だ。

 これから金を稼ぐ必要もあるので、ちょっと詳しく聞いてみよう。




 ふむ、飯を食い終わったので剣の鞘を作ってくれる店を探そうと思ったが、どんな店に行けばいいのか分からない。

 これは先に仕事の方を決めて、そこで聞いた方が早いかもしれないな。


 そして仕事というのは冒険者か傭兵だ。

 まず冒険者と傭兵というのは何でも屋みたいな者の事らしい。

 二つは何が違うのか聞いたところ、冒険者は冒険者組合に登録する事でなることができ、組合を通して仕事を貰えるらしい。

 それに対して傭兵は自分で仕事を見付け、契約も結ばなければならない。

 これだけ聞けば冒険者になった方がいいと思うが、冒険者は仕事を組合に貰える代わりに中間マージンを取られる。

 面倒な事をしないですむのが冒険者で、同じ様な仕事でも稼げる金が多くなるのが傭兵と言ったところか。

 俺としては分からない事が多いので、中間マージンを取られるとしても冒険者になろうと思っている。

 常識とかまったく分からないからな。

 そう言うわけで冒険者組合を目指すことにしよう。


 途中、人に道を聞きながらも冒険者組合の建物が見える場所まで来ることが出来た。

 俺の剣ほどでかい武器を持っている者はいないが、武器を持っていたり鎧を着た者が出入りしている。

 ここだけ見るとまるでファンタジーの様な世界だな。

 いや、ゴブリンとか鎌鼬みたいな生き物もいる世界なので、元の世界からみたらこの世界からしてファンタジーか。

 取り合えずここにいてもしょうがないので中に入ろう。


 冒険者組合の中に入ると多くの視線が集まってきて、次の瞬間にはその数を減らす。

 残っている視線は何だか観察されているような視線と、嫌な感じがする視線だ。

 森の中でも感覚が鋭くなったとは思ったが、視線や雰囲気から相手の意志が分かる気がする。

 冒険者組合の内部は受付と酒場みたいになっているので、嫌な視線の相手から声を掛けられる前に早く受付に行こう。

 そう言えば魔族とは違う色の髪や眼の色、姿の者がいるな。

 受付にも美人で猫耳の女の人がいるのでそこに行ってみよう。


「冒険者組合にようこそ。本日はどのような御用件でしょうか?」


「冒険者の登録をお願いします」


「分かりました。契約内容を確認して、よろしければこちらの紙に名前を記入してください」


 話し方を少し期待していたが普通だったな。

 契約内容も依頼で死んでも自己責任とか、罪にあたる行為をしない等の当たり前の内容なのでオッケーだ。


「アオイ様ですね。冒険者の身分証となるドッグタグは明日渡すことになるので、それまではこの仮証をお持ちください」


 冒険者組合の物と思われるマークが彫られている、5㎝位のドッグタグを渡された。

 簡単に登録は終わったな。

 まぁ、契約内容に犯罪を犯したものは冒険者組合で賞金を掛けると書いてあったので、身元はどうでもいいのかな?


「今日からお仕事は可能ですが何かお受けになられますか?こちらで紹介しても良いですし、あちらのボードに貼り出されているものから選ぶことも出来ます」


 受付の人が示した方を見ると依頼書らしき紙が沢山貼り出されている。


「どの依頼も受けられるんですか?」


「はい、条件が指定されているもので無ければどの依頼を受ける事も可能です。ですが中には依頼が失敗した場合に違約金が発生するものもあるので御注意ください。それと失敗した場合に多大な被害が出るような依頼は貼り出させていませんので、どの依頼を受けようと全ては自己責任です」


 何か質問を全部先回りされた。

 俺と同じ様な質問をする人が多いという事かもしれないな。


「それではどうなさいますか?」


 この人、淡々と仕事をこなす感じで恐いな。

 話が進みやすくて楽だけど。


「今日は仕事は受けません。それと聞きたい事があるんですけど良いですか?」


「分かりました。質問ですが一般的な事、仕事をする上で関係ある事であればお答えします」


「この剣の鞘を作りたいんですけど、どこに行けば良いでしょうか?」


「はい?鞘ですか?」


 俺が質問と言った瞬間、眉間に皺が寄って猫耳もピクリと動いていたけど、今はポカンとした顔をしている。

 あっ、顔が赤くなった。


「そ、それでしたら武器を扱うお店を組合で紹介させていただきます。地図を書いて来ますので少々お待ちください」


 クールで美人だと思っていたが、慌てて奥に行く姿は赤面と合わさって可愛いな。

 そんなことを俺は思ってしまった。




 冒険者組合を後にして、渡された地図を頼りに武器屋(?)に向かっているのだが、組合を出るときからずっと嫌な視線を感じる。

 多分、誰かに後をつけられていると思うが何も言ってこない。

 どうしようか?




