悪夢
『子どもたちだけは見逃してくれ!この子たちは姉さんと面識すらない!まったく無関係だ!頼む!』
『それはあなた方しだいですよ、幸村さん。あなたのお姉さんに借金は弟に請求してくれって言われてるんでねぇ。まあ家族全員なんていうのはさすがに可哀想ですから?一人くらいなら見逃してあげなくもないですよ。』
『父さん!俺と未桜と結菜はいいから、沙羅を助けてくれ!』
『そうだよ!お父さん!沙羅はまだ3歳になったばかりなんだから!』
『せっかくの誕生日なのに…こんなのないよ!私たちが代わりになればいいんでしょ?可愛い妹のためだもの、ちっとも苦じゃないわ!』
『ごめん、ごめんね…沙羅…お母さんたちを許してね…どうか、生きて。私たちの分まで強く生きて…!』
『おかあ…さん?どうしてないてるの?おなかいたいいたいなの?このおじさんたちはだあれ?はやくけーきたべようよ!』
『沙羅、いいか、よく聞け。今日でお父さんお母さんとお兄ちゃんお姉ちゃんたちとはお別れだ。でもな、寂しくないぞ。俺たちはずっとお前を見守ってるからな。だから、生きろ。』
『沙羅、大丈夫だからね。沙羅はいい子だからみんなが大切にしてくれるよ。お姉ちゃんね、あなたの笑顔が大好きよ。だから、いつでも笑っていて。お願い。』
『沙羅!あんたは私たちの妹なんだから強くなれ!どんなときでも自分の道を真っ直ぐ進め。いいな?大好きだよ。』
『沙羅…父さん、ずっと一緒にいてやれなくてごめんな。こんな父さんのこと、許さなくてもいい。だけどな、俺たちのこの決断を無駄にだけはしないでくれ。』
『みんなどうしたの?どうしてないてるの?やだやだ!みんなわらってなきゃやだ!』
『そろそろいいですかね?こっちもそんなに気が長くはないんですよ。』
『あぁ…分かった。必ず、沙羅は助けてくれ。』
『もちろんですよ。借金が返せないときは命をいただく。そういう話なのでね。申し訳ないですがあなた方にはここで死んでいただきます。さようなら、可哀想な幸村さん。』
『沙羅、』
『『『『『生きろ』』』』』
バンッ――
最後に感じたのは家族の暖かい温もりだった―
☆☆☆
チュンチュン―
「おとう…さん…」
ぱちっ
あれ?夢?でもあまりにも生々しかった…
家族が目の前で殺される夢…
あれは本当に夢なの?その割には家族の暖かい温もりは残っているし、言葉も耳に焼き付いてる…
伯母さんに確かめなきゃ!もしこの夢が本当なら、お父さんたちが死んだのは…伯母さんのせい…
わたしは、中学の制服に着替えると急いで下へ降りた。
「あら、早いわね。」
「伯母さん、お話があります。」
「なにかしら?」
「わたしの家族は…本当に事故で死んだのですか?」
ピクッ
「な、なにを今更!そうよ!あんたなんかの誕生日プレゼントとケーキを買いに行こうとなんかしたから事故で死んだのよ!」
嘘だな、これ。
「伯母さん、いい加減真実を話してください。お父さんたちが死んだのは伯母さんのせいですよね?」
「違うわよ!」
「ご自分の借金をお父さんに押し付けて、その借金のせいでお父さんたちは死にましたよね?」
「だから違「違わない!!」
「なっ…」
「あんたのせいで!あんたのせいでお父さんたちは死んだんだ!借金なんて払えなくて、命をとられた!お父さんたちは!わたしを守るために死を選んだんだ!あんたが借金なんてするから!」
「うるさいわよ!そうよ、私の借金をあんたのお父さんに押し付けたわよ。だから死んだのよ。だから?家族の借金なんだから弟に任せたっていいじゃない!」
「…ざけんな…」
「なに?聞こえないわ。はっきり喋ってちょうだい。」
「ふざけんなっつってんだよ!!てめぇのせいでわたしの家族は死んだんだ!何にも悪いことしてないのに!なのにあんたは反省どころか悪いとすら思ってない?いい加減にしろよ!!」
「なっなによ!生意気ね!」
「うっせーよ。もう二度とわたしの前にあはわれるな。今度あったら潰す。」
「なんなのよ!今まで育ててもらっといて!」
「育ててもらっといて?ふざけんなよ。それで恩でもうったつもりか?馬鹿いってんじゃねぇよ。まあ、生きてこれたのはあんたのおかげでもあるからお礼はいっとくよ。どうもありがとうございました。今日限りでこの家出てくんで。」
「あっそ!清々するわ!この疫病神!」
「なんとでもいってろよ。そんなにガタガタ震えて言われても全く怖くねぇんだよ、伯母さん。じゃあな。」
こうしてわたしは伯母さんの家を出たのだった―
☆☆☆
そして今は学校への通学路。
まさか…家族があんなふうに死んでたなんて…
あの伯母さん、ぜってー許さねぇ。
お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、わたし生きるよ。どんなときでも笑顔でいてみせる。だから、見守っててね。
――その背後では…
「お?あれは…幸村さんとこの沙羅?とかいう娘じゃねぇか。へぇ…随分大きくなったもんだな。そうだ。殺さない約束はしたがちょっかいを出さない約束はしてねぇよなぁ…くっくっく…いいモノみーつけた♪」
闇が迫っていることに、沙羅はまだ気付いていない――