竜神記 神様なんてこんな物だ。
雲の上でかったるそうな格好でドラゴンが昼寝をしている。
その巨大な姿は黒金色に輝き威風堂々とした佇まいをしていた。
コレがニートだったオレが転生した今の俺の姿だ。
ど~やら面倒なのがきやがった。
俺の髭がバリバリ感じやがる、また人間の頼みごとかよ?
たまには自分でヤレよ、自分で…、困った時だけ神に頼むのだからさ……。
下界の俺が奉られた祠の前で老人が土下座をして必死で願いをしている。
供物も出す余裕もないのか、手桶に水だけ汲んで来ていた。
その形相は必死である。
「龍神様、どうか雨を降らして下さい。
このままでは、村の作物はダメになってしまいます」
俺は、かったるい目を半分開けて下界の老人をみた。
見るからに貧乏人の小汚いジジイだ。
だりぃなあ 仕事かよ。
幼女ならいざしらず、こんなクソジジイの願い事なぞで働きたくないぜ、全く。
「早速仕事ですよ、龍神様」
あまったるい声が俺の側でした。
そちらの方を振り向くと、ラフな格好で黒髪の華奢な女性が居た、リースだ。
こいつは俺のお目付け役をしている女神だ。
「雨乞いだよな?」
「そうですよ、龍神様」
「こんな場合、風を起こして雨を降らせれば良いのだろう?」
「そうですね、翼で風を起こして頂ければ雨を降らせる事が出来ると思います。
くれぐれも、宜しくお願い致します」
「だりぃ~。
けど、行ってくるわ」
コレが転生した今の俺の仕事。
やってる事はジジイの頼みを聞いてたまにこき使われる、ニートの頃と変わりゃしねぇ……。
俺はかったるそうに空に飛び立つと、ジジイの村の近くまで向かった。
俺の眼下にはみすぼらしい村々が広がっている。
わざわざ村まで行くのもかったるいなぁ。
ここらで、適当に風でも起こすか!?
何処で風が吹いても雨が降る時は降るだろう……。
俺は巨大な翼で風を起こし始めた。
あたりに巨大な竜巻が現れ暴風が巻き起こる。
まるで黙示録の世界である。
某ゲームではメガフ○アをぶっ放す最強クラスの召還獣とも呼ばれ、別のゲームではマス○ードラゴンとも呼ばれる居る神の中の神、それが俺だ。
そこらに居る転生した野良ドラゴンや蜘蛛やらスライムやらとは格が違う!
俺の羽ばたき一つで嵐を呼び、ブレス一発で大陸が消滅する。
世界最強の生き物。
それが俺が転生した龍神と言う存在だ。
俺が巻き起こした風は山々を越え、雲を起こし……。
雨は降った。
大水害が起きている所に。
肝心のジジイの地方には乾いた風だけが届いて居るようだ。
旱魃が起きる所は、地形的に雨が降らないんだから、いくら風を起こしても雨は降らねえんだよなぁ……。
逆に降る場所は何もしなくても降るんだよ。
それを降らせろと言うんだから、そんな物は神でも無理だぜ……。
「リース悪りぃ 風の方向間違えたかも」
俺は巨大な前足で頭を掻きながら口を開いた。
どうやら俺は風の方向を間違えたようだ。
風向きと雨の関係は未だによくわからねぇ ただリースの視線だけ痛い。
「おじいさんの地方、干魃で争いが起きていますが…。
一方で水害の地方は被害が拡大していますよ?」
「一応雨は降ったから良いんじゃね?
血の雨だけどな」
俺は大笑いしながら口を開いた。
リースはあきれかえっている。
「笑い事じゃ無いでしょう?
この後、どうするんですか?」
「干魃起きやすいなら、あらかじめ、ため池掘るなり手を打たないからじゃね?
つまり干魃は自己責任、俺がどうしようとなる時はなるんだよ」
俺が馬鹿笑いするのを横目にリースは冷ややかに視線を投げかけて口を開いた。
「争いの方はどうされるのですか?」
「ちょっくら 行ってくるわ」
俺はそう言うと、争いを起こしている村同士のあたりに飛んでいった。
上空から見るとゴミ屑のような人間共が、血みどろの争いをしている。
「見ろ、ここからだと、まるで人がゴミのようだ」
「龍神さま、これからどうするんですか?」
リースは不安そうにこちらを見ている。
彼女の視線を余所に俺は口を開いた。
「喧嘩両成敗って事で両方に我慢して貰うぜ」
俺は口の中で反物質を練り上げると魔法でコーティングした。
「そーれ行くぞ メガフ○ア」
「龍神様、ちょ ちょっと待って下さいよ!
そんな事をしたらみんな死んじゃいますよ!!
死んじゃう~~~~!!!」
必死の形相のリースは俺を止めようとしたが、
俺は構わず威嚇として、数発の光弾を争っている村の外れに打ち込んだ。
光弾はE=mc²の公式通り反物質はすべてエネルギーに変わったようだ。
閃光―――
爆炎―――
着弾点はキノコ雲が上がり、凄まじい爆風が吹き抜けて行った。
粉塵爆発なんぞ足元にも及ばない威力が対消滅反応だ。
凄まじい熱量の前に一瞬にして足下の人間共は分子レベルまで分解されたようだ。
後には焼け焦げた無人の荒野が何処までも広がっている。
どうやら、力を入れすぎたようだ。
こちらも力の加減がよく分からん。
相当力を抜いたはずだが……。
そこには空しく爆風が吹きすさんでいた。
まあ、やってしまったものは仕方ない、人間共にはあきらめて貰おう。
「リース、これで争いは無くなっただろ?」
「確かに争いは消えましたけど……。
村も消えちゃいましたよ?」
「これを見れば、二度と争いは起きないだろう、はっはっはっ!!」
「笑い事ですか……?」
リースの冷たい視線を無視して俺は腕を組んで笑い声をあげた。
「あの村、結構人口居た筈ですけど?」
「人間どもなんか、ほっとけば勝手に繁殖して増えるから問題ないだろう?」
「確かにそうですが……」
リースが悲しい表情を浮かべている隣で俺は地表を指差しながら口を開いた。
全く、俺様を大量殺人鬼に様に見やがって……。
俺は神様だぞ、そんな事をする訳あるまい。
「それによく見て見ろ、死者は誰も居ないぞ」
俺が見ている視線の先には、無数の青白い球体が地面に浮かんでいる。
その中には、人間どもが阿呆の様な表情であたりの光景を見入っていた。
それを見たリースの表情が明るくなった。
「龍神様、あれってマジックシールドですか?」
「そう言うことだ。
極大魔法を使う際は、味方への防御魔法は必須だからな。
俺にとってあの程度の人数を保護することなぞ造作もない。
ふははははは!!
敬って諂え!!!!」
俺は大威張りでふんぞりかえり、大笑いをいをした。
巨大な笑い声が荒野をコダマする。
「ありがとうございます、龍神様」
「リース、仕事も終わったし、とっとと帰って寝るぞ、だりぃ~」
「そうしましょう 龍神様」
帰る途中、焼け野原になった大地をみて俺は心の中で呟いた。
地面平らになったから復興頑張れよ~。
これなら復興に忙しすぎて争い起こす間も無いだろう?
爆風の凄まじい熱でその後、ゲリラ豪雨が起きたのは言うまでもない。
そうして俺は自分の巣に戻って行った。
な~んか嫌な予感がするな、髭がビンビンする。
巣に戻った俺は下界を見ると、案の定、次の願い主が祠に来てやがる。
今度の願い主は幼女か?
俺様も頑張らねばなるまい!!
これが俺の今の日常だ。
人間共の頼みを聞き、傲慢な人間には神罰を与える。
至極簡単な職業、それが龍神だ。
神って楽な商売っすねぇ~。
ニート転生、最強ドラゴン今日も行く。
神様とは、実はこんないい加減なものです。