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EVER GREEN  作者: 香澄かざな
第二章 わがままお嬢のお守り役
17/22

No,1 山菜取りとテスト勉強

「2x+2y=2(x+y)。コレをAとおく。それをこの公式に当てはめるとAの二乗+2A+1。それをさらに公式に当てはめると――」

 五月十八日。日曜。今やっていることはー試験勉強。

 ゴールデンウイークが終わってやってくるのは中間テスト。別にいい点を取りたいわけじゃないけど、しなかったら後が怖い。

「何してるの?」

 クリーム色のワンピースを着た女子がこっちをのぞきこむ。

「テスト勉強」

 オレの方はというと相手の方は見ず、本に目を通しながらの返答で。

「勉強って大変よねー。時々嫌にならない?」

「なる」

 ただし、勉強場所は机の上でもベッドの上でもなく、草原の上。


 オレ、大沢昇。自他共に認める高校一年生。

 でも今は……

「山菜コレくらいで大丈夫?」

 そう言って、山菜の入ったカゴを指差す。

「あいつは何もしてないんだ。少しくらい少なくても文句は言わせない」

「アルベルトが納得するかしら」

「させる!」

「だめだったら?」

「その時考える」

 でも今は、公女様の護衛と極悪人の弟子。で、やってることは山菜取り。

「兼業ってつらいわねー。その本もそっち(地球)から持ってきたんでしょ?」

 珍しそうにオレの持っている本ー参考書に目をやる。

「バッグに詰めて、肩にからってからベッドで寝た」

「ご苦労様よねー」

「ほっといてくれ」

 今話している女子は、ミルドラッドって都市の公女シェリア様。金髪に茶色の目。見た目もそんなに悪くない。その公女──お姫様相手にずいぶんな口の聞き方かもしれないけど、本人が望んでいることだから、あえて突っ込まれる心配はない。そもそも悪い奴じゃないし。

 それよりも、問題はもう一人の方。

「仕事、サボりましたね」

 取ってきた山菜を見るなりこの台詞。

 金髪に青い目。見かけは典型的な白人。白いロングコートを身にまとい、メガネをかけたら立派なマッドサイエンティスト。この男こそオレの憎むべき極悪人、アルベルト。


 ひょんなことからどう見ても地球じゃない世界、空都クートにたどり着いたオレ。来た早々この二人に出くわし、極悪人に壷で殴られた。しかも、次来た時は勝手にこいつの弟子にされていた。

 ついでに言うなら、さっきまでの山菜取りも修行の一環なんだそーだ。って、なんの修行だよ一体。仮にも師匠面するなら、それらしいことの一つでもやれってんだ!


「今、私の陰口でも考えていたんでしょう」

 極悪人が笑顔でにらんでくる。妙にカンの鋭いところがまた怖い。ろくに悪口も言えやしない。

「来週テストなんだ。少しくらい勉強させてよ」

 こっちに来るようになって以来、全くと言っていいほど勉強をしてない。原因は、学校とこっちの二重生活。いくら早めに寝ても、全然疲れが取れない。

「あなた、頭悪いんですか?」

「中の上くらい」

「なら問題ないじゃないですか」

「全然勉強してなかったら絶対下がるって!」

 普段はガリ勉はしてないけどそれなりにやってなければ当然成績は下がる。入学早々赤点なんかとった日には周りになんと言われるかわからないし、赤点で追試を受けるのも嫌だ。そのあたりを力説すると「あなたの生活に差し障りがあるなら仕方ありませんね」と軽いため息をつかれた。

「ですが、それとこれとは別です。勉強時間はあげますから、やるべきことはちゃんとやってください」

 笑顔で山菜の入ったカゴをつき返された。こいつを、話のわかる奴だと信じたオレが馬鹿だった。


 何でオレがここにいるか。それは誰にもわからない。気がついたらここにいた。

 元の場所(地球)には戻れる。しかもあっさりと。

 時計がAM7:00になるのを待てばいい。目覚まし時計がなれば、体はちゃんとベッドの上。けど、また眠ればしっかり足が空都クートについている。かと言ってこれが夢かというとそうでもなく。要するにオレは地球と空都の二重生活を送ってるわけで。ほんっと、疲れる。


「そんなに山菜ばっか探して、お前はバカか!?」

 カゴを放り投げ、草原に寝転ぶ。

 大体、そんなに山菜なんかとって使い物にならなくなったらどーするんだよ。第一、仮にも異世界というなら冒険らしい冒険の一つでもさせろっての。なんなんだ、この地道な作業は。

「人をこき使うのもいいかげんに……ん?」

 何かの気配を感じてふと顔を上げる。もしかして、何かあったか?

「ノボルーっ!」

 シェリアがこっちに駆けてくる。

「大変でしょ?アタシも手伝う――」

「なぁ、何か聞こえない?」

 シェリアの話をさえぎり、耳を済ませる。

「え、何が?」

「だから何か」

 意図がわからず首をかしげる公女様。どうやらそっちには聞こえなかったみたいだ。

「さっきこっちの方から――」

 ピューッ。

 かん高い音。と同時に白い煙がみえる。

「今のは?」

「発煙筒ですね。誰かが助けを求めているんでしょう」

 会話をどこから聞いていたのか極悪人が質問に答えてくれた。

「今のはアタシも聞こえたわ。どっち?」

「こっちだ!」

 煙のあがった方角に向かって走る。

 煙があがったのは北西。ここからそんなに遠くはない。

「……ねえ、本当にこっち?」

 十分後。シェリアがジト目を向ける。

「オレが間違ってたって言いたいわけ?」

「その可能性は十分ありますね」

 こいつら……。

「どうする? 一度引き返す……」

「シッ!」

 再び、シェリアを片手でさえぎる。

『…………』

『…………っ!』

 明らかに人の話し声。しかも穏やかそうじゃない。目をこらせば複数の男が誰かをいたぶっているように見える。

「ケンカか!?」

「こんなところでケンカなんてするわけないでしょ。するならもっと別の場所でするわよ」

 確かに。

 近づいてさらに目をこらしてみる。やられている方は一人。男――いや、

「女子!?」

「追いはぎ。もしくは身売り、人身売買でしょうね」

 追いはぎだぁ!?

「ここってそんなに治安悪いの?」

「あなたの世界ではどうか知りませんが、ここでは一歩外に出ればあんなことは決してありえない話ではないんです」

「だからある程度身を守れるか、ボディガードが必要なのよ!」

 納得。

「って、違うだろ!」

 嘘だろ!? こんなところで戦闘開始!?

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