04「処刑」
俺様は世界に名を轟かすのも時間の問題となるヴィラン『マチョリゲーター』様だ。マチョゲリーターではないぞ。
ヴィラン認定されてから一年以上ソロで活動していたのだが最近ヒーロー組織の追跡が激しくなってきた。戦うには問題無いが物資の補給が面倒だ。
だが思わぬところから使者が来る。世界三大ヴィラン組織トマリコンの首魁ミスター・ネイビーから幹部候補として勧誘されたのだ。
俺様より先に生まれただけだがやはり世界に知られるヴィランだけあってなかなか見る目がある。前払いの金も上々で利用するにはちょうどいい。
そして組織に入る際の余興として処刑を頼まれた。なんでもトカゲの鱗が生える怪人因子持ちのこそ泥を捕まえたらしい。
俺様の怪人因子は名づけて『アリゲータークロウ』。両手がワニの口のように変化し150キロ相当のマッチョな握力で相手を食いちぎる最強の能力だ。
この能力で俺は駆け出しのヒーローを返り討ちにしていたのだが、やはり強すぎるせいで早々に危険視されていた。つまりトカゲの出来損ないを噛み殺すなどわけはない。存分に俺様の残酷さを見せつけてやるとしよう。
地下にある違法バーより更に深く、金網に囲まれた非合法の試合場に俺様は降り立った。司会が凶悪ヴィラン、マチョリゲーターについて声高に語る。
だが、ダメだな。処刑場では先に殺される側を出しておくのが常識だ。自分がこれから殺される現実を突きつけ、観客から嘲笑され怯えながら処刑人の到来を待つ。それが作法というものだろう。
まぁミスター・ネイビーは過剰な合理主義者という噂だ。興味の無い狂騒の管理は下に丸投げしているのだろう。
「それではこれより!Dランクヴィラン、マチョリゲーターの処刑を行います!」
……おいおい、本当にダメだな。その口上では俺様が処刑されるみたいじゃないか。観客は気にせず騒いでいるがこれはさすがに後で言っておかないとな。
軋む音を立てて金網の向こうの鉄の扉が開く。薄暗い通路から何かが這って来る。これから処刑される者が一人で這い寄ってくるだろうか?こそ泥を引っ張ってくる係もいない。
なにかが、おかしい。
『それ』が姿を現した時、残虐なショーを好む客の歓声が止んだ。俺様は事態を把握しつつも飲み込めなかった。
この余興は俺様が殺すのではない。
俺様が、この化物に、殺されるのだ。
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一分後、両手を握り潰されたマチョリゲーターの肉体は内臓の大部分を失って金網に張り付いていた。床には赤い液体と人体を構成していたものが無造作に散らばる。
残虐を超えた光景に熱狂と恐怖が渦巻くその底で紺色の計画が開始される。