表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

演技は大袈裟なくらいが丁度良い

「后になるお方だった人をこのようなむさ苦しいところに閉じ込めてしまい、申し訳ありませんな」


そう言いながらあご髭に手を当て笑うシェルダ大臣。

メタボ体系に貫録をつけたいのか似合わないあご髭をし、始終ご機嫌だ。

私のことを后になるお方[だった]って過去形にしてるぐらいだから、凄い自信があるんだろう。

以前私に余計なことをしてグレンから厳重な勧告を受けた後は、大人しくしてたはずだ。

でも今このタイミングで仕掛けてくるってことは……誰か裏にいるな。

今の大臣1人では何も出来ないはずだから、侯爵クラスの人間が裏で唆したか?


……やっぱりそうか。

憶測にしか過ぎないけど、幾らなんでも可笑しすぎる。

執務室まで距離はあってもその周りは厳重に警戒されているし、私を気絶させ誰にも見つからない様に連れ去ることはほぼ不可能だ。

けど……上からの命令で警備していた人達を移動させたりは出来るはず。

「不審な人影を見つけたから見に行け」とかなんとか言えば手薄になるし。

その命令はシェルダ大臣では出来ないから、やっぱり誰かいるなと確信を持つ。


でもなぁ。私を誘拐してその後どうするんだろう?

グレンは私のことを絶対見つけてくれると確信してるし、その点は心配してない。

迷惑をかけることは非常に申し訳ないし、辛いけど。


それに絶対この男(大臣なんて言ってやらない)は自分の立場を本当に意味で理解していない。

見つかったらどう説明するんだ!

100%裏で糸を引いている人物は、都合が悪くなったら裏切るぞ。

それは確信できる。

まあ、裏切られても別に同情なんてしないけど。


私が黙っていることを勘違いしたのかさらに男は高笑いをする。


「恐怖で何も言えないのかな。しょせん小娘は小娘だったってことか。ハハハハ、やはり我が娘こそ正室――后になるのが相応しい」


まだ諦めてなかったのか!というツッコミは置いといて、今だ高笑いをしてご満悦の表情をしている男に目を向ける。

こういう時は調子に乗らせよう。うんそうだ。そうしよう。

調子に乗らせて口を滑らせてくれたら万々歳だし。

私は油断させる作戦を取るようにした。


「……私をどうするつもりですか?それにお披露目が迫ってるんです。早く返して下さい」


両手を胸の位置で組み、出来るだけ恐怖に震えながら懇願してるように見せる。

自分でもこの演技は気持ち悪いし大袈裟すぎるかなと思ったけど、この男には効果があったみたいで、さらにご機嫌にな表情になった。

扱いやすい……今までよく生きてこられたな。

別の意味で関心しちゃうよ。


「それは出来ませんな。お披露目まで残り2日と少しでございます。それまではこの部屋にいて下さい。大人しくしていれば何もしません」


2日と少しってことは今日は気絶させられた日のままか、と思いながら弱弱しい演技を続ける。


「私がいなければお披露目が出来ません。どうするつもりです?」

「リン様には関係ないことでございます。いずれ見つからなければ我が陛下も諦めましょう。しばらくして再度我が娘を立候補に上げます。ですので、リン様は安心して下さい」


安心できるか!

……それにしてもなんてずさんな計画なの。

別の意味で頭が痛くなってきたけど、少しずつ計画が読めてきた。

この男は実行犯になる代わりに裏で糸を引いている人に推薦人になってもらうつもりなんだ。

その推薦人の援助もあって、娘を再び立候補に上げる。

誰かは知らないけど、この男が安心して計画を実行出来るほどの力のあり、なおかつ推薦を受けたら絶対正室――后になれる確信が持てる人物か。

それだと大分絞られるな。


「では私が后から除外された後はどうするつもりです?」

「とりあえずこの国からは居なくなってもらいます。殺しはしませんが、もしかしたら道中賊に襲われる……なんてことがあっても運がなかっただけのこと。恨まないで下さいな」


それって完璧に私を亡き者にしようってことだ。

そういうことは思ってても言っちゃ駄目でしょ。……呆れて何も言えなくなる。

とりあえず口を手にあて驚くフリはするけどね。


「今は大切な人質ですので、手荒なことは致しません。ですが、あまり余計なことはなさらぬように。ハハハハ、今のリン様なら何も心配はありませんがね。それでは失礼致します」

「………」


そうして機嫌良く男が出て行った後、残りの2人も私に一礼をして部屋から出て行ったが、私は見てしまった。

マルダンさんが、人質という言葉を聞いた時に僅かに顔を顰めたことを。


普段表情を変えないマルダンさんが僅かでも顔を顰めたのは凄く珍しい。

だから確信が持てた。

マルダンさんも誰か人質に取られてることに。

仮に演技だとしてもする必要がないことだ。だから限りなくこの推測は正しい気がする。


そう思った時、気絶させられる直前に言われた言葉を思い出した。

そうだ。あの時凄く小さい声だったけど……「申し訳ございません」って言われたんだ!

凄く辛そうな声だった。


きっとマルダンさんも本心からしたわけじゃない。

でもどうしてもしなきゃいけないほど、大切な人が人質に取られたんだ。

そう思った時、改めてシェルダ大臣に対する怒りが湧いてきた。


あの親父~本当に許せない!

正々堂々と表から勝負して来なさいよ。裏でコソコソコソコソと……。

絶対此処から出る時はマルダンさんの人質になってる人も助けて、あの親父を捕まえて堂々と出てやる!!


そう私は心に誓い、右手を高らかに上げ決意をした。


実はシェルダ大臣はグレンの手によって、大臣の位から降格してます。

領土も大幅に削減され、落ちぶれていますが起死回生の為今回の作戦に乗りました。

そんな人の娘がいくら有力な人から推薦を受けたって正室になれるわけはないんですが、上手くのせられたようです。

リンは降格したことを知らないので大臣のままで呼んでます。


どうでもいい裏話でした☆



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