プロローグ
2003年から2007年に自サイトで掲載していたものの写しです。多少加筆修正するかも。
なにがなんでも絶対もどってくる。
もし泣かしてみろ。どこにいても駆けつけて、一発ぶん殴ってやる。
だから――
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「子どもが言ってくれる」
先刻までは騒々しかったはずなのに一人減り二人減り、今ではたったの二人になってしまった。
「ほんとよ」
相づちをうつのは髪の長い女。出会った頃はやせ細っていて男か女かもわからなかったのに、今は白いワンピースを着て隣にたっている。
顔を合わせては口論をして、時には言葉を重ねて。
「子どもの戯言なのにね」
だからこそわかる。それは今まで見てきた中でもっとも晴れ晴れとした表情だった。
「でも、信じてみたい。確証なんかないのにね」
何故。時はこんなにも優しくて。
「行くのか?」
「もちろん」
何故。時はこんなにも残酷なのだろう。
「だからお願いね」
「約束した覚えはない」
顔を背けて固い声で告げた。
「知ってる」
表情を見なくてもわかる。きっと彼女は笑っている。
頼む。これ以上、口を開かないでくれ。
「お願い。あの子を――」
それは今から五年前の出来事。
かくして物語は紡がれる。
ずいぶん昔のものですが楽しんでいただけると幸いです。