諦めと友達
あのあと、担任の先生が来てHRをやり、今日は解散になった。
「沙羅ー家どこ?」
「わたしは桜庭っていうアパートだよ。」
「へぇー!じゃああたしと家近いね。一緒に帰ろ。」
「おーそうなんだ。うん、帰ろ。」
愛莉と一緒かー嬉しいな。
――そして帰宅中――
「沙羅はさ、夕霧の人たち、どう思う?」
「あーそれね。今日はほんとにただ興味があっただけだろうけど、明日からもあんな感じだったらもう平和な高校生活は諦めるよ。」
「そっかーならあたしもそうする!沙羅とはいい友達になれそうだからね~」
「はは、ありがと。愛莉さ、わたしがなんで地元から離れたここに来たか、聞かないんだね。」
「まあ気にはなるけど、無理に聞くべきじゃないかなと思って。沙羅が話そうと思ったときに話してくれればいいよ。」
「分かった、ありがとう。」
「いえいえ。これから長い付き合いをさせてもらうつもりだからね!」
「うん、よろしく!」
とても楽しい下校だった。
☆☆☆
――ここは桜庭アパートの沙羅の部屋。
「はぁ…仲間かぁ…羨ましいな。あんなにも仲間がいる人を見るのが辛いなんて思いもしなかった。みんな、元気かなぁ。」
闇龍にいた唯一の証であるみんなとお揃いのストラップを眺めながら、沙羅は呟くのだった。
「まあ、ぐだぐ考えてもしょうがないな!よし、課題やろ。」
どこか痛む心を見て見ぬふりをして無理に笑顔をつくり、課題をやる姿は事情を知っている人からするととても痛々しく見える。しかし、ここには、いや、あの男以外沙羅の事情を知っている人はいないため、誰にも沙羅の辛さに気付くことはできなかった――
☆☆☆
――そして次の日――
「ふぁ~よく寝た。」
沙羅は朝起き、昨日と同じように仕度をして大家さんの家に向かった。
ピンポーン
「はいはーい!ちょっと待ってね~」
ガチャッ―
「沙羅ちゃんおはよう!」
「おはようございます、大家さん。」
そして昨日と同じように朝食をとり、変装をして学校に向かう。その途中で…
「沙羅ー!おっはよーん♪」
「おはよ、愛莉!」
「さー夕霧はどうでるだろうね~(にやにや」
「愛莉楽しんでるでしょ!?酷いよ、もう。愛莉も諦めるんだからね!?」
「分かってるって!…沙羅が一緒ならいっそのことそっちの方がいいかもしれないしね。」
「なんかいった?」
「んーん、なんでもない!沙羅も夕霧の誰かに恋しちゃったりするのかなーと思って!」
とたんに沙羅の顔がくもり、
「それはない。」
とどこか暗い光を宿した瞳で告げた。
その表情に、愛莉はそういう男女間でのトラブルか暴走族関係のことで沙羅が闇を抱えているのだろうという推測に確信を持った。
「…そっか。まあ、あたしもないなー。恋より友情だし!それよりさ、沙羅はどっか部活はいんの?あたしは帰宅部だな。」
「わたしも帰宅部だな。特に入りたい部活ないし。」
沙羅の表情が元に戻ったことに安堵しながら、愛莉は、
「じゃー毎日一緒に帰れるね!」
と告げるのだった。
――学校
「来たわね…」
「来ちゃったね…」
「沙羅、覚悟はいい?」
ゴクリ―
「大丈夫。」
「よし、行こう!」
ガラッ―
「あっ!沙羅ちゃんと愛莉ちゃん!おはよう!」
「お、来たな。」
「おはよう。」
「出た!」
「……」
みんならしい反応をするなか、悠希だけ沙羅のことをじっと見つめていた。
な、なんだろう…とりあえず無視しとこう。
そのとき、隣から愛莉が小声で話しかけてきた。
「沙羅、どうする?」
「んーこれは諦めた方がいいのかな。」
「そうね。まあ、二人いるから大丈夫よ!」
「だといいんだけど…」
一抹の不安は残るなか、やっぱり夕霧を見ていると沙羅のはズキンと痛むのだった。
ガタッ―
沙羅と愛莉が席に着くと、
「ねーねー沙羅ちゃん、愛莉ちゃん!連絡先教えてよ!」
あぁ…もういいか。
「いいよ。つか、ちゃん付けするのやめて。なんか気持ち悪い。」
「あ、あたしもね。」
「分かったー!あ、俺らのことも呼び捨てでいいからね。じゃあこれ、俺らの連絡先ね。ちゃんと登録しといてね!」
「はいはい。ってん?俺、ら?って夕霧全員!?」
「もちろん。俺らが話しかけたら誰に襲われるか分からないからね。なんかあったらいつでも連絡して!」
いや、だいたいはわたし一人で大丈夫だけど…ありがたく受け取っておこう。
「それよりさ、なんで二人とも昨日より話してくれるの?」
「あぁ、なんか夕霧と関わると平和な高校生活送れない気がしたから。でも席近いし、ただのからかいって訳でもなさそうだから、平和な高校生活は諦めたの。ね、愛莉?」
「うん。それに沙羅のこと考えると夕霧と一緒にいた方がいいかなと思ったし。」
「ん?どういうこと?」
「あーなるほどね。」
「あれ?そっちも気付いてたの?」
「んー?まあ、薄々?(ニコッ」
なんか二人に無視されるって…辛いね。
「とにかく、これからは仲間としてよろしく!」
「友達として、よろしく。」
沙羅が友達にこだわるのは闇龍のみんなを仲間と思っているからだ。闇龍のみんなと同じくらい親しい訳ではないから、あえて『友達』なのだ。夕霧や愛莉がそれを知るのは、もう少しあとのお話。
「ところで沙羅、質問があるんだけど。」
「ん?えっと…健斗…だっけ?」
「そう。よろしく。あのさ、単刀直入に聞くけど、君何者?」
「は?何者って?」
いきなり失礼なことを聞くなぁ…まったく。
「いくら君のことを調べても名前と年齢しかでてこないんだよ。これ、誰かがロックかけてるよね?」
やばい、と思った。実際に、闇龍のメンバーには固いロックがかかっているし、その上からわたしがかなり強力なロックをかけてるからまず破れない。闇龍もまだわたしにロックかけてくれてるのかな…なんて思ったりして。そんなわけないか。
「そうだね。確かにわたしの情報にはロックがかかってる。でも誰がかけてるのかは言わない。わたしの中でまだ整理がついてないんだ。いつか、話せるときがきたら話す。」
「…分かった。待つよ。それでいい?悠希。」
「あぁ。」
「ごめん、ありがとう。」
そのあと、純の働きによってわたしたちは気まずくなることなく楽しい時間をすごした。
――あと1ヶ月もすれば、夕霧をみても心は痛くならないと思うんだ。だから、わたしに少しの時間をください。そしてわたしは忘れていた。あいつらが、桜町にきていたことを…




