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 付録 ブログ記事・漢字変換の参考文献

【作者コメント】

 前話で紹介された、おじさんが書いたブログ記事その一です。

 記事内でも触れていますが、あくまで素人が書いた記事だということを念頭に置いて読むことをお勧めします。元の訓令を参照することもお勧めしておきます。


◎ 前書き


 記事「漢字変換は適当に」でいくつかの漢字を「本来は漢字を用いない」と指摘しました。

 では、その本来とやらは何に基づいているのか、という点を明示しなければ、ちょっと卑怯ですよね。

 今回その論拠として示すものが、内閣訓令第一号 公用文における漢字使用等について です。


 文化庁のHPでは、この内閣告示・内閣訓令をこのように説明しています。



○ 引用「文化庁HP http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kijun/naikaku/index.html」

 ここに収録した「常用漢字表」「現代仮名遣い」「送り仮名の付け方」「外来語の表記」「ローマ字のつづり方」は,それぞれ内閣告示,内閣訓令となっており,一般の社会生活における国語表記の目安・よりどころとされているものです



 ここで注意したいのは、これから示す内閣訓令が平成二十二年に改定されたものである点です。

 ネットでは、旧版(昭和五十六年版)に拠って話を進めている古い情報も残っていますので、その点は注意しておきたいところですね。

 とはいえ、どうも、大した変化はなさそうですけど……。


 では、気になる部分を、順を追って確認していきます。

 大まかにしか見ていかないので、関心のある方は訓令を参照ください。(アドレスは http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kijun/sanko/koyobun/pdf/kunrei.pdf)

 また、言うまでもないことでしょうけど、あくまで(特に国語に詳しいわけでもない)ド素人が確認して書いた記事ですので話半分に御確認ください。




◎ 人称代名詞は原則として、漢字で書く


 初っ端から「マジでか!?」と私をビビらせる辺り、さすがは菅首相。やりますな。(違います)

 ここで挙げられているのは、


  俺

  彼

  誰

  何

  僕

  私

  我々


 のみですが、たとえば彼女、君、お前なども漢字で書くだろうことが類推されます。

 俺が原則漢字とは驚かされますが、原則論ではそうらしいです。

 記事「漢字変換は適当に」で俺を漢字変換の必要度が低いものとして挙げましたが、すまない、ありゃあ単なる不見識だ。


(個人的には、さすがに人称くらいは個人の裁量で構わないと思いますが……まあ、官公庁では統一すべきものでしょうしね)




◎ 副詞をチェックしよう


 副詞についても原則漢字のものを挙げていますが、その中で興味深いものを挙げていきます。


  余り

  殊に

  直ちに

  甚だ

  専ら

  僅か

  割に


 わりに、なんてフランクな使用がされている単語も漢字なんだー、と感心する一方で、ことに(殊に)、ただちに(直ちに)、はなはだ(甚だ)、もっぱら(専ら)、わずか(僅か)となかなか難読の漢字も、原則漢字とされていて驚かされます。

 対象がお堅い文章であるとはわかっていますが、これが民間の基準になっていると考えますと、意外と要求レベルが高いんですね。

 副詞については、逆に原則として仮名で書くように指示されているものもあるので、そちらは全て載せましょう。


  かなり

  ふと

  やはり

  よほど


 可也、と書く方はそうそういないのですが、矢張り、余程、辺りはたまに見かけますし、これは要チェックでしょうか。




◎ 接頭語のルールはすっきり


 御(お・ご)の漢字変換については、簡潔です。

 くっつける側が漢字であれば漢字、仮名であれば仮名。

 御案内・ごあんない、というわけですね。ご案内は誤りです。


 ただ、個人的には御案内だと重々しく感じるので、誤りでもご案内という表記の方がしっくりきますね。

 御案内って、いったいどこに案内されるんでしょ。おーこわ。




◎ 接尾語は漢字に変換しないものを指示するだけ


 明瞭なルールがあるかは判断しかねますが、以下に挙げられた分を提示しておきます。


  げ(惜しげもなく)

  ども(私ども)

  ぶる(偉ぶる)

  み(弱み)

  め(少なめ)


 げ(気)、め(目)は変換している方もおられるかもしれませんね。

 さり気なく、は誤りであると認識しておきましょう。




◎ 接続詞も要注意


 接続詞も、漢字変換にするものとそうでないものを提示してあります。

 これも挙げられてあった分を全て書いておきます。


  おって

  かつ

  したがって

  ただし

  ついては

  ところが

  ところで

  また

  ゆえに


  及び

  並びに

  又は

  若しくは


 したがって、は意外ですね。ところで、は「誤字に気をつけよう」で取り上げましたが、ここでも指摘がありますね。

 しかし、どちらかといえば、漢字変換が指示されている方が目を惹くところではないでしょうか。

 もしくは(若しくは)を漢字で書くことに大きく違和感を覚えますが、官公庁ではこれが常識なのでしょう。どビックリです。

 あと、また、と又は、の使い分けが面倒です。官公庁の中の人も面倒でしょうに。なぜ複雑にするんだか。




◎ 助動詞・助詞はさっと確認


 助動詞・助詞は例示されている分を確認する程度で構わないでしょう。


  ない(現地には,行かない。)

  ようだ(それ以外に方法がないようだ。)

  ぐらい(二十歳ぐらいの人)

  だけ(調査しただけである。)

  ほど(三日ほど経過した。)


 あえて言うなら、ようだ(様だ)、ほど(程)の変換を気にする程度の話でしょう。

 ようだ、はように、の形式で多く用いられますが、様に と変換していることが多い気がしますし、要チェックですかね。




◎ その他の、原則として仮名とするものについて


 ここからは散漫に提示されていく原則仮名の言葉たちですが、ここから類推されている法則は少なからずあります。

 重要ですので、この部分は特に確認していただけますと嬉しいところ。私も記事を書いた甲斐がありますしね。

 では、順序は前後しますが、法則にしたがって見ていきましょう。


  ある

  いる

  ない

  なる(合計すると1万円になる。)

  できる(だれでも利用ができる。)


 まず、存在動詞は仮名で表記するものと思われます。

 有る、居る、無いと表記する方もいますので、これは要注意でしょうか。

 これに近い存在としてなる、できるも同時に挙げましたが、これは分類上、何という動詞になるのやら。ただ、これらも成る、出来ると安易に変換してはいけないようですね。

 なるは自動詞としての使用が制限されていることが読み解けます。


 できるは判断が難しいところです。

 文化庁の他に信頼性の高い資料として共同通信社発行の『記者ハンドブック』が挙げられることが多いですが、その中では、出来と書くものは漢字(出来上がり、出来高)、動詞や副詞のものは仮名(運転できる、トマトができた)としてあるそうです。

 そうした使い分けをすると、より正しい表記になるのでしょう。


  こと(許可しないことがある。)

  とおり(次のとおりである。)

  とき(事故のときは連絡する。)

  ところ(現在のところ差し支えない。)

  ほか(そのほか…,特別の場合を除くほか…)

  もの(正しいものと認める。)

  わけ(賛成するわけにはいかない。)

  

 以上のような例が挙げられていますが、つまり形式名詞は原則として仮名で書く、ということだと思われます。

 このことについては「漢字変換は適当に」でも触れていますが、漢字濫用の原因の一つとなっている印象があります。

 特に気をつけて、扱いたいところですね。


  とも(説明するとともに意見を聞く。)

  ゆえ(一部の反対のゆえにはかどらない。)


 落穂拾い。この二つも法則があるのか、いまひとつ判断に苦しむところです。

 察するに、文中で使用される場合は仮名として、独立して使われる場合(共に作業を行う)とは別個のものとしているものと思われます。


  ・・・てあげる(図書を貸してあげる。)

  ・・・ていく(負担が増えていく。)

  ・・・ていただく(報告していただく。)

  ・・・ておく(通知しておく。)

  ・・・てください(問題点を話してください。)

  ・・・てくる(寒くなってくる。)

  ・・・てしまう(書いてしまう。)

  ・・・てみる(見てみる。)

  ・・・てよい(連絡してよい。)


 これも明らかな法則ですが、補助動詞は原則として仮名とする、ということでしょう。

 補助動詞とは、動詞の連用形+接続助詞(~て)にくっつく語で、どういったものかは上記の例を見ればわかるとは思います。

 個人的には いただく、ください、よい 辺りに危うい感じを覚えます。最近まで私も漢字変換してましたし。


  ・・・かもしれない(間違いかもしれない。)

  ・・・にすぎない(調査だけにすぎない。)

  ・・・について(これについて考慮する。)


 こちらも落穂拾い。法則はちょっと判断が難しい。

 知る、過ぎる、就く、という意味がなくなった定型的な使用法であるし、特記しているのでしょうか。

 かも知れない、に過ぎない など、漢字で書く場合も見受けられますし(というか私も書いていたし)、これも要注意でしょう。




◎ 終わりに


 訓令では「この場合はこうだ」とだけあって、一方で「こうした品詞ではこうする」とグループでの指示がありません。

 逐語的に取り扱っても、そこから漏れた単語は、類推する以上のことができません。

 ですので、正直、不親切な訓令だなあ、と思ったりもしますが、訓令というのはこういうものなのでしょうか?


 とはいえ、執筆の参考・目安になる指示が多く含まれていましたし、有用なものであるのも確かです。

 崩して書くにせよ、こうした基準があるのだと認識した上で書かれるようになれば、表現のあり方も豊かになるんじゃないかなあ、と思ったりしつつ、この記事を締めさせていただきます。


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