グレンの回想記2
さらにグレンが壊れつつあります……。
大丈夫!どんと来いな方のみどうぞ。
部屋に入ると、普段とは違う空気が流れていました。
危害を加える雰囲気ではなく、全く逆の居心地の良い空間になっていました。
不思議に思い足を一歩踏み入れた時に、リンは現れました。
文字通りに急に前触れもなく、現れたのです。
さすがに俺も驚きましたよ。
唖然としてしまいましたが、現れた少女がバランスを崩し倒れそうになったので、慌てて抱きしめました。
少女――リンは、驚いた様で目をパチパチさせて俺を見つめてきました。
その時の可愛さと言ったら、今思い出しても堪りません。
この国には珍しい真っ直ぐで長い綺麗な黒髪と大きな黒い目。きめ細かい肌。華奢な身体。
今まで数多くの女性を目にしてきましたが、こんなに心を揺さぶられた女性はいませんでした。
思わず押し倒しそうになりましたが、リンがそのまま気絶してしまったので、慌てて医務室に向かいました。
幸い夜でしたので廊下を出歩く人も少なく、リンを見られる事なく医務室に行く事が出来ました。
この少女が何者なのか、どこから来たのかなど不安要素は多々ありましたが、俺には確信がありました。
この国に害を与える者ではないと。
それからリンの安全を考え、一部の信頼出来る人間のみにリンの事を伝えました。
その時の俺の様子は、側近が言うには気持ち悪かったそうです。
普段冷静沈着で表情を崩さない俺が、始終ニヤニヤしていたそうです。
失礼ですよね。
あぁ、笑顔で返したら黙りましたよ。
黙るくらいなら初めから言わなければ良いのに。阿呆です。
リンが起きてからが、また大変でしたね。
なにせリンの話を聞くたびに、違う世界から来た事が分かるんですから。
最初は驚きました。
けれどリンが現れた現場を俺は見てましたので、他の者より早く納得する事が出来ました。
半信半疑だった者もいましたが、王である俺が信用した事により立場は絶対的なモノになりました。
遅かれ早かれ俺が信用してなくても、リンの事を疑う者はいなくなったと思いますが。
それからしばらくして徐々に元気を取り戻していきましたが、精神的に不安定なところがありました。
俺や他の者といる時に笑っていても、ふとした拍子に元の世界を思い出し1人落ち込むリンを見るのが辛く、俺は敢えてリンをからかい遊ぶようにしました。
落ち込むより怒ってた方が、気が紛れますからね。
ですが、本気で落ち込んでいる時は根気強く側にいました。
そうやって少しずつ囲い……いえいえ、慣れてもらおうと努力しました。
偽りの明るさから、リン本来の笑顔を見れた時は涙が出そうでした。
この少女は何故この世界に来たのかは分かりませんが、初めて神という存在に感謝しました。
他でもない俺の目の前に現れてくれて、本当に嬉しかったです。
先ほども言いましたが、あの部屋は力のあるものしか入る事が出来ないのです。
極端に言えば、力の持つ王族か魔術師しか入れません。
なので、現れたリンにも魔力があるのは間違いないのですが、本人も分からないらしく、こちらで調べても反応はあるのに力を出す事が出来ない為、一応保留という形にしています。
4か月程経つとリンの方から働きたいと言われました。
俺も周りも反対していたのですが、何でも「働かざる者食うべからず」らしくただ保護されるだけはイヤだと一点張りで、最後はこちらが根負けしました。
けれど、ただで負けた訳ではありませんよ。
リンは学生だった様なので、まず勉学に励むようにと伝えました。
この世界をまず知らなければ、働く事など出来ないというと、納得してくれました。
本当に、素直で可愛いですよね。
まさか王妃になる為の教養を受けていたなんて、思わなかったでしょう。
リンという人物に触れていく中で、自分の伴侶はこの人しかいないと思ってました。
しかし、正室――王妃は誰にでもなれるものではありません。
あっ、家柄に関しては大丈夫ですよ。先方に了承も得てますので、問題なくありません。
他にも教養など必要な事は多く、それこそ幼少期から習う事がたくさんあります。
そのままでも十分魅力的ですが、肩身の狭い思いをさせたくないですからね。
リンは元々学ぶ事が好きな様で、グングン成長していきました。
これは、たっぷり褒めてあげましたよ。
少し怪訝そうにしてましたが、根が素直な分疑う事も長くは続かなかったようです。
まさか褒められる=王妃としての資質があって喜ばれてる、とは思わなかったでしょう。
褒められて照れるリンはまた可愛く、色々な衝動や欲求を我慢しました。
俺の方が褒めて欲しいぐらいです。
えっ?やってる事が犯罪?
