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警戒するなら最後まで。ここ重要!

「あれっ?カレンさんは?」


ドレスの最終チェックを終え、控え室から出てきた私はマキナさんに声をかける。

休憩の準備をしてくれていたマキナさんはいったん手を止め、説明をしてくれる。


「カレンは当日のリン様の予定表が出来たそうなので、取りに行っておりますわ」

「そうなんだ。でも確か担当の方が直接持って来てくれるんじゃなかったっけ?」

「その予定でしたが、何でも急な予定が出来たそうで取りに来てほしいと先ほど連絡があったんです」

「そっか~けどカレンさん怒ってたでしょ?」

「ふふふ。伝えに来た方が可哀想なほどでしたわね。………まぁカレンも忙しいですし、気持ちは分かります」


その時の様子が目に浮かぶようで思わず笑ってしまう。

こういう最終確認をしている時は忙しさのあまりピリピリしやすいので、笑いは必要だ。

………カレンさんに聞かれたら恐いけど。


それでは休憩をしよう、という時にドアからノックの音が聞こえる。

来客だ。ちょっとタイミング悪いな~と思いつつ、私は手を止めマキナさんはドア付近まで行き、扉越しに用件を聞いている。

戻って来たマキナさんの表情は少し戸惑っていた。


「どうかしたの?」

「グレン様がリン様を呼んでるそうです。ただ……」

「何かあるの?」

「いえっ気にしすぎかもしれませんが、いつもと違う文官の方がお呼びに来られてるそうです」

「いつもの人じゃないの?それは変だね」


グレンが私を執務中に呼び出す事は多くはないが、ある時はある。

特に最近は準備やらなんやらで呼び出しは普段より多い。

それでも本人が来るわけにもいかないから、側近の人や文官の人に渋々頼んでいる。

だからいつも来る人は大体決まっているんだけど……。


「本人が言うにはその文官の人に頼まれたそうですわ。向かっている途中急な用事が入って、偶々居合わせた自分に声がかかったと言っております」

「う~ん。本当にグレンが呼んでたら早く行かないと悪いしね。……用心に越したことはないから護衛の人も一緒に来てもらおうか」

「それが良いと思いますわ」


簡単に身なりを整え、向かうことを伝える。

ドアから出ると若い文官の人が待っていた。

これでますます変だと思った。警戒心マックス中。

なんでかと言うとグレンは自分が信頼した人なら大丈夫だけど、極力私の近くに若い男性を近づけることを嫌う。

それを十分に理解してる彼ら(側近さんや文官さん)は幾ら急な用事が入っても若い人には声をかけないと思う。

だから目の前にいる人は怪しすぎる。

言っていることが真実なら申し訳ないけど、警戒心は大切だ。

その文官さんに聞こえないように小声で護衛騎士に気をつけるよう声をかける。

今思えばバカな話だ。

誘拐する本人に気をつけるよう言ってたんだから。


とにかくそんなことを知らない私は、若い文官さんに連れられグレンの待つ執務室に向かった。

急な襲撃や不審な行動をしないか気をつけてたんだけど、何事もなくグレンの待つ執務室まで目と鼻の先まで来た。―――と言っても長~い一本道の廊下を歩かないといけないし扉もまだ見えないが。

でもここまで来たらあとはもう少し、さぁどうするんだ!と意気込んだところ、文官さんにそれではここで失礼します、と言われかなり拍子抜けしてしまった。

アレ?此処でさようなら?と随分間抜けな顔をしたと私に、自分の身分ではこれ以上は失礼に当たります、と言われ姿を消されてしまった。


思わずカレンさんと顔を見合わせ、お互い少し恥ずかしくなってしまったのは許してほしい。

だって警戒心って重要じゃない。

自意識過剰だったけど、何かあったらいけないしね。……でも、あの若い文官さんには申し訳なかったな。

今度もし会う機会があったら謝ろう。そう心に決め長い廊下を歩き始める。


その後すぐにマキナさんを呼び止める声がかかり、顔見知りの侍女らしく、これ以上疑うのも妙に恥ずかしかったので、マキナさんには後から来るように伝え、護衛騎士の2人で執務室に向かう。


で、マキナさんの姿が見えなくなった時に私は襲われたってわけ。

みぞおちに一撃頂いて、意識がなくなり今に至るわけよ。


警戒心って最後まで持たなきゃ意味がないってことを身を持って教わりました。

………でも執務室までまだ距離があったけど、凄い無謀だよね。

それとも捕まらない自信があったわけ?

それに私の護衛騎士―――マルダンさんがどうして?

彼と話したことは多くはないけど、話す時は礼儀正しく同い年とは思えないほど、大人びていて……こんなことをする人には見えなかった。

誘拐された今も信じらない。

後ろから襲われたからどんな表情をしていたのかは分からないけど、意識が失う前に何か言われた気がする。


なんだろう?小声で聞き取りづらかったけど、確かに何か言われたはず……。


思い出そうと、頭に手を当て考える。

すると突然ドアにノックの音とともに開き、男が入って来る。


「お久しぶりでございます。リン様、お加減はいかがですかな?」


顔は笑っているが目が笑っていない。

相変わらず嫌な感じしかしない男がズカズカと部屋に入って来る。

部屋の中は暗いままだが、男が持ってきたランプで顔が見えた。


「お久しぶりでございます。………シェルダ大臣」


自分の娘を正室にするためにどんな手段も使って来ただろう男が目の前に来た。

結局愛娘のラダニアさんは正室には慣れず、私がなってしまったので、シェルダ大臣からしたら私は憎き相手だろう。


後ろにはマルダンさんとあの若い文官もいた。

ってお前もグルだったんかい!

思わず心の中でつっこむが、表面上は冷静にいるつもりだ。

弱みを見せたらこちらの負けは目に見えている。


さて………私をどうするつもり?

心臓はドキドキし冷や汗が出るが、負けないよう目の前にいる男を睨む。


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