グレンの回想記1
グレンの性格が少し(?)壊れつつあります。
それでも大丈夫!という方のみどうぞ。
カーテンの隙間から太陽の光が漏れ、部屋の中が段々と明るくなってきました。
起きる時間ですね。
長年の習慣で緊急事態以外は、この時間帯に自然に目が覚めます。
いつもなら俺の生活リズムを把握している優秀な侍女が、隣の部屋に朝食を用意しているでしょう。
だが、今日は違いますね。
婚礼の儀はもう少し後ですが、初夜を邪魔する不届き者はこの城にはいません。
邪魔するような奴は、即クビです。
少々大げさかもしれませんが、それほどこの日を私は待っていたんですよ。
腕の中で眠っているリンを見たら、自然と心が温かくなります。
愛しい人。
昨日は合意の上ではありましたが、それでも物事を性急に進めてしまいました。
けれど、大分我慢してたんですよ。
気持ちを自覚して1年以上、よく耐えたと自分でも思います。
気持ちを伝えようとしたらこの子ウサギは、すぐに逃げようとするので想いを伝える事が出来ませんでした。
まぁ、追いかけゴッコは楽しかったですけどね。
魔術師達に出来るだけ遅く作るように命令していた紅い玉もとうとう昨日完成してしまいました。
これでも色々策を練っていたんですよ。
ですが、あまりに帰りたそうにしたので、イラっとして壊してしまいました。
帰りたい理由と俺に対する気持ちを必死に隠そうとしてた(バレバレでしたけど)リンを見るのも好きでしたけど、帰られたら困ります。
確かにリンのご両親や友人達には申し訳ないと思ってます。
ですが、気持ちを抑える事はできませんでした。
そんな俺が言うのも可笑しいですが、安心して下さい。
あなた方が大切にしていた以上に、一生守っていきます。
俺が人に対してこんな気持ちを持つとは、夢にも思っていませんでした。
小さい頃から表では愛想良くても、裏では他人を蹴落とそうと躍起になっている人を、山ほど見てきました。
両親から受け継いだ容姿と丁寧な言葉遣いを使う事で、関わり合いは上手くいきました。
笑顔も武器になりましたね。
父親が早くに亡くなったので、このリューシリア国の王になったのは21の時でした。
幸い国内外も混乱はなく比較的平和で、時期も良かったと思います。
信頼出来る側近もいましたし、政事は上手くいきました。
それでも年齢の事もあり、親と同世代やそれ以上に年齢が上の大臣達も多く、舐められない様に常々気を張ってました。
重箱の隅を突く事が大好きな人達が多かったもので。
勿論、倍返しにして返してあげましたよ。
やられたらやり返さないと失礼ですからね。
それから2年が経った時の事です。
普段は行かない部屋に何故か足を運びました。
リンが帰ろうとしていた、あの白い壁のシンプルな部屋です。
あの部屋は力のある者しか、入る事が出来ません。
力というのは権力ではなく、体内にある力――魔力の事です。
魔力と言っても魔法が使える訳ではありません。
国を守る結界を作ったりする、言わば防御の力ですね。
この力が在るからこそ、我が国は他国から侵略される事はありません。
各国の王族や魔術師も同じ力がありますが、それでも我が国には及ばないのが現状だからです。
その力がある者しか入れない部屋に、俺は行きました。
今思えば、勘が働いたのかもしれません。
その部屋で俺は、リンに出会いました。