無垢な少女を騙して心が痛まないか?
五月蠅いですよ(絶対零度の頬笑み)
俺だって鬼ではありません。
勿論帰す気はこれっぽっちもありませんでしたが、一応帰る方法も探しましたよ。
リンのように異世界から現れた者はいないか文献を見たところ、同じような少女が昔いた様で帰る方法が記されてました。
アリアナが光る時紅い玉を用意し、その場に力のある魔術師がいる事――これが条件でした。
リンが心から帰りたいと願っていたら、もしかすると俺も帰そうと思ったかもしれません。
けれどリンは必死に隠してましたが、俺の事を好きなのは間違いなかったので、そんな両想いな2人を離れ離れにさせる方が可哀想ですよね。
本当はもっと前に、リンに素直になってもらう予定でした。
それを邪魔したのが、あの憎き親子――シェルダ大臣とラダニアです。
今思い出しても頭に血が上り、物騒なアレコレな事を考えてしまいます。
以前から正室候補に、と口五月蠅く言って来てましたが、その度に断っていました。
一応失礼にならないように丁寧に。
リンと一緒にいる時に言って来た時は、どうしてやろうかと考えてしまいました。
さすがの大臣も空気を読んだのか、その時だけはすぐにいなくなりましたね。
シェルダ大臣は血筋だけは良いので、娘を正室に迎えたいと言って来ても可笑しくはありません。
ただ娘が問題です。
見かけは確かに綺麗かもしれません。勿論、リンの方が100万倍綺麗ですけど。
しかし、問題は中身ですよ。
性格も最悪ですし、浪費癖も聞いています。
幾ら血筋が良くても無理です。
リンに出会ってなくても、側室にもしませんでした。
けれど、どうもラダニア――あの女は小さい頃から呪文の様に「正室になれ。いや、なれる!なるんだ!」と言われていた様で思い込みも凄く、自分がなるのが当たり前と思っていました。
何を勘違いしたのか、自分が正室になれないのはリンの所為だと思ったらしく、リンに対して……そうう俺の可愛い可愛いリンに……すみません。ここから先を言うと血管が切れそうになるので、またの機会にして下さい。
とにかく、その女と父親の所為でリンが余計に身分の事を気にしてしまい、最後の最後に強行手段に出るしかなかったという訳です。
フフフ。あの2人には其れ相当の罰を与えましたよ。
当たり前でしょう。俺の可愛いリンを傷つけてたんですから。
あぁ、ナニをしたかは秘密ですよ。
色々ありましたが、こうしてリンは今俺の腕の中にいます。
これからも離す事は絶対ありません。
リンが思っている以上に、俺は愛してますよ。
早く婚礼を上げたいですね。
待ち遠しいです。
この後、起きたリンがあまりに可愛いく俺を煽るので、存分に美味しく頂きました。
リン曰く、煽ってないそうですが「据え膳食わぬは男の恥」ですから。
早く慣れて下さいね。
どうでしたでしょうか?内心ビクついてます。
楽しんで頂けたら嬉しいのですが、ちょっと?いやかなり?グレンが暴走しまして。
カテゴリーに慌てて「溺愛」と「腹黒」を付けましたよ!
本当はリンに群がる虫退治も入れたかったのですが、今回は泣く泣くカットしました。
見たい人がいるか分かりませんが、次回以降に話を入れたいですね。
あと、リンとラダニアのやり取りも!
評価やお気に入り登録ありがとうございます☆
本当に嬉しいです!!
拙い文章ですが、感謝の気持ちでいっぱいです。
楽しんで見て頂けたら嬉しいです。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。