「へっへっへ、どうやって襲うか考えていたが自分から人がいない場所に行ってくれるとはありがてぇな」


「そうっすね。大した装備もしてないようですし、さっさとやっちまいましょう」


「あんな馬鹿でかい剣を持っていれば強く見えるとでも思ってるんすかね?あのなりで」


 視線が鬱陶しくなってきたので路地裏に入って少ししたら案の定絡まれた。

 相手は3人で組合にいた奴等の気がする。

 話からすると俺の格好から目を付けていたようだ。


「あー、お前ら何が目的だ?いい加減、視線が鬱陶しいんだが」


「ああ?言うじゃねえか。金さえ出せば許してやろうかと思ったが、目上に対する態度も教育した方が良さそうだ」


 阿呆らしい、ただのカツアゲか。

 中学の入学式で喧嘩したのを思い出すな。

 乱入ではなく当事者が俺だけど。


「俺は行くところがあるからどっか行け。お前らみたいに暇じゃ無いんだよ」


「てめえ、行くぞお前ら!」


 少し煽ったら簡単に突っ込んで来た。

 行動から何となく思っていたけど、こいつ等は馬鹿だな。

 もう本当に面倒になってきたので、あいつ等が来る前に全力で剣を地面に叩きつける。

 地響きが起こり、路地裏に溜まっていた土埃は舞い、剣を叩きつけた地面はリーダーらしき男の手前まで裁断されている。

 ここまでの事が起こるとは思わなかったが効果は適面。

 3人とも腰を抜かしているようだ。


 しかしヤバイな。

 周囲が騒がしくなってきた。

 あれだけの地響きが急に起これば当然だが、このままでは最悪、また詰所でお世話になることになりそうだ。

 迷惑を掛けない様にしようと思っていたのに!

 逃げよう。

 こいつ等は俺に恐怖の視線を向けているので、脅して置けば多分、大丈夫だ。

 バレたら素直に謝ろう。


「お前ら、二度とこんな事をするなよ。もしやっている所を見かけたら、今度は脅しじゃ済まないからな?後は俺についても話すな。分かったらさっさと消えろ」


 元の世界でも言った事のあるような言葉。

 普通ならこいつ等が逃げるのを見届けるが、俺はそれだけ言って逃げる事にする。

 男達の返事は聞いていないが、遠くから聞いた事のある声が聞こえて来たからな。

 ごめんなさい隊長。




 ちょっとした騒ぎがあったが、無事に目的地に到着した。

 剣は地面に叩きつけた時に、巻いておいた布が切れてしまっていたので、仕方なくペンダントにしまっている。

 鞘を注文はするが、完成までに巻いておく布を帰りに買わなくてはいけない。

 では店に入ろう。


 店の中には武器が沢山置かれている。

 中にはどうやって使うのか分からない物もあるな。

 しかし武器はあるのに店員がいない。

 どうすればいいんだ?

 声をかけてみよう。


「すみませーん!誰か居ませんか」


 奥の方から物音が聞こえてくる。

 人はいるようだが不用心ではないだろうか?

