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09「エニュオ」

 トカゲヴィランとなったばかりの俺、ゴア・ラガルトが所属するヴィランチームの最初の仕事は『超人により秩序を守る会』という政治団体の襲撃らしい。俺はその団体については詳しくない。


 説明によるとその団体はお題目として超人因子持ちを平和の象徴としてどうこうするらしいが実際は怪人因子を差別する活動しかしていない。

 許可も無く申請もせずに差別的な街頭演説を行う、活動に関わっていないヒーローの名前を勝手に使うなどの迷惑行為や様々な不正疑惑も多く、度々問題を起こして炎上している。


 聞くだけでろくでもない団体なのだが一度できた政治団体を解体するのは法的にかなり面倒らしい。俺はリーダーである黒髪の若いヴィラン、ソーン・マインに質問する。


「リーダー、ヴィランなりたての俺から質問なんだけど迷惑なだけの存在とはいえいきなり政治団体なんて襲っていいのかい?」


「ああ、むしろやるべきだ。俺達が目指すのは因子による差別の無い世界。

 だが『超人により秩序を守る会』は自分達の利益のために怪人因子を差別し、そのために超人因子にも迷惑をかけ、国から金をせしめる寄生虫だ。

 国民からの評価も非常に低く、内心死んだ方がいいと思っている者が大多数だろう。今の世界にもこれからの世界にも奴らの価値は無い。」


 ソーンは自信を持って答えるがウーファーは何か不満気な顔をしている。だが文句は言わず質問をした。


「で、いつやるの?今夜?チーム名考えないといけないんだけど。」


「いや、今夜ではないし、日時も顔合わせしてから決めていく予定だが。」


「そ、じゃあ提案するわ。あたし達これからたくさん活躍するんでしょう?だったら三人のコスチュームをちゃんと作りましょう。

 新たな時代の因子能力者として印象付けたいなら統一された衣装やマスクでキメた方が得だと思うけど、どうかしらリーダー?」


 確かに、俺は今着るものがタンクトップと作業着のズボンしかない。この格好で因子差別の無い世界を目指してます、新たな時代の因子能力者ですと言っても説得力は感じにくいだろう。

 ソーンは静かに頷いた。


「……分かった。チームの衣装とマスクを作ろう。店の選定はウーファーの方が慣れているだろう。

 ブルースさん、今から衣装を用意できる店はありますか?」


「ええ、ありますよ。こちらカタログになります。どうぞウーファーさん。」


「お!さすがブルース!へぇー、いいセンスしてるじゃないこの店!

 あ、そうそう、チーム名は『エニュオ』ね。」


 チーム名決めるの早いなー。ところで、えにゅおってなんだ?


「恐怖って意味でー、都市の破壊者と呼ばれる女神よ。戦争の神と共に出陣し、残忍な配下を連れて戦場を巡るの。いいでしょ?」


 なるほど、ヴィランらしい。さっき歴史に詳しくないっていったけどウーファーは物知りだなぁ。


「知識が偏ってるだけ。じゃあこのお店に行きましょう!」


 喋りながらウーファーはコスチュームを作る店を決めたらしい。手際の良さにソーンはちょっと戸惑う。


「もう決めたのか?」


「作らないと活動できないでしょ?ブルース、アポとってくれる?」


 そして二時間後、俺達はヴィラン専門の被服店『デスサイズ』でサイズを測っていた。店長のダルマーさん(この人もヴィランだ)の提案で俺のマスクは顔の上半面を覆うもの、ソーンとウーファーは下半面を隠すマスクとなった。

 ダルマーさんはトカゲ男の俺が気に入ったらしく資料用にといくつか写真を撮られた。これで今後も色々オマケしてくれるらしい。


 こうしてヴィランチーム『エニュオ』が結成された。衣装は一週間後にできるらしい。そんなに早く三人分ができるものなのかと感心していたが、一からデザインしたのは俺だけでソーンやウーファーは持っていた衣装と店にあった既製品を組み合わせて製作していくらしい。そりゃそうか……いややっぱ早くないか?


 それまでは三人で共同生活をすることになる。この地下の拠点は三階建てでどこかの地下駐車場の裏に併設されているらしい。俺が窓から見たのは拠点と駐車場を繋ぐ通路だったようだ。水回りや空調設備はしっかりしている。テレビやタブレットなども用意されており元の暮らしよりよほど快適だ。


 俺達はマーブル計画のチームなので組織の下働き的なものはしなかった。基本的に朝と昼は自由時間。だいたいはソーンの趣味である映画を見るか、ゲーマーであるウーファーに誘われ三人でオンラインゲームをやっていた。


 夜になると組織の人に連れられ戦闘訓練を受ける。俺専用とされる戦闘プログラムはゲームセンターの遊びのようなもので正直効果は疑わしい。ブルースさんに格闘技の訓練とかはしないのかと聞いたが、俺の運用には対人用の技術はあまり必要無いらしい。そういうものなのか?


 テレビで組織とは関係無いヴィランが物資を奪うニュースがやっていた。組織もああいうことをやってるのかとソーンに聞いてみる。


「略奪品で生活するのは無所属のヴィランがほとんどだ。俺達の組織『トマリコン』は各地で企業を展開しその収入で組織の基盤を維持している。

 それでも時々物資を奪うことはあるが、その目的は相手企業への妨害だ。相手企業の成績を落とせばこちらの企業に利が回り、結果的に金になる。相手企業がまともならヒーローを雇うなりして対策するが、こちらと同類ならヴィラン同士の争いになることもしばしばだ。興味があれば調べてみるといい。」


 へえ、ヴィランって商売にも関わっているのか。あとで動画漁ろう。


 一週間後、ダルマーさんのお店でできたてのコスチュームを着る。黒の生地に赤の差し色が入っている。折角なのでと撮影もした。だが俺とウーファーでは身長差がありすぎて同じ画面に入るには苦労した。写真では見切れているが腰を落とすために限界までがに股になっている。

 そしてマスクにはスイッチ式の防音装置がついていた。ウーファーが因子能力を使う際に鼓膜を守るもので、緊急の場合彼女側から遠隔操作で起動できるのだとか。


 そして、襲撃当日になった。人任せにする気はないがメンバー二人は優秀だし俺がヴィランの経験も無いことは知っている。ヘマしてもフォローしてくれるだろう。とりあえずできることをしっかりやろう。


---


 『超人により秩序を守る会襲撃事件』の犠牲者は28人。その内27名は未確認ヴィランであるゴア・ラガルトによって殺害された。


挿絵(By みてみん)

※最近挿絵を描くペースが遅れています。11話までは文章のみを投稿しその後しばらくは挿絵製作作業に専念、その後挿絵に合わせて文章を少し改稿する予定です。

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