ちょっと小話
それは、この桜町に来た日のことだった。
「えーっと、とりあえず家に行かなきゃな。」
引っ越しするのにお金をどうしようかと思ったけれど、お父さんたちが密かにわたしのために残しておいてくれたことが分かって、なんとかなった。それもすごい額で、当分働かなくてもやっていける。
それはいいんだけど…家まで遠いっ!
あぁ…疲れた…その辺に座ろ。
わたしが公園のベンチに座ったとき、3人のチャラい男の人に絡まれた。
「ひゅ~♪」
「上玉みーっけ!」
「キミすっごい可愛いね~」
「はい?ほっといてもらえますか。」
「そんなこと言わないでさ~」
「俺たちと遊ぼうよ~」
「奢るからさ~」
なにこの人たち。きも。つか語尾伸ばしすぎだろ。
「ほっとけっつってんだろーが。」
「強気だねぇ~」
「かーわいー♪」
「遊ぼうよ~」
は?わたしが可愛い?この人たち頭大丈夫か。
「わたしが可愛いとか、頭おかしいんじゃないの?さっさと病院行けよ。あぁ?」
わたしがちょっと凄むと…
「ひっ!」
「こ、こえぇ…」
「すいませんした!」
と言って逃げていった3人組。
あーうざかった。
「にしても、わたしが可愛いとか、ちょっと凄んだだけで逃げるとか、弱っ!」
周りのひとは…
「「(いやいや、あなた超美少女ですし、凄むと怖いですよ!!?)」」
と思っているのだった。
☆☆☆
――ここは沙羅の住むアパート
「とりあえず大家さんに挨拶しとくか。」
1階に降りて大家さんの家のインターホンを鳴らすと…
ドタッガタッバタッドッシーンッ
ガチャッ―
「なにこの子!超可愛い!抱き締めていい?いいよね!?キャー」
ギューーー
っと熱い抱擁をあまりの突然なことに避けられなかった沙羅。
「って、ちっがーう!あの、大丈夫ですかっ!?」
「へ?何がー?」
「いや、何がって…出てくるまでにすんごい音してたんだすけど!?」
「あーあれね。大丈夫大丈夫~ちょーっと家具壊しちゃっただけだから★」
そ、それって大丈夫なのか…!?
ま、まあいいや。とりあえず挨拶挨拶…
「今日からここにお世話になることになりました、幸村沙羅です。よろしくお願いします!」
「沙羅ちゃんね~はいはい、ご丁寧にどうも。これ、鍵ね。家具とかはもともと置いてあるから、好きに使ってー」
「分かりました。ありがとうございます。」
「ところで沙羅ちゃん、どこの高校いくの?」
「高校ですか?桜島高校ですけど。」
「桜島高校っ!?あそこにいくの!?」
そう、わたしが通うことにしたのは桜島高校という高校。頭はそこそこ良くて、不良が多いそうだ。友香たちと似た高校に入りたいな…と思って選んだ。
「あそこにいくなら…そうね…変装させなくちゃ…」
ん?なんか大家さんがぶつぶつ言ってるけど…まあ、気にしなくていっか。
「じゃあ、大家さん、わたしはこれで失礼しますね。」
「あ、ちょっと待って、沙羅ちゃん。」
「?なんですか?」
「沙羅ちゃんって確か一緒に住む人いなかったわよね?」
「はい、家族いないので。」
「なら、明日から毎朝うちにいらっしゃい!」
「へ?」
「ね!?私寂しいし…沙羅ちゃんみたいな可愛い子とご飯食べたいもの!……それに変装させないといけないし…」
「え?最後の方よく聞こえなかったのですが…」
「えっ!?う、ううん、なんでもないの。とにかく、毎朝うちに来てね!これは大家命令よ!」
「は、はぁ…じゃあ、お邪魔します。」
「うん!いい返事ね!じゃあまた明日!」
「はい、失礼します。」
いい大家さんだったなぁ…ちょっと変わってたけど。
――明日の朝待ち受けている大家さんによる変装のことをまだ知らない沙羅だった。