 ……まぁ俺には関係無い事か。


「すみません、お客さん。ちょっと親方に呼ばれていたもので。本日は何をお求めでしょうか」


 俺より少し年上、20台半ば位の男の店員が出てきた。

 どうやら俺がたまたま店員が店にいない時に来ただけの様だ。


「この剣の鞘を鞘を作って欲しいんですが、大丈夫ですか?あと出来れば背負えるようなベルトか何かもあると嬉しいんですけど」


「これは……」


 俺はペンダントから剣を取り出して要件を伝えるが、剣を見た店員の男は何かを考え出して返事がない。


「少し待っていて下さい。物が物ですので私の手には終えません。今、親方を呼んできます」


 しばらくしてからそれだけ言うと、男は店の奥に入っていった。

 どうやらこの剣はただの剣では無い様だ。

 確かに凄く頑丈だし切れ味も半端ないからな。

 手に入れた場所も普通では無かったし。


「それを早く言わんか!」


 何か奥から怒鳴り声が聞こえて来た。

 ドカドカという足音も。


「ほぅ、確かにこれではあいつの手に余る。ワシでもあいつよりはましだが手には終えんな」


 奥から背の低い髭の凄い男が出てきたかと思えば、剣を見て目を光らせながらそんな事を言う。


「親方さん?で良いですか?」


「お主がこの剣の持ち主か。呼び方はそれで良いし、要件も聞いた。しかし依頼を受ける前に、この剣についてお主に説明する必要がありそうだな」


 鞘を作って貰えるのは良かったが、親方さんはこの剣について分かることがあるらしい。

 この剣を抜いてから分からない事ばかりだったので、少しでも分かるのならありがたいな。


「お願いします。俺もこの剣については、分からない事が沢山あるんですよ」


 どんな話が聞けるかは分からないが、しっかり聞く事にしようか。


「ふむ、まずワシはこの剣と同じ様な物を、剣ではないが6つ知っておる」


 ほぅ、これと同じ様な物が分かるだけでも6つあるのか。

 女神を殴る為には力がいると思うので、機会があれば手に入れたい。


「しかし、それはこの剣がどういう物か分かれば、誰でも同じ物を知っておるだろう」


 あれ?誰でも知っているって話の方向が怪しくないかこれ。


「この剣は力の結晶で作られておる。かの6英雄が使ったとされる道具と同じようにな。お主も知っておるだろう?」


 どうしようか、全く分からない。

 多分、この世界の住人なら知っていて当然なんだろうが、昨日まで元の世界にいた俺は6英雄なんて知らない。

 ん?英雄?そう言えば、あの廃城で見付けた本のタイトルが英雄物語であったような。

 ペンダントから本を取り出してみる。

 うん、やっぱりそうだ。


「おう、それじゃ。まさか本を持っておるとは思わなかったが、その本に書かれておる事が実際にあった事は六人の内の三人がまだ生きておるし、道具自体も残っておるから分かると思うが、とにかくこの剣は6英雄の道具と同じなのだ」


 うわー、それってヤバイんじゃないか?

 俺も同じ様な物が欲しいと思ったが、要するに伝説の道具とかそういう物って事だろ?

 この剣を巡って争いに巻き込まれるとか無いよね?


「もしかしてこの剣を持っていると大変な事になりますか?」


「いや、その剣は力の結晶で出来ておるのは確かだが、物語に出てくる訳でもないし、何故か肝心の力が失われておる。確かに6英雄の道具と同じ物ということで希少価値はあるが、武器としては重たすぎてまともに使える者がいるとは思えんので、争い事になる可能性は低いだろう。というかお主もこんな重い剣を使えるのか?」


 良かった、面倒事はさっきのチンピラだけで沢山だ。

 可能性は残っているが、低いならまだましだ。


「ええ、使えますよ。俺は少しだけ普通の人より力が強いんですよ。あと、力が失われているって言うのはどういう事ですか?」


「使えるのなら構わん。力については、特殊な能力があった事と、長い年月、他の力で強化されておった事は確かだが、今はその能力が失われている、いや、何かに移ったと言った方が正確か。その何かについてはワシでも流石に分からんが、とにかく今のこの剣には特殊な能力は無い。重ささえ考えなければ、それでも名剣ではあるがな」


 親方さんの話にある、力が移った物について凄く心当たりがある。

 正確には者だが。

 これは、今日の所は早く宿に帰って読書をした方が良さそうだ。

 あの本自体も早めに読んでおこうと考えていたしな。


「お話しありがとうございます。それと鞘についてよろしくお願いします」


「おう、任せておけ。こっちも珍しい物を見ることが出来たので、料金は要らん。鞘と言うよりカバーの様になるがな」


 これで目的は達成。

 出来れば色々と買い物をしたかったが、今日は読書だ!

 俺は真っ直ぐ宿屋に帰った。

            

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