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実力行使?

無理無理無理。

終わった……終わったわ……。

私はこの目の前の悪魔。ううん悪魔に失礼よね。きっと悪魔よりも超越したドス黒いモノをお持ちなんだ。私限定で。


だって思い出しても優しくされた事なんて、指で数えるぐらいしかないもん。

………確かに、この国に突然来てしまった身元不明の怪しい私に衣食住を与えてくれて、不自由のない生活を送らせてくれたことは、本当に感謝してる。

それだけ見ればすごく良い人だけど、私が言ってるのは精神的に優しくないって事!

私の身の回りをお世話してくれる人は奴の本性を多少知ってるけど、それでも私に対してだけで周りの人には、あの胡散臭い笑顔を振りまいてるのを知ってるんだから。


だけどごく偶に、私が本当に落ち込んでる時は優しくしてくるの。

その時は、胡散臭い笑顔を向けてくる事もなく、からかう事もなく側にいてくれる。

そういう所があるから、本気で嫌いになれない。

ううん。……違うかな。好きだと思う。

でも私はこの世界では身分も何もない、ただの厄介者でしかない。

それにグレンは私の事、反応が楽しい玩具程度にしか思ってないと思う。

だからこれ以上気持ちが大きくなる前に、帰りたかったのに!!

それを……それを……全部駄目にして……。


今回の玉を落としたのも、星の事を教えなかったのも全部全部私を困らせたいだけ。

でも今までは我慢出来たけど、今回ばかりはもう無理!

だって私の人生がかかってるんだから!


「それでどう責任取ってくれるの?私は帰りたいの!」

「そうですね。もう帰る事は出来ないので、責任持って俺が一生面倒をみさせて頂きます」

「はっ?」

「大丈夫です。これでも一国の王ですから、生活は保証致します。なので結婚しましょう。」

「はいっ?……って今の返事じゃないから!疑問形で聞き返しただけだから!」


あまりに予想してなかった単語を聞き、驚きのあまりその言葉しか出なかった。

いきなり、結婚ってどういう事!?

明らかに嫌な予感がしたので慌てて訂正したけど……。


「ありがとうございます。了承得られて嬉しいです」


やっぱり了承した事になってる~~!

すぐに否定をしようと思ったけど、本当に嬉しそうな満面な笑みを浮かべられたから、一瞬何も言えなくなってしまった。

その隙にグレンに抱きかかえられ、俗に言うお姫様抱っこをされていた。


「ちょっとお願い、下ろして!」

「駄目です。逃げてしまうでしょう?」


当たり前でしょう!逃げるわよ。

私は帰りたいのに、なんで邪魔をするの。

それに結婚なんて、身分も何もない私が出来るわけない。

出来たとしても側室でしょう。私はそんなのイヤ。

それに、正室になる人はきっとあの人だって決まってる。

2人が寄り添ってる姿なんて見たくないし、辛いだけ。

だから必死に気持ちを隠して、帰りたいと馬鹿みたいにそれしか言わなかった。


それなのに結婚しようなんて、無神経にも程がある。

責任は確かに取ってもらいたいけど、それは帰る方法を探してもらう方にして欲しい。

好きだから、なら分かるけど責任とか面倒をみるとかで、結婚は可笑しい。

遊べる玩具が側にいなくなるのがつまらない、なんて理由もあるかもしれないけど、そこに愛はない。

きっとすぐに冷めてしまう。私なんて、すぐに用済みになる。

そんな状況は耐えられない。

だから辛いけど、言おう。あなたの気持ちはすぐ無くなるモノだって……。


「グレン」

「なんでしょうか?」

「あのね、責任で結婚は可笑しいよ。責任なら他に帰る方法あるか探して。帰るまでに面倒はみて貰う事になるけど、それぐらいは許してよね。あなたが原因なんだから。それにグレンは王様でしょう。私みたいな身分もない人に結婚なんて言ってはいけないよ。国の為にもっと繁栄出来るお姫様を選ばないと。私知ってるんだからね。正室になる人!だから結婚のお話はこれで終わりね」


