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64 食事

「……君達さぁ……!そろそろ休憩とかしないのか?」


しびれを切らしたようにウィリアムが声を上げました。ルジャダから出発した日の昼、ルジャダからトネリカ聖教国への隠された一本道、獣道のような草の生い茂った道を進んでいる時でした。


あぁ、そういえば……。


「ウィリアム、あなた――」


「おっと、おれはウィリアムじゃないぜ。そういや、言い忘れていたな」


狭い道の端を通って列の先頭に躍り出て、誇らしげにふんぞり返って彼はこう言いました。


「おれの名前はオーウィル・オーウェン。オーウェン家の唯一の嫡男にしていずれ『司書』となる、ハズだった男」


「ずっと頭に葉っぱ付いてますよ。改めて聞くと、不思議なお名前ですね」


「え”⁉嘘……。…………だろ?そうだろう?そうだとも!お父様が酒に酔った勢いで付けたらしい。おれは気に入っているけどね」


「取れてませんよ、もっと下」


取ることを諦めたのか、怒りながら両手で雑に髪をわしゃわしゃし始めたウィリアムことオーウィル。何だか犬みたいですね。


「そ、し、て!流石にルジャダを出てもう昼過ぎになるのだが、飯は?休みは?」


「……?ウィリア……、じゃなくてオーウィルさん貧弱なんですか?」


「キジェ、そいつとは口利かない方が良いのよ。耳とか腐りそう」


「…………君なぁ……!」


先程起きたばかりのカダチのキレッキレな一言が彼を傷付けました……。耳とか、って……。


カダチって実は相当キジェのこと気に入っていますよね。多分言ったら、手の甲をつねられるので黙っておきますが。

それと同時に結構オーウィルのこと嫌っていますね。確かに彼女の周りは純粋無垢なキジェや真面目なディールスですもの。彼のようなうさん臭く、頭に血が昇りやすい噂好きで皮肉交じりの煽り言葉しか言えない男性は疎んでしまうのもまぁ、分かります。


「……カダチ、ミスター・オーウィルを虐めるのは程々にしてください。下手に刺激するのはよろしくない」


「旦那はおれのこと爆弾か何かだと思ってる⁉」


「……いえ?」


それってわざとですか?本心ですか……?彼ならどっちでもありそうですね……。

…………いえ、よくよく考えたら絶対悪意持ってますね。こういう時はわざとですよね、彼。


ここにはオーウィルに辛辣な人しか居ないのでしょうか。


「まぁいいや。おれってば普通の人間なんで、腹も空けば体力も雑魚なワケで……」


「要するに何?要領を得ない会話で時間を潰さないで」


「ちょっとカダチ、ディールスの言う通り、言い過ぎです。ダメですよ、謝ってください」


「……………………フン、ごーめーんーなーさーいー」


「……このガキ……」


いえ、こんなにも速く、きちんと言っただけ相当偉いですよ。少し前の彼女だったら、絶対に謝らなかった。


「良いのかぁ!千年に一人の天才が死ぬぞぉ!世界の手痛い損失だ‼…………腹減った」


「……あぁ、そうでした」


「そうでした⁉は⁉リディア君何その忘れてましたみたいな言い方!君達いつもご飯どうしてたんだ⁉」


「この場に居る全員、ご飯なんて要りません。夜間もほとんど寝ずに歩いていますよ」


「……罪人の方がマシな生活送ってるぜ」


……そんな深刻な顔しないでくださいよ。私も最初はディールスに付いていくのも無理でしたが、今では体力が付いてそれ程苦痛ではなくなったので。じきにあなたもこうなりますよ。


「頼むから飯食べようぜ……。餓死するって……」


「だそうですよ。どうしますか?ディ—ルス」


「仕方がありません、本当に」


「おい」


「不本意な足止めですが、川も近いですし、ご飯を作りましょうか。ミスター・キジェ、それ毒キノコなので触らないでください。何なら貴方は何もしないでください」


「え―⁉」


確かに、たまにはのんびりと羽を伸ばして休憩するのも良いかもしれませんね。

キジェ、それも毒キノコ。


        *  *  *


「ふぅー、命拾いしたぜ」


意外と森にあるものだけで、美味しい料理は作れるのですね。ためになりました。発揮される日は来ないでしょうが。


何種類もの食べれるキノコで作ったスープ(偽)。器具は全部、ディールスのトランクから出てきました。何処に入るスペースがあったのやら。

作る方に専念しつつ、人並みに食べたディールス、五杯から先は数えるのをやめたキジェ、一杯でやめた実は食べることが好きであろうカダチ、既に食べ終えたオーウィル。


いやいやだった割に、全員食事を楽しんだようでした。




それからというもの、オーウィルの加入により、私達の旅は三食が付き、程々に休憩をし、夜には寝る、人らしい旅になりました。

前と比べて掛かる日時は倍以上になったでしょう。進みは遅くなったでしょう。手間暇も比べ物にならない程増えたでしょう。——それでも、とても恵まれていましたとも。

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