油断しました
いきなりな展開から始まります。
目が覚めると目の前は真っ暗だった。
辺りを見回すとまだ目が慣れてない為、あまり見えないが、お情けばかりの天井の小さな天窓から見える景色で夜だと分かる。
記憶にある最後の時がお昼過ぎだったし、あれから6時間以上は過ぎてるだろう。
もしかしたら翌日かもしれない。
けど、喉の渇きや空腹感はそこまで酷くないから、同じ日だと思うんだけど……。
そう思いながら私は寝かされているベッドから起き上がり、裸足のままドアまで歩いて行く。
服は乱暴にされた痕跡はないけど、靴がないってことは逃亡を防止されてるな。
だったらドアももちろん―――ガチャガチャと乱暴に押したり引いても鍵がかかっているようでビクともしない。
大声で叫んでも良いけど、下手に騒いで誰か来られるのは困る。
とりあえず落ち着いて今の状況を確認しないと。
呼吸を整え辺りを見回す。
部屋は城の自室に比べたら狭いが、それでも十分な広さはあった。
けど……どことなくカビ臭いし、長く使われてなかった部屋を急遽使えるようにしたって感じ?
寝かされていたベッドからは、おろしたての清潔感ある臭いが布からした。
でも周りの調度品は長い間放置されてたようでホコリ被ってるからなぁ。
用意した人ってかなりズボラな人だ……別に良いけど。
精神的に疲れてるので、ベッドに腰掛ける。
自分でも驚くぐらい情けない状況だ。
最初のお披露目パーティまであと3日なのにこの失態。
これでもしお披露目までに戻れなかったら………と考えるとゾッとする。
自分から王妃になる資格がないレッテルを貼るようなもんだ。
あの狸大臣達に格好のチャンスを与えるだけじゃない!
大臣達も表面上は探索活動をすると思うけど、内心は見つからない方が好都合だと思ってるだろうし、ある程度時間が経ったら迷宮入りにするかもしれない。
「頑張って探したのですが、手がもうありません」とか「むしろ恐くなって自ら逃げ出したんじゃないですか」などなど。
限りなく最悪な場面を想像するが、もし見つからなかったらこんな陳腐なセリフを言うのは目に見えてる!
そんなことグレンが許すわけないだろうけど、あの忙しい人の手を煩わしてしまうことに申し訳なく思ってしまう。
足手まといにだけはなりたくなかったのに!
私はお姫様じゃない。
だから迎えに来るのを待つのは性に合わないし、ここがどこかも分からないけどとりあえず街や村にいけばどうにかなるはずだ。
でもドア以外に外に行けそうな場所が天井の小さな天窓だけって酷すぎる!
向こうも私の行動力を警戒しての用意だろう。
だって誘拐をした人は私のことをよ~く知っているからだ。
そこら辺のお嬢様とは違うことももちろん知っている。
そう………まさか自分の護衛騎士に誘拐されるなんて思わなかった。
けど、誘拐された私がいけないのはよく分かってる。
なんでこんなことをしたんだろう?
それに私の護衛をする騎士を選ぶのは何回も人選を重ねて選ばれ、最後にグレンが抜かりないように徹底的に調べてから了承されるはずだ。
だからこそ、本人はもちろん家族、親族に関しても調べられて、危険がなく腕が立つ人が選ばれる。
現に私を誘拐した人もそんなに知ってる訳ではないが、良い人だ。
でも私は騙せてもグレンを騙すことは難しいし………。
とりあえず私は何か原因や手がかりがないかどうか、誘拐される前から思い出すことにした。
そう今日は朝からお披露目パーティの最終確認のため、バタバタしていた。