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81 教えて★大天才オーウィル先生!、其の三

「ゴメンって。授業始めるぞー」


適当な謝罪で満足していなくても、きちんと話を聞くために姿勢を変える所にキジェの根っからの善性を感じました。


「……まず、太陽は時刻によって高さが異なる。当然だな?朝、夕なら低く、昼なら高い。となると……」


彼はキジェから見て右側にランプを置くと、そのままネジの真上へ持っていきました。さらにそのまま左側にランプを持っていくと、確かに光に照らされたネジの影が伸びました。


これは分かりやすい。キジェに視覚的に伝えるというのも、割に合っています。


「……OK?」


「……」


キジェは今も拗ねていますが、頷き、”分かった”と意思表示はしてくれました。それだけでも結構ありがたいですね。拗ねると、腕をつねって何処かへ飛んで行ってしまう方がいらっしゃるので。


だとしても、”影が伸びる”の説明だけで相当時間を食ったような……?


「……リディアさん、さっきから聞こえるバッグの中から聞こえる音って何ですか?」


……?音、ですか?

心当たりがありませんし、私には何も聞こえません。


「どんな音ですか?」


「金属が、ぶつかる、……ような。……高い音、……みたいな?」


金属音?そんなもの持っていましたっけ?強いて言えば、借りっぱなしのオルゴールぐらいしか思いつきませんが。


取り敢えず、バッグをあさると、中からは見覚えのない、赤い紐に括られた銀色に鈍く輝くサクランボのような金属の塊がありました。不自然に空いた穴から中に同じ素材で出来た丸い球が入っていることが見え、揺れるとその球が擦れ合って音が鳴ることが分かりました。


しかし、今は風もなく、揺らしている訳でもないのに、ひとりでにチリン、チリンと音を鳴らしています。


「何だか、お茶会の時に大樹にぶら下がっていた民芸品と似ていますね」


「それは鈴ね。お姉様が言う民芸品は風鈴だと思うわ」


いつの間にか、フラッと戻ってきたカダチの説明で、初めてあの民芸品の名前を知りました。


フウリン、なんだか爽やかなで凛としているものの、確かに強かそうな響きですね。フウリンから鳴る音ともマッチしています。


さて、しかしどうしてそんなものが私のバッグに入っていたのでしょう。


その理由を知るためには、スズと一緒に入っていた小さく折りたたまれた手紙を読む必要があると思ったのですが、……案の定、読めませんね。トネリカ風というか、トネリカ流というか、トネリカ訛り、の方が合っていますね。とにかく、トネリカ訛りの文調で書かれており、やはり私には読むことが出来ないということ。


カダチに読んでもらおうかと、手紙を元の二つ折りにした時、ディールスが何も言わずに片手を差し出してきました。”貸せ”、いえ、彼風に言うのなら”貸してください”ですかね。まぁ、読んでいただけるのなら、別にどちらでも変わりませんし。


彼の手にそっと置くと、彼は何かを言う訳でもなく、ただ手紙を開いて、おそらく書かれた通りに読み上げました。


『手がかりも無く、一番目のディディ――、いや、”宝石職人”を探すのは難儀だろう?ワタシからささやかな贈り物だよ。それには呪い(まじない)が掛けてあってね。それは元々二つで一つの鈴。その鈴ともう一つは(えにし)が繋がっているのさ。一つはアンタに、もう一つはそいつに忍ばせてある。近付けば音が鳴る、……はず。これで少しは探しやすくなると思うよさ。精々頑張んなさいな』


彼の『魔術師』の口調は、なかなかに普段とのギャップがあって面白かったです。

それはそれとして、


「結構近くに居るということですか」


「そのようですね。すぐにでも会いに行きたいところですが、レディ・リディア、一つ、約束してください」


「?」


「貴方は決して、一番の顔を見ないでください」


「どうして?」


「簡単です。——貴方が壊れるから」


壊れる?顔を見ただけで?そんな恐ろしい顔なのでしょうか?


今まで、数々の修羅場を潜ってきた私が、そんなことで精神崩壊するとは驕りでも思いません。もうこの心はガラスと言うにはいささか頑強になりすぎたかと。しかし、彼がそう言うのなら、そうなのでしょう。


何より、心配してくれていることは十分伝わったので。


「えぇ、一旦分かりました」


「お、終わったかい?ちょうど落書きも終わったトコだし、誰に付いて行って、何をすれば良い?」


「二度手間なので、次はちゃんと聞いてください。ハッキリ言って面倒です」


「あら、オーウィル。あたし知らなかったのよ。そんなに人生に絶望していたのね。お姉様とお兄様の手を煩わせるのなら、お望み通り八つ裂きにしてあげるわ」


「おれは別に、そういうのはそっちに任せるよ。あと八つ裂きは勘弁」


「それでも聞いていてください」


「へいへい」


いい加減な返事とは真逆に、彼が筆を走らせ、ついさっき生み出した風景画は筆舌に尽くしがたい程、とても美しく、まるで写真のようにハッキリと鮮明にこの地を封じ込めていました。……所々、雨に当たってしまっているのが残念ですが。


「あ、一つ聞いて良いかい?ディールスの旦那」


「何でしょうか?」


「いや何、別に大したことじゃない。ただ、おれさ、旦那が宙飛んだり、火出したりしたトコ見たコトないんだわ。必要がないからしてこなかっただけかと思ってたんだけどさ、もしかして他に理由あったりする?」


「理由は案外単純だったりしますよ。単に使えなくなったからです」


「使えなくなったぁ?そんなことあるのか?何でも出来る高次元で超次元の上位存在、おれの認識だとそれが神だ」


「その上位存在を、貴方達人間と同じ段位に引きずり下ろせる存在が居たのですよ」


「それは、いや、そんなこと出来るのなんてそいつは一体何者だ?」


「……今は、——いえ、今から会いに行く方ですよ」

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