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91 罪

他でもない、リディア・ハートフォードが目の前に居る。


ずっと身に着けている汚い白のドレスに、陰ったアメジストの瞳。ブラウンの汚れた髪を腰まで降ろしている。薄笑いを浮かべ、骨格が意味を成さないようにクネクネと、バランスを崩しながらも、何とか立っている。


ハッキリ言って、私なだけで相当不快なのに、それがこんなにも気味の悪い踊りをしていたら数倍気持ち悪い。生理的に受け付けないとは、こういう気分なのか。

……いつまで上演するつもり?もう何度も見た。観客は、既に飽きているわ。


不意に、突然、正面の私の頭が腫れる。

何か所も、何か所も。蜂に刺されたでは言い訳が付かない程、赤紫色に変色しながら、腫れ上がっていく。顔に幾つもの、握りこぶしの大きさのコブが作られていく。


それを機に、わざとらしくよろけた偽物の私が、私の肩を強く掴む。肩の骨が折れてしまいそう。私は逃げられない。逃げる気力も、失われた。


裂ける程に吊り上げられた口元から、色んな人の声で、言葉にならない罵詈雑言が流れてくる。全部、私に向けられた言葉。聞き取れるだけでも、六人。でも、もっとそれ以上居る。


やがて、頭全体が膨らむ。ぶくぶく、ぼこぼこ、音を立てる。……もう、何度も聞い



 ――パンッ。



…………こんなにも膨れれば、当たり前の話、弾けて割れる。風船のように、綺麗なものではないが。

自分の血と髄液を、頭から被った。髪にべっとり付いて気分が悪い。顔と服には白い脳髄が飛び散り、足元には髪の毛と混じった皮膚の断片が跳ね返っていた。


おもむろに、口の中の違和感に気付く。吐き気とか、そんなものじゃない。

口に入った大きな異物を吐き捨てる。さっき弾け飛んできた二つあったアメジストの内の一つが、口の中に入っていたらしい。嫌悪感はない。気持ち悪さも。


今ので、百九十五回。私はこの光景を見た。


もう、どうでも良かった。いや、……今さら私が何かを気にしても意味はない。


……………………私の、せいだ。


あの方が私を殺しに来たことには、正当で妥当な理由があった。


私を殺しに来たあの方が正義で、あの方を殺した私が悪だった。……当たり前か。

正義の執行人を逆恨みなんかで殺したから。未来で私が、世界をあんなにも真っ白にしてしまう原因だったから。


全て、因果応報。


どんなに頑張っても、どんなに変わろうとしても、どんなに懇願しても、私は悪のままでした。何一つ、変わっていませんでした。この旅に、意味も、意義も、価値も、ありませんでした。


ごめんなさい、私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。私が悪でした。


死にたいです。死にたいです、死にたいです、死にたいです。


頭を殴打して、脳を引きずり出して、目玉を抉って、頬を殴って、耳を削り取って、喉を裂いて、首を吊って、心臓を衝いて、内臓を腐らせて、手をもいで、脚を切り落して、毒を飲んで、電気を通して、ナイフで刺して、銃で撃って、体を焼いて、狭い所で潰して、水中に押し込めて、高い所から突き落として、絶食にして、砂漠に放置して、雪山に捨てて、真っ赤に熱した鉄の靴を履かせて、馬車に撥ねられて。それでも、まだ全く飽き足りない。


私は存在してはいけません。いけませんでした。私は存続してはいけません。分かってたはずなのに。

速く、誰か罰してください。罰を、この最低最悪の愚者に今すぐ神罰を下してください。痛くて良いです、楽に死ねなくて良いです。


誰か。誰か。誰か。誰か。誰か。誰か。誰か。誰か。誰か。どなたでも構いません。本当に、誰でも良いです。



 ——誰か、殺してください。



……あぁ、また、来た。遠くから足音が聞こえる。百九十六人目の私。

また、頭が膨れていく。また、あの音が聞こえてくる。

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