長々と言ってしまった。

少し辛いけど、これでグレンも分かってくれたと思う。

これで全部上手くいく。

私は帰る方法を新たに見つけて元の世界に戻る。

グレンは自分にとって必要なお姫様と結婚する。

これで良い。

元から自分の気持ちは言うつもりないし、これからもそれはない。

言っても鼻で笑われるだけだろうし、この関係を壊したくないから。


私が1人勝手に納得していると、周りの雰囲気が変になった。

なんだろう?と周囲を見てみる。

あらら??魔術師の皆さんが、ガタガタ震えている。

フードの影から僅かに見える顔も、顔面蒼白で冷や汗も酷かった。

それも1人だけじゃなく、他の人も同じような状況だった。

これは大変だ。医者を呼ばなきゃ、と思いグレンを見上げると私も固まってしまった。


グレンの表情は先ほどまでの笑顔も優しい眼差しもどこにもなかった。

そこにあるのは、絶対零度の頬笑みと冷え冷えのオーラが漂っている。

……私こんな状況の人にお姫様抱っこされてるのに、全く気がつきませんでした。

っていうか怖い!怖すぎる!

グレンのこんな表情は初めて見る。

いつもの胡散臭い笑顔はどこにいったのですか!?


恐怖と闘いながらも、私は下ろしてもらう為に声をかけた。

こんな人に抱っこされてたら、身の危険マックスですからね。


「グ……グレンどうかした?あと……良ければ下ろして下さい」

「フフフフフッ」


……私笑えるような事言いましたか?言ってないですよね?

怖い、怖すぎる!


恐怖で震えている私にグレンはこう言いました。


「鈍いと思ってましたが、ここまで鈍いとは……。あと何か勘違いしてますけど、俺の正室はあなたしかいないですよ。責任だけで結婚なんて申込わけないじゃないですか。お馬鹿さんですね。それとあなたの気持ちなんてお見通しですから、いい加減素直になりなさい。ねぇ………リン?」


はっ、恥ずかしい!

私の気持ちがお見通しって事は、バレてるんですか!?

必死に隠してきたこの1年以上の期間は一体なんだったの……。

それに、正室は、私?


「嘘よ!正室なんて私がなれる訳ないじゃない!」


側室でもネチャネチャ文句を言いそうな意地の悪いあの狸大臣達が許すわけないし、まして正室なんて無理。

自分達の娘達をどうぞ貰って下さい、と直談判してる所見た事あるんだから。

アレは絶対わざと私に見せてたと思う。

だってグレンと一緒にいる時に、廊下で言われた事も何度かある。


それに正室になるのは、見た目は美女(中身は最悪)のあのお方がなるのではないんでしょうか?

本人に直接言われたけど。ついでに父親にも言われたのですけど。

中庭で侍女の方々と楽しくお茶をしてる時に、ズバッとハッキリこの耳で言われたのは忘れませんよ。

さすがの私も結構ショック受けたんですから。

言い返しましたけど。


ジト―っとグレンを見ていると私の言いたい事が分かったようだ。


「正室にはなれますよ。嘘は言いません。それとあなたが気になってる身分ですが、そこは抜かりありませんからご安心下さい。信頼出来るところの養子になってます。身元もバッチリです」


戸籍勝手に作られた上に、どこかの養子になってる!?

えっ何それ?権力ってそんな事に使っていいわけ~~~??


私の知らない所で本人に了承も得ずに、色々としてたようであまりの事に反論する事も出来ない。

17歳の小娘には無理です。あの狸大臣達を束ねてる王様に勝てる筈がないのです。


グレンですが、暖かく見守ってあげて下さい。

愛ゆえの暴走というやつです。


ちなみにグレンは普段は公正に政事を行い、国民の信頼も厚い王様です。

けどリンに対してだけは、暴走してしまうようです。

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