序章
ジリジリと照りつける夏の朝日に、苛立ちを覚えていた。
「だーかーらー、違うって」
「いや、絶対そうだからっ!」
必死に何かを訴える少年を横目に、気怠るそうに歩いている少女。
初夏の通学路は二人(少年)のせいでさらに暑さを増しているような錯覚に陥る。
周りの視線に気づいて気付かずか、少年はさらに声を荒上げる。
「みたんだって!何にもないところから人が突然現れたのがっ!!!」
「いい加減にして、ソラ。迷惑だよ。」
「だって本当なんだって!」
ソラは黙るどころか、アキが信じないのを見て激しさを増す。
ついに歩みが止まった二人。
「でも、誰だったかわからないんでしょ?」
「そ、そうだけど…」
「大体、それが人だったのか怪しいし、信憑性に欠けるよね。ネコかなんかを見間違えたんじゃない?」
「でも……僕たち…つ、付き合ってるんだしさ……なにがなんでも、相手の事を信じるのが…」
アキは仕方なさそうに
「じゃあ、さ…相手の事を思って、静かに出来ないのなら…もう別れる?」
と、呆れた目を青空に向け笑いながら言った。
「…ごめん。」
「よろしい。」
おとなしく黙り込んだソラに笑いかけてまた歩き始めた。
(「…後ろを振りかえる事無く前を見て歩いて行くだけ。振りかえる苦しさを知らないから…っ。」)
「え?なんか言った、ソラ?」
「ん?」
ソラがまた何かを言ったのかと思って聞きなおしたが、ソラはキョトンとした顔をこちらに向けるだけだった。
「なんだ、思い違いか。」
謝罪代わりに、その頬に口づけをして歩き出すのだった。
「ひゅ~、青春だねぇ」
同級生が、ちゃかしながら走り去る。
若干恥ずかしさを覚えながら、時間を確認する。
無情にも、時間は刻一刻と過ぎ去っていた。
「もうこんな時間!?急がないと遅刻しちゃう!!ソラ、急ぐよ!」
ポカーンと、放心状態にあったソラの頬を軽く叩き目を覚まさせる。
「ち・こ・く・だ・ぜ・!」
時計を見せるとソラの顔がみるみる青ざめていく。
「い、急げぇぇぇえええ!!!!」
ソラは、私の手を引いて走り出した。
私は笑いながらその手を握り締めた。