表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/115

59 死の神、其の一

        *  *  *


「ちょっと~、そこの存在感がすごい君、もう閉館時間なんてとうに過ぎてるよ。あと、『司書』以外が蔵書触っちゃいけないんだぜ」


……うるさい。


神にそんなもの関係ない。むしろ、貴様のほうが規律を破っているまである。ここは彼女が我のために作ってくださった図書館だ。この図書館が立ってから、ここ千年。ずっとここは我の財産である。


不遜である。不敬である。この財産の持ち主である神を前にそのような発言は許容出来ぬ。


「うわっ、君、頭に直接響くような声してんね。というか、この辺りじゃあんま見ない服装だし、観光客?」


話を聞け、人間。人間は考える葦なぞと評されているが、貴様は例外か?


「というか、神って言った?何の神様?一旦梯子降りね?」


……彼女から生を受けた十三番目の神、死を司るモールである。


「へー、おれはラチ・オーウェン。『司書』の嫡男。ラチでいいよ。んじゃモール様。おれと勝負しないかい?おれが勝ったら、今日はこの『図書館』から出てってもらう」


くだらん。何故、我が貴様の進言を受け入れねばならぬ。本来ならば、貴様が頭を垂れて許しを請う立場である。


ラチ、と言ったな。そこの茶髪。


平服せよ。服従せよ。人は、神に生かされている。


「――自信ねぇの?」


 ——。


ほう、人間如きが物怖じせず、良くぞ吼えた。良いだろう。その蛮勇に免じて貴様の誘いに乗ってやる。


「勝負は三回。内容はこの図書館の本からクイズをお互いに出す。正解数が多い方が勝ち。ただし、解釈によって答えが変わるのはNGだな。……あと、そろそろ梯子から降りない?」


くどい。……さっさと始めるぞ。



「嘘だろ、三対一で完敗かよ……。自信あったのに、マニアックな問題出しやがって……。しかも、本を手に取ることなく問題作成から解答までしてみせやがった……」


当然である。我はここの書物の内容は全て頭に入れている。


「……ズルでは?」


いやなに、神は人間のように忘却なんぞの欠陥が無いのでな。あんなにも息巻いていたが、やはり人間相手では手を抜いた方が良かったか?


「…………もしかして、今も梯子から降りないのって見下ろしているからか?」


……さて、決着は付いた。もう干渉するでない。


「うっわ、性格悪っ⁉」




「おーい、モール様~。追い出すために今日も来たぜ~」


……その口調を改めぬか。

加えていい加減、くどいぞ。よく飽きないものだ。もう分かっただろう。


断念しろ。諦めろ。人の身では神に勝る部分は一欠けも無い。


「良いじゃねぇか。もう三ヶ月も負け続けてんだ。根は負けず嫌いの俺も、流石に一勝は上げたくもなる」


……良いだろう。こうなっては、貴様が絶望するその時まで、付き合ってやる。




「え〜、何だっけなぁ!?」


何だ、今日はもう終わりか。張り合いがないではないか。


「はぁ!?神様はちょっと待つことも出来ないんですかぁ?」


……さっさと考えろ。




「流石に今日入館した本は分かんないだろ!」


そう思うのなら出してみると良い。


「……少女向けの童話は?」


神は全能故に神である。取り零す知識も、蔵書もありはしない。


「…………