Let's変装
桜町に来て初めて迎える朝。そして今日は入学式だ。
この桜町は海に面している。そして、運よくわたしの部屋の窓からは朝日が海から昇るのが綺麗にみえる。
「んーーーっ!気持ちいいー!」
桜島高校の制服はとても可愛い。リボンやネクタイは学年別に色が決まっていて、わたしたち1年は青、2年は緑、3年は金だそうだ。学年が上がると色も変わるから、分かりやすい。でも金ってすごいな…と思った。
鏡を見て軽く髪をとかしたあと、1階の大家さんの家に向かう。
ピンポーン―
「はーい!」
「大家さん、おはようございます。沙羅です。」
「沙羅ちゃんね!おはよう!あがってー」
「はい、お邪魔します。」
大家さんの家はとても綺麗に掃除されていて、とても昨日家具を壊したとは思えない。
「じゃーとりあえず朝ごはんたべよっか!」
「え!?いいんですか!?」
「当たり前じゃない!実はすでに作ってあるのよね~」
なんという手際のよさ…!
「沙羅ちゃん朝パンでも平気ー?」
大家さんがキッチンから声を描けてくれる。
「あ、はい!大丈夫です!」
むしろ朝はパンがいい人だ。
「よかった!じゃあそこに座って待っててね。」
「いえ、手伝いますよ。」
「ほんと?ありがとう!じゃあこのお皿並べてサラダよそってくれる?」
「分かりました。」
こうやって誰かとキッチンに並んで立つのは初めてで、なんだか少しくすぐったい気持ちになった。
「沙羅ちゃん上手ねー!」
「ありがとうございます。」
溜まり場でたまにみんなのご飯を作ったりしてたから簡単な料理ならできる。
「さ、食べましょ。」
「はい。」
わたしと大家さんはテーブルに向かい合って座った。
「「いただきます」」
一口食べると…
「!!美味しい!」
「ほんとー?よかった♪」
「ほんとに美味しいです!大家さんすごいですね!」
「そんなことないわよー」
そのあと大家さんと今度料理を教えてもらう約束をして、朝食の時間は終わった。
「よし!今度は変装ね!」
「え?変装…ですか?」
「そうよ。沙羅ちゃん可愛いから、今のまま高校に行ったら大変なことになるからね。」
「いや、いいですよ!大変なことになんてなりませんから!」
「いーや、なるわよ。いいからおとなしく座ってなさい!これは大家命令よ!」
命令と言われるとなんとなく反抗できない沙羅は、結局おとなしくイスに座った。
「うん、いい子ね!じゃいくわよ!」
――それから30分後――
「さ、できたわよ!どう?これなら男共に絡まれないでしょ?」
「はぁ…」
綺麗な黒髪はおさげにされており、黒の分厚い伊達眼鏡を掛け、スカートを膝の下まで下げた沙羅は、いわゆる地味子になっていた。
「これなら、おさげと眼鏡をとらない限り超美少女とはバレないわ!」
「いや、もともと美少女とはかけ離れているんですが…」
「全く、無自覚にもほどがあるわね…ま、いいわ!とにかく、学校ではおさげと眼鏡をとらないこと!いいわね?」
「は、はい。」
大家さんのあまりの気迫に逆らえない沙羅だった。
「では、そろそろ学校に行ってきます!」
「はい、いってらっしゃい!」
ここまで長い時間かかったような感じがするけれど、実際は起きてからまだ一時間しかたっていないのだった。
「新しい学校に向けて出発!」
――その新しい学校での入学式で起こるハプニングなど知るよしもなかった。