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9.一人称・三人称

【文字数】

 16000字ほど


【作者コメント】

 今回は承前が話の本筋に少し関わっていますので、できれば0から読むことをお勧めしておきます。

 おそらくは1からでも話は通じるとは思いますが、念のため。ただでさえ長い回に、申し訳ない次第です。


【目次】

 0.承前

 1.一人称の難しさについて

 2.神の視点の難しさについて

 3.三人称の難しさについて


0.


 古典部の部員……じゃなかった、関係者は二人である。

 先輩は律儀なタチだし、わたしも連絡をおろそかにするような粗忽モンではないから、出欠はメールで確認できる。

 とはいえ、日によって掃除の都合、HR(一応付け足すが、ハンターランクではなくホームルームのことである)の長引き、授業の疑問点を先生に問いに行く時間、友達との何気ないおしゃべり……と、図書予備室に赴く時間には若干のバラツキがある。これは仕方ない。

 委員会か何かで遅れるようなよっぽどのことならともかく、それくらいのズレは誤差の範囲。連絡するまでもない事柄である。早く来た方が部室を開けて、電気ケトルに水を入れるってだけの話。

 部外者のわたしが開けていいのかなあ、なんて悩んでいたのはもう、とうの昔の話だ。

 ぼちぼち、予備室の施錠を確認してから図書室に逆戻りするのも飽きてきたわたしは、先に顔を出してから予備室に向かうようになった。部外者とはいえ世話になってるわけだし、「ちわー」と挨拶一つ入れておくのが礼儀だろうしね。

 そんなわけで、今日も今日とて図書準備室に「ちわー」したわけだが、鍵を渡してくれた司書さんに捕まった。いや、正確には、鍵を手渡す手を餌にフィッシングされた感じで、わたしはまだ鍵を受け取れてないんだけど。


「ね、ね」

「……な、なんですか?」


 ちょっと引きながら応対するわたし。いや、なんかさ、こう、絡まれてる感がハンパなくて。他の皆さんもニコニコ見守らないでください。誰か助けてくださいよ、いや、ネタ振りじゃなくてね。


「正直なとこさ、彼と、どうなの?」

「彼?」

「とぼけなくていいから、ね?」


 ツーカーじゃないんで(※1)、ちょっと、そんなに指示代名詞が多いと理解が届かないんですけど。

 わたしの鈍い反応に、司書さんはもどかしそうに口をとがらせた。


「もう、だからさ、図書予備室の主さん」

「図書予備室の……? ああ、先輩ですか?」


 っていうか、先輩、そんな風に呼ばれてたんだ……。一国一城の主だったらしい。ブルジョワだな、先輩。

 絡まれてる現実からちょっと逃避していたわたしに、司書さんはさらに詰め寄ってきた。ひ、ひい、わたしのパーソナルスペースはどこに消えた。猫の額ほどもないでぇ。


「そう、その彼と、もうかれこれ一ヶ月かそれくらい?」

「あー、わたしが古典部に行くようになってからなら、それくらいですね」

「うん、そうでしょ、二人っきり」


 ふ、二人っきりっすか。いや、ウソ偽りなくその通りなんですが。

 しかし、世話になってる図書室サイドにまで古典部の閑古鳥の声は聞こえているのか。いいのかなあ。いや、どう考えても良くないよな、この状況って。

 他人事ながら、わりと深刻に心配になってきたわたしに、司書さんはズバリ訊いてきた。


「ね、ね。もうそろそろ、良い感じにはなってるよね」

「はあ。え、はあ……?」

「っていうか、もうとっくに告っちゃってる感じ? ね、ね。どっちからなの?」

「……はあ!?」


 ようやく文脈が読み解けたわたしは、途端、図書準備室いっぱいに音波を放った。声域的に言うとわたしはメゾ(メゾソプラノ、つまりはフツーの高い声も低い声も出ない人なんです。あ、みんながみんなそうってわけじゃないけどね)なんだけど、いまはトップでやれる音を出したはずだ。非楽音だけどさ。


「いや、いやいやいや。どっから湧いて出たんですか、そんな話」

「ええ!? うちじゃ、もっぱらの評判なんだけど」

「女子校か、ここは……」


 と、女子校への偏見丸出しにわたしはうめいた。彼女らは恋バナを主食にして生きてるに違いないと思う私は、どうみても共学校生徒です、本当にありがとうございました。(※2)

 わたしの正直な反応に、司書さんはビックリしたみたいだった。


「うそ、でもさでもさ、キミも熱心に顔出してるよね?」

「それは、まあ」

「カレシでもない相手とずっと顔つきあわせてんの、マジで?」

「いや、まあ、マジですけど」

「うそ、そんな、非生産的な」


 男女が生産的な活動を行うわけにはいかんでしょう。神聖なる学び舎ですよ、ここは。

 そんなややアレな思案をするわたしを、まじまじと、まるで生まれた子がどう見ても子泣き爺にしか見えなかったかのようなそんな愕然たる表情で(どんな表情だ)司書さんはわたしをのぞき込んだ。


「でもさでもさ」

「はあ」

「昨日は何かあったんだよね」

「……掃除ならしましたが」

「え、じゃあ、彼が泣き腫らした目ェしてたのって、単なるハウスダストのアレルギーってこと? 告って失敗したり成功したりじゃなくて?」

「いや、ええと、アレルギーってことではないんですが」


 ど、どうしたもんか。昨日に引き続いて、ピンチ第二弾である。

 個人的なことではあるし、いや、本に感動して泣いた話くらいしてもいいかなとは思うんだけど、でも適当に話すのは男の沽券に関わるような気もするし、いや、うん、やっぱり個人的なことだし、わたしからは先輩が泣いた話は話せないよね。

 だ、だから、そんな顔が引っ付くかってくらいぐいぐい来られましてもね。いや、話せないことは話せないもので。


「ごめんください」


 ノック音も、ガチャっていうドア音もなく、聞き覚えのある声だけがさっと耳に入ってきた。


「……お邪魔します。邪魔するなら帰ってください、はい、ではさいなら」


 ぼそぼそっとつぶやいた言葉がさらに耳に入って、わたしが振り向くと、たいそう気まずそうな顔をした先輩がいた。


「お取り込み中のところ失礼しました。ではこれで」

「ちょ、ちょっと先輩、帰らないでくださいよ!」




1.


 先輩によると、先輩の中では「痴情のもつれから言い合いになり、私学司書が生徒の首を絞め、扼殺する」という感じで処理されたらしい。痴情のもつれて。わたしと司書さんがってこと? この学園には百合の花が咲き乱れてるんですか。

 こういう話、本人にするの、すっごく恥ずかしいんだけど、しょうがないから道すがら経緯を説明する。


「つまり、君とのラブロマンスがこのちっぽけな図書予備室で繰り広げられていると、司書さん方は思っておいでだと」

「なんか、そうみたいです」

「役者が足らんな。恋愛物の基本は四角関係らしい。せめて三角は欲しいな。二人じゃ発展性がない」


 いやいや、そんな創作的な観点から噂話を切ってどうするんですか。

 っていうか、基本が四角関係なんですね。それ、どこ情報なんだと訊いてみるわたし。


「詳しくは知らんが、韓国ドラマの法則らしい」

「するとその狭い中で、不治の病にかかったり、事故ったり、実は腹違いの兄だと判明したりするんですね」

「すまんが、韓国ドラマは守備範囲外なんだ。なんの話だ?」

「いや、適当に言っただけなんですけど」


 韓国ドラマの話はうちの母にでも訊いてください。ねちっこく解説してくれますよ、たぶん。でも、わたしは全然知らないんで。

 そんな無駄話を繰り広げながら、わたしは司書さんからぶんどった鍵で図書予備室を開放した。昨日はモップまでかけたから、ちょっと合成石鹸の香りが残ってるね。ただ、相変わらず空気ぬるいなあ。とりあえず窓開けるか。


「その手の話題は、あまり気にしない方がいい。あちらも茶請けぐらいの気持ちで話してるだろうからな」

「そうですけど、あんまりそういう噂になるって体験がなくて」


 どうも慣れない感覚があって、ついつい目線が泳ぐ。むずむずするなあ。落ち着かないなあ。

 先輩は相変わらずの無頓着だから、気にしてないみたいだし。一人でそわそわしてるのもなあ。恥ずかしいよ、これ。


「所詮、人は一人称でしか生きられない」

「はあ」

「どう弁明したところで、司書さんは司書さんの視点で見るもんだ。しかも、こと恋愛に関しては、人一人の見方ってそうそう変わらないからな。ひとたび怪しいと思えば、ひるがえりようがない。変に強く言い返すと逆効果だから、適当にあしらっておけばいいよ」

「いや、その適当なあしらい方がわからないから困ってるんですけど」

「適当に、『カレの落とし方』か何かでも訊いてみるといい。大喜びで駆け引きがどうのこうのと教えてくれるだろうから」


 ずいぶん冷たい言い方である。

 きょとんとするわたしに、先輩は苦笑い。


「まあ、実際、いろいろ教えてくれたからな」

「あ、ああ……」


 体験談なんだ。いや、まさか、先輩まで食いもんにされていたとは。

 司書さん方、恐るべしである。

 いつもどおり、先輩は中央に、わたしは端っこに座って。

 さあ、まずはお茶でも入れようか、となったわたしに向かって先輩は話を始めた。


「というわけで、今回は人称の話をしようか」


 どういうわけなの……?


「小説において、人称というと、一人称と三人称のことを指す。あんまり二人称は一般的じゃないな」

「は、はあ」


 わたしがついていくのも待たず、話を始めてしまう先輩。

 おいおい、いつもの丁寧な個人指導はどこいった。


「一人称というのは、地の文でも『オレは』『私は』と一人の視点に立って物語を進める形式を言う。三人称は『彼が』『彼女が』と、地の文が第三者の立場に立って物語を進める形式を言う」


 ここまではいいか、と問う先輩に、わたしはハイと手を挙げた。


「なんだ」

「先輩、話を始めるのは構わないんですけど、お茶入れるくらいの間が欲しいんですが」

「……それもそうか」


 先輩は目を何度かパチクリさせて、周りを見渡す。

 それから、なんだか納得したかのような顔で一つ頷き、謝ってきた。


「すまん。ちょっと動揺してたようだ」

「いや、ちゃんと言っておきますけど、わたし、司書さんとラブロマンスなんてやってませんからね」

「わかってるわかってる」




 お茶を入れてから仕切り直し。


「一人称と三人称については大丈夫だな?」

「はい。ただ、小説を書くときに、一人称にするのか、三人称にするのか、どういう基準で決めてるのかはよくわかんないんですけど」

「プロならおそらく、自分が書きたい物語に適している方を選ぶんだろう」

「物語の雰囲気に合わせて、ってことですか?」

「というより、物語を進めるに当たってどんな情報を伝えなければいけないか、という点が大事になってくるんじゃないかと思うよ」

「ふむふむ」

「一人称のように視点を固定した方が適しているのか、三人称のように視点をいくつも動かして全体を見渡さなければならないのか。作品のジャンルやストーリーの展開によって変わってくるはずだ」


 少し抽象的過ぎる気がしたので、もうちょい詳しく、とわたしは要求した。


「たとえば、恋愛小説で、最初から主人公とヒロインの両者がどう思ってるか、一切合財わかってしまったら興ざめだろう。節々で相手の視点を入れるならともかく、主人公もヒロインも同じくらい描いてしまえば、ドキドキする展開は演出しづらくなる」

「なるほど。一人称向けだと」

「あと、読者が感情移入するためにあんまり視点を分散させるべきではない、というのもあるな」

「ああ、確かに。主人公に自分を投影する読み方が普通ですもんね、恋愛小説は」


 他人の恋愛をのぞき見る楽しみでもあるが、何より、甘酸っぱい恋愛を追体験することこそ、恋愛小説の醍醐味だろう。

 視点を分散させすぎると、なかなか主人公に没頭できない、という理屈はよくわかる。


「逆に、戦争物で一視点限定ってのは、ちょっと厳しいものがある」

「『銀英伝』(※3)も、視点がぱっぱと変わりますもんね」

「確かに、あれなんか視点はあっちこっちだな。ただ、当初からラインハルトとヤンが主役だと明確に描いているから、二人の物語が平行して進んでもすんなり入っていける。あのへんは達者なところだ」


 先輩がお好きな「星界」シリーズ(※4)も多視点で描かれる物語である。一つの戦争を語るとなると、どうしても一視点では説明しきれないのだろう。

 実例で腑に落ちたので、わたしはうなずいて「わかったよ」の合図をした。


「プロはその作品ごとに適宜変更するだろう。これは素人中心のネット小説でも変わらないと言えばまあ、変わらないんだが、君が言うようにどっちがいいかわからなくて悩むこともあるかもしれないな」

「ネットだと比較的、一人称の方が多いでしょうか」

「感覚的にはそうだな。一人称の方が堅苦しさがないから、素人にも取っつきやすいんだと思うよ。ただ、少し書き慣れている人だと、三人称の方が多い気もする。これはたぶん、一人称の難しさを理解しているからなんだと思うが」

「一人称の難しさ、ですか?」


 わたしのおうむ返しに、先輩は一つ大きく頷いた。


「話は変わるが、実はおじさんから一冊、本を借りたんだよ」

「と言いますと」

「古典部でも少し話に出したが、作家・大沢在昌さんが書いたハウツー本『売れる作家の全技術』を借りたんだ」

「あ、何度か話に出てきてましたね、その本」

「なかなかの力作だぞ。読みやすいし、元はプロ作家養成用の講座だから実践も交えている。アイディアの膨らませ方なんて、まさに目から鱗だ」


 絶賛する先輩に、わたしは少し首をかしげながら質問した。


「わたし、大沢在昌さんの本って読んだことないんですけど、有名な作家さんなんですよね?」

「ハードボイルド作家だからな、なかなか女性は手に取らないだろう。ただ、直木賞を含めた各文学賞を受賞している大作家先生だから、そこいらの『誰だおまえ』的な人の作家本よりかはもうちょい信頼できるはずだよ」


 と権威主義的な先輩に、わたしの頭にはハテナマークが浮かぶ。


「あれ、先輩、前に孔子がうんちゃらって言ってませんでしたっけ」(※5)

「そういえば言ったか。あれは別に、孔子の意見を正しいと思って言ったわけじゃない」


 ああ、そういえば、結局人は人を見てるって言ってましたもんね。


「それに、他人に勧めるときは『直木賞作家』と看板を持ってきた方がインパクトがあるだろう。それくらいの話だ。内容の良さとはまた別の話だな」

「つまり、先輩は内容が良いからここで話題に出したと」

「当たり前だろ」


 まあ、確かに、こんな二人しかいないとこで権威におもねってもしょうがないですもんね。


「話がそれたが、この本の中でもズバリこの話題が出ている。それも全十回の講座の中で二回目。一回目が『作家業とは』みたいな内容だったから、つまりはいの一番に伝えるべき内容だというわけだな」

「ふむふむ。で、その中では一人称について、どう書いてあるんですか?」

「一人称小説にどんな課題があるか、という視点で話は進められているんだが、まず講座の前に、受講生に対して一人称一視点による短編を課題にして出している。それぞれの実力を計るためのファーストステップとして一人称を選んでるわけだ」

「うーん?」

「つまり、一人称は実力を計るのにうってつけな、それだけ難しい手法だということだ」


 なるほど、それでさっきの話につながるわけだ。


「大沢さんはこの課題について、三つの目的を述べている。一つは『視点の乱れ』をなくすこと。これについては後々詳しく話していくが、一人称においても三人称においても重要なポイントだ」

「はい」

「二つ目は、一人称において読者は『一つの視点』からしか情報が得られないこと。その難しさを体験しろってことだな」

「うーん? 詳しく訊いてもいいですか」


 もちろん、と先輩はうなずいた。


「たとえば、今日、司書さんは君に勘違い話をしただろう」

「そうですね」

「司書さんが図書予備室に来ることは、まずない。大家だからって、借家にずかずか入ったりしないってことだけど、だから司書さんはこの部屋に若い男女二人がいる、という情報しか得られない。それも、毎日のことだ。君なんか、勘違いで土曜まで来ていたわけだ」

「その話はやめましょうよ……」


 地味に恥ずかしいのでやめてほしい。いや、ホント、間抜けな話ですよ。


「ああ、すまんすまん。ただ、司書さんの視点からはそういう情報しか得られないわけだ」

「ふむふむ。つまり、一人称の小説は、そういう限られた情報しか描けない難しさがあると」

「そう。よく構成を練らないと重要な場面がすっぽ抜けてしまうし、大事な情報を伝える機会を逸してしまうこともある。見えない裏で起こっていた話なんか伝えようがない。本当に難しいよ、一人称一視点は」


 なるほどね。一視点だと、フォローしきれないところが出てしまうと、そういう話か。


「そして三つ目。一人称小説では、主人公のキャラクター造形が難しい」

「と言いますと?」

「まさか、モノローグで『オレは鈴木太郎、十七歳。ちょっと身長が低いのが悩みどころの高校生さ』と書くわけにはいかないだろう。背丈はどれくらいか、年はいくつか、容姿はどのようなものか、性格はどうなのか……それらは、描写によって行われる。会話であったり、行動であったり、会った相手の反応であったり、そうした部分で表現していかないといけない」

「なるほど。三人称なら、一流の彫刻家が造形したような、みたいな表現もできますからね」

「そうそう。一人称ではそうした、描写の腕を問われるわけだ」


 うへえ。何それ、超難しいじゃないですか、一人称。


「面倒ですね。もう鈴木太郎君にはぶつぶつ独り言でもつぶやいてもらって、自己紹介してもらうってことで、ここは一つ」

「それはちょっと気持ち悪くないか……? 君、女性目線で答えてほしいんだが、『オレはなんの変哲もない帰宅部の高校生さ』とか独り言を言ってる主人公に『ステキな主人公ね!』ってなるか?」

「なりませんよ」

「いや、うん、そうだよな」


 ちょっと安心したようにうなずく先輩。いや、なりませんって。なんで安心してるんですか。


「まあ、わかりやすくはあるんだが、ちょっとないな。少なくとも、良い作品と言うにはためらいを覚える書き出しだよ」

「魅力的なキャラを描くためには、描写の力が試される、って寸法ですね」

「そう。この本の元ネタである講座に来ていた人たちは、公募で作品審査を受けて選抜された、本気でプロになりたい人たちだ。少なくとも、モノローグで語ってしまうような安易な手段は元から選ばないだろう。実際、いくつか課題作品が文中で引用されているが、冒頭部にそんな記述がある風には見えないよ」


 つまり、大沢さんが目的としていることを試験できる程度には実力がある人たちばかり、ってわけか。高いレベルでの話なんだなあ。


「特に冒頭は物語の顔だ。商業作品なら立ち読みで『どんなもんか』と試し読みされるところだし、ネット小説なら続きを読むべきか判断するとびっきり大事なところだよ。安易な描写は避けたいところだな」

「ああ、わかります。だいたいプロローグか一話を見れば、どういう作品か読めますよね」

「凝りすぎてもアレだが、そこで惹きつけないとつらいところだ」


 一つうなずいて、先輩は話を本筋に戻した。


「余談が過ぎたが、一人称は非常に難しい手法だ。だが、それだけに、より良い作品を作るための訓練にもなる」

「えっと? つまり、先輩的には、一人称がお勧めなんですか?」

「おうとも。大沢さんが一つ目の目的に挙げている、『視点の乱れ』をなくすこと。この訓練は絶対に必要だ。これは三人称では学びづらいし、一人称で訓練できてないで三人称を採用した場合、関西弁で言うところの『どえらい』ことになる」

「『視点の乱れ』ですか。次はその話ですか?」

「いや、先に三人称に話を移してから、その話はするよ」


 と、いまさらながら先輩は立ち上がり、ホワイトボードに「一人称」と板書してマルをした。ついで「三人称」と書く。


「ああ、余談だが、一人称一視点とさっきから言っているが、一人称多視点という手法も存在する。特にネットには、独特な手法があるな」

「多視点? 独特な手法? というと……ああ、もしかして『side』ってやつですか」

「そうそう。誰それ視点、というやつだが、あれは邪道だな。一人称で必要とされている三つの目的を、手法で解決してしまっている。すると、描写の力が伸びない」


 さらさらと「一人称」の隣に「side」と書いて、三角印を付ける先輩。

 あれ、デジャブだ。なんだっけ、こういう話を前にもしたような……ああ、「ブギーポップ」の話をしたときだ。(※6)

 確か、推敲の話をしていて、一話の中ではあんまりぽんぽん視点を変えない方がいい、読者が混乱するから、的な話だったはずだ。

 わたしがふと思い出した話をすると、先輩はうなずいた。


「そういえば、話していたな。特に一話の中でいくつも『side』を用いるのは悪手だ。読者が混乱する。恋愛小説を例に話しているときにも言ったが、多視点だと主人公への感情移入が難しくなることがある。一人称の武器は主人公へ感情移入しやすいところなんだ。その武器をみずから捨てるのは、いわば『それをすてるなんてとんでもない』というやつだな」(※7)

「もったいなくないから捨てるんだよ黙ってろ、ってやつですね」

「それはなんか違うから」


 ネタ振りしたくせに、はっきり否定する先輩なのだった。なんでやねん。




2.


 さて、三人称の話である。


「三人称にはここまで話したような、一人称特有の難しさを解消できるメリットがある。しかし、これは諸刃の刃でもある」

「それが、『視点の乱れ』というわけですか」

「そう。三人称で起こりがちなのは、そのシーンが誰の視点で書かれているか不明瞭になることだ。大沢さんはかなりそのことを述べておいでだが、個人的にも深く賛同したい」

「ふむふむ。詳しくお願いできますか?」

「もちろん」


 先輩はうなずき、ホワイトボードへと向かった。そこに「A」と「B」と書く。


「たとえば、AとBという人物の喧嘩のシーンがあったとしよう」

「はい」

「Aという人物は、Bが恋人をないがしろにしたと怒っている。Bの恋人から、電話に出てくれないと相談を受けてな。呼び出して叱りつけるわけだ」

「ほう」

「しかし、Bは恋人から、本当はAのことが好きなんだと言われ、思い悩んでいる最中だ」

「うわあ、どろどろですね」

「思いがけず言い合いになり、AがBを殴り、それにBが反撃して……という展開になる。それがこのシーンだ」


 完全な青春ドラマである。わたし予想では、たぶんBの恋人がこのあと「わたしのために争うのはやめて」と登場するのだろう。なるほど、反吐が出そうなクソ女である。


「さて、ここで問題だが、この二人の心境を地の文ですべて説明したとしよう。読者は誰に感情移入したらいい?」

「ええー? たぶん、このあと出てくる『わたしのために争わないで』なクソ女なんじゃないですか? 逆ハーの少女マンガか何かなんですよね、この話」

「……それはBの恋人のことか? こらこら。仮定の話でそんな風に言わない」

「なんですか、先輩はこんな女が好みなんですか」

「そもそも、このシーンでBの恋人が出てくるなんて言ってないだろ」


 あ、そうでした。ごめんなさい。


「登場人物は二人だ。AかB。しかし、二人の感情が説明されたのなら、その視点はどこにある?」

「視点は……ないんじゃないですかね。いわゆる『神の視点』ってやつではないでしょうか」

「じゃあ、物語はどんなレールに則ってるんだ? 物事を繋いだだけでは物語じゃない。誰かが何かをして、そこに変化が生じる。それが物語の本質だ。主体となる人間、つまり主人公が必要になる」

「うーん……? 話の筋からすると、Aが主役っぽいですけど、違うんですかね?」

「そうだな。王道の物語なら、Aが主人公っぽいよな。なら、Aの視点で描かれるべきだろう」

「逆の視点から物語を描くこともあると思いますけど」

「それならBの視点で描けばいい」


 ふむふむ。整理されてきたな。


「欲張って『Aの視点もBの視点も入れちゃえ』なんてしちゃうと、話の筋立てが成り立たなくなるってことですか」

「そう。神の視点はあらゆる人間のドラマをストーリーに放り込んでしまう。さっきの例で考えてみてもらいたいんだけど、AにはAの、BにはBのドラマがある。それぞれ独立して書くのは構わない。それは三人称の優れた点だ。だが、一つのシーンで二人の心情を描いてしまえば、どこが焦点か見えてこない」

「二人の葛藤とか、それぞれの立場の違いを演出したい、そういう考えからこの方法を選ぶこともありそうですけど」

「鋭いな。より深く説明したいから神の視点を利用する、というのはよくあることだろうと思うよ。でも、シーンの焦点がぶれているのは間違いない」


 先輩は「A」をマルで囲った。


「たとえばAを主人公にしようか。喧嘩の過程でBが叫ぶわけだ――『お前は何もわかっちゃいない!』」

「なるほど。『るろうに剣心』ですか」(※8)

「茶化すな。っていうか、知ってるんだな、剣心」

「はあ、兄が好きでしたから。読みましたよ」


 ちなみに、上の兄である。どうでもいい話だが。


「……斬馬刀の人はおいておこう。とにかく、Bが叫んだわけだ」

「はい」

「これを聞いて、Aは疑問に思う。そこに謎が生まれ、次への展開が生まれてくる」

「ふむふむ。そういう筋立てになると」

「そうだ。逆にBが主人公なら、本当は事情を全部ぶちまけて思いの丈を言いたいが、それではあまりに惨めだし、彼女への義理立てもできない。そこに葛藤がある。その末に漏れた言葉が『お前は何もわかっちゃいない!』というわけだ。次へのタメになるな」

「うわー、こんな女に義理立てなんてしなくていいと思うんですけど」

「……君はずいぶん、Bの彼女を嫌ってるな」


 当たり前でしょ。

 こういう表現って本当はよろしくないんだろうけど、でもね、やっぱり女の側からしても「女の腐ったような」って表現が使いたくなる女ってのはいてね、しかも同性だからかなおさらイラっとくるのだ。

 どっちつかずのくせに、言わんでもいいこと言って場を混乱させて、そのくせあとから悲劇の女ヅラしていけしゃあしゃあと出てくるんだろう。空気は読めねえし、どっちつかずで決断力もねえし、勘違い女だし、クソ女確定である。

 これが正ヒロインならそんなマンガはゴミ箱にポイだ。売る価値すらない。っていうか、売って他の誰かが買うようなことがあっちゃならない。


「とまあ、そんな感じです」

「そ、そうか」


 う、うわ。先輩どん引きしてる。


「……ごめんなさい。ちょっと本音が漏れました」

「これでちょっとか……」

「いや、間違えました、だいぶダダ漏れでした」


 だから、そんな恐れおののくような顔しないでください。うええ、すいません、言い過ぎました、認めますよ。


「……ま、まあ、そうやって、ドラマが生まれてくるんだけど、そのためには焦点が大事になってくるわけだ、うん」


 先輩が動揺してはる……どないしょ……。


「…………」

「…………」


 えっと……。


「あ、えっと、一人称なら、こういう混乱が起こらないように視点を固めて書く訓練ができるって、そういう話なんですよね」


 ちょいちょいどもりつつ、なぜか大声で口早に言うわたし。うひー。絶対いま、顔真っ赤だよ、わたし。なんなんだよう、今日は恥ずかしいこともりだくさんじゃないか。


「お、おう。そうだな。よし、君、お茶を飲もう」


 そう言って、先輩自身もお茶に口を付ける。

 ズズズ、と響くひととき。

 ぬるまったお茶が、動揺しきった心臓の鼓動を Presto(きわめて速く)から Allegro(快活に速く)まで落ち着けてくれる。いやいや、まだ速いよ。Moderato(中ぐらいの速さで)まで落ち着こうか。ちょっと、ここでの指示は ritardando(だんだん遅く)じゃなくて ritenuto(遅く)だからね。間違っちゃダメだよ。表記がrit.がriten.かで紛らわしいけど、勘違いしないでね。


「……落ち着いたかい?」


 おそるおそる問う先輩に、わたしはまだちょっと落ち着かないけど、とりあえず頷いた。


「君を聞かせ役にしすぎたのが問題だったかな。大丈夫か? 何か言いたいことを我慢していたりしないか?」

「いや、そういうわけでもないんですけど」

「最近は読んでるより話してる時間の方が長いが、もう少し読書の時間を増やそうか? 静かな時間は心を落ち着けてくれるだろうし」

「人を病人みたいに言わないでください。大丈夫ですから」


 ようやく平静に戻るわたし。失礼な。ちょっと本音が漏れただけで、大げさな話である。

 でも、なんか、本当に心配そうな先輩を見てると、ちょっと顔が熱くなってくる。いやもう勘弁してくださいよ、ホントに。


「とりあえず、話を戻そうか」

「はい……大丈夫ですからね、わたし」

「おう。心配してない。心配してないから、話に戻れるな?」

「戻れますって」


 先輩は心配のしすぎである。わたしはこくこくと首を縦に振った。

 ようやく安心したらしい先輩は、話を元に戻した。


「神の視点というのは、すべてを説明してしまう。そうすると、筋立てが成り立たない。どういう物語としてどこに向かっていくのかが見えない。これは大きなマイナス点だ。ここまでそのことを例示して説明してきたが、そのへんは大丈夫か?」

「はい」

「うん、いい返事だ。神の視点というのは実際のところ一つの手法に過ぎないんだが、この手法で物語を描く場合、かなり構成力を問われる。一視点で得られる謎がないのだから、展開で謎を作り、演出しなければならない」

「ストーリーの謎で読ませろ、ということですか」

「しかも、逐一登場キャラの背景や心情に触れながらだから、相当計算が必要になるだろう」


 しかも、と先輩は一つ指を立てる。


「神の視点は現状、日本においてはあまり採られていない手法だから、読者に不慣れな文体であることを気にさせないくらい、とびきり面白い小説である必要がある」

「禁じ手とまでは言わないまでも、とてもじゃないが勧められない手法であると」

「おう」


 先輩は板書された「三人称」の隣に「神の視点」と書き、大きく三角で上書きした。


「大沢さんははっきりと『神の視点は日本では認められていない』と言っておいでで、まあ、正確には『ほとんど認められていない』と言っておいでなんだが、はっきりばっさり切ってるわけだ」

「はい」

「個人的には、しょせん手法は使い方次第だと思うから、そこまではっきり否定するのはためらいがある。ただ、『賞の候補作ならすべて落とす』とまでプロの作家に言わせているのだから、それだけ難しい手法であるという認識は持つべきだろう」

「それって実質、無理ってことなんじゃ」


 キャリア数十年の直木賞作家をうならせるような作品じゃないとダメだって、ネット小説にしてはハードル高すぎでしょうに。


「少なくとも、考えなしに手を出していいものではないな」

「感想でぶっ叩かれても文句言うんじゃねえぞ、やり方悪いんだからな、ってわけですね」

「口は悪いが、そのまとめで間違ってないな」




3.


 改めて、先輩は「三人称」にマルを付けた。


「さて、三人称の話に立ち返ろうか」

「いままでは三人称の話じゃなかったんですか?」

「三人称を題材にして、『神の視点』について話していたわけだ」


 なるほど。焦点はそっちだったと。


「三人称は言ってきたように、多くのことがフォローできる。大きな出来事を綿密に描くことができるし、描写の幅も一人称と比べてグンと広がる」

「一人称の地の文で『彼女はアフロディーテもかくやと言わんばかりの美貌の持ち主だ』なんて書いたら笑っちゃいますけど、三人称ならアリですもんね」

「三人称でもクサいけどな、その例。あと、『かくや』なんて誰かが言ったであろうコメントを放り込むのも禁じ手だ。それは神の視点に近い」

「じゃあ、『その容貌は時に美の女神アフロディーテにも例えられるほどである』とかなんとかにしておきましょう」

「まあ、そんな感じで」


 どうやら及第点が貰えたらしい。


「ただ、ここで注意したいのは、美貌を事細かに書いたところでたいした意味はないという点だ」

「彫りが深いとか、吊り目だとか、髪を盛ってメガネを作ってるだとか、そういうのは要らないと」(※9)

「途中からものすごく現代的になってるが……髪の毛でメガネを作ってるくらい特色があれば記述した方がいいと思うぞ」


 冗談なのに。先輩ったら、まじめなんだから。


「いくら綺麗でも、全然惹かれない人というのはいるだろう。そんな美人じゃあダメなんだ。大事なのは、登場人物がその美貌に惹かれていること。つまり、読者にきちんとドギマギを追体験させる必要がある」

「文章でいくら美人って書かれても、実感湧かないですしね。でも、美人に目を惹かれる気持ちは共感できると」

「男なら当然だろうな」


 うわあ、そんな正直に答えてくれなくても。

 まあ、うん、あるんだよね。実際。元いた部活でもさ、ちらちら男子連中に見られてる子っていたんだよ。一年生でね。わたしから見てもホントかわいらしい子だった。

 指揮者の位置からはよく見えたよ、男子諸君。人は見ている。気をつけたまえ。って言うか、人の話も聞かずに盗み見てるんじゃない。


「……例えが悪かったかな。じゃあ、ホラー物で、なんかすごいクリーチャーの描写がされてるんだけど、登場人物は悲鳴一つ上げない的な感じだ」

「あ、大丈夫です。ピンときてますんで」

「なんだ、例えが悪かったんじゃないのか」

「まあ、昔のことを少々思い出してまして」


 たははと笑うわたしに、先輩はうかがうような目を向けた。

 いやいや、別に何かため込んでるわけじゃなくてね。別にいまのも、わたしの話を聞いてよってサインじゃないですよ。


「まあ、とにかく、物語は登場人物の感情を描かなければならない。出来事を羅列しただけで物語になるわけじゃない。感情は心情と言い換えてもいいかな。決断だったり、悩みだったり、怒りだったり、そういうものを描かなきゃいけないのは一人称でも三人称でも変わらない」

「ことさら三人称でその話をするってことは、特に三人称では気をつけないといけないと」

「そうだな。一人称では体験を描くことになる。さっきのAとBの話で言えば、Aは最初説教していたわけだが、真っ向から反発するBを見て疑問に思った。そういうシーンだ。これを三人称で描くと、ただ喧嘩をした一面だけが強調されてしまう可能性がある。体験ではなく、出来事を描いてしまう。きちんとAの視点で固めて、Aの体験を描かないといけない」


 ふむふむ。

 確かに一人称なら「何もわかってないって、どういうことだよ……?」とでも地の文で書いておけば、状況に戸惑っているAは簡単に描ける。流れの中で描写できるだろう。

 しかし、三人称なら「AはBの言動に疑問を覚えた」と、ちゃんと明確に書いておかないと、Aの体験が上滑りしてしまって、単なるAとBが喧嘩したシーンってことになってしまう。

 三人称の方が、感情を説明する際、まだるっこしい感じがするな。説明できる手法なんだけど、ひっくり返して言えば説明しなければいけない手法ってわけか。

 

「三人称多視点ではさらに、様々な人物の感情を描きながら一つの物語に仕上げていくわけだが……さて、今日はここまでにするとしようか」

「あれ、終わりですか? わたし、まだまだいけますよ?」

「元気だな。……今日はちょっと疲れたよ」


 肩をすくめる先輩。おお、お疲れでしたか。ご苦労様です。


「で、今日はここまでにするとして、明日について、ちょっと先にテーマを言っておこうか。『視点変更』を扱う」

「あ、もう決めてあるんですね」

「おうとも。三人称多視点でも、一人称での多視点でも、この視点変更という手法を行うわけだ。今日のテーマとしても、注目して見ておきたいところだな。ただ、これからこなすにはちょっと重いから、明日回しにしようかと思ってね」

「なるほどー」


 おおー、テーマが先にわかってるってのは誤字脱字の日以来かな?

 どんな話をしてくれるのか、実は結構楽しみにしてるんだ、わたし。毎回、毎日ね。

 テーマがその日に発表されるのも悪くないけど、前もって教えてもらえるのも楽しいよね。ふとしたときに、どんな話をしてくれるのか考えたりするんだよね。

 そんな風にわくわくしているわたしに、先輩は告げた。


「で、だ」

「はい」

「明日は君が論をぶってみようか」

「はい……はい?」


 え、なんですって?(※10)


「君にも思うところがあることは十分思い知ったから、たまには君もテーマトークしてみようじゃないか」

「ええ!? いやいやいや、先輩を押しのけて物申すなんてそんな恐れ多い」

「ディベートに先輩後輩なんて関係ないだろ」


 え、あれ? ディベートだったんですか、これ。わたし的には、講義か何かを聞いてるような気分だったんですけど。


「司書さんじゃないが、君も熱心に来てるわけだし、たまには任せてみてもいいかと思ったんだが」

「ええー、でも、部外者ですし」

「そのへんは昨日吹っ切れた」


 吹っ切れた? 昨日? ……ああ、掃除の件? あれで身内判定されたってこと?

 う、うーん? これは喜んでいいのかな? なんか、微妙に、司書さんにからまれたあとに感じていたあのむずがゆさがあるな。ううむ。


「君もそれなりにネット小説を読んでいるし、思うところはあるだろう。すごく狭い範囲でのテーマだから、そんなに難しいこともないはずだ。何か気づいたこと、思うところなんかを話して、より良い作品を生み出すためにどうすべきか探っていけばいい」

「いや、うーん。やるのは……構いませんが……にしても唐突ですね」

「いま思いついたからな」

「……面倒くさいから押しつけたわけじゃないですよね?」

「面倒くさかったら、毎日毎日話してるわけないだろ」


 それもそうか。




 というわけで、明日はわたしがテーマトークをすることになった。

 ちょ、ちょっと宿題の期限が近すぎませんかね。先輩ったら、マジで鬼である。


 わたしによるネタ・元ネタ解説。


※1

 わたしはドコモユーザーである。


※2

 ぼちぼち死語になってしばらく経ってる、某巨大掲示板ネタである。

 ああ、先輩のせいでわたし、汚れたネタをいろいろ知っちゃったよ……と、責任を先輩に押しつけておくわたしなのであった。


※3

 一応付け加えておくが、田中芳樹・著の「銀河英雄伝説」の略である。

 三人称多視点の物語で、帝国対同盟の戦争を描いた大作である。個人的には、ちょっとあまりに女性の活躍がなくって、その点で不満がある作品ではある。

 先輩にそう言うと「まあ、田中芳樹だから」とよくわからない慰めをくれた。意味不明だった。


※4

 これまた付け加えておくが、森岡浩之・著の「星界の紋章」および「星界の戦旗」シリーズのことである。

 戦旗では特に、本格的に始まった戦争を描いていて様々な人へと視点が移るが、何しろ抜群の会話センスをお持ちの作者で、ユーモアたっぷりに各キャラが楽しく会話しているもんだから、どのシーンも絶品である。

 ちなみにわたしはスポール提督が大好きだ。傲慢だけど、気高い。超格好良い。

 男性キャラならソバージュさんかな。


※5

 孔子曰く「人を以て言を廃せず」というやつである。

 詳しくは文章表現の回を参照してもらいたい。


※6

 詳しくは推敲の回を参照してもらいたい。


※7

 ドラクエシリーズに出てくる有名な台詞(?)である。

 ストーリーの進行上必要不可欠なものを捨てようとするとそう返ってくる。


※8

 漫画「るろうに剣心」で、安慈に佐之助が叩きつけた台詞である。実際は、もうちょいスラングだけど。

 熱い叫びだったためか、妙に印象に残っている。

 なんか、このシーンは覚えてる、的なものって結構ありますよね。ストーリー忘れちゃってても、そこだけは覚えてる的な。


※9

 世の中にはそんな髪型をするアバンギャルドなギャルもいるのだ。たぶん。


※10

 おなじみ「僕は友達が少ない」のネタである。

 使ってみると、わりと楽しい。口に出すとうざいだろうから、心の中でこっそりと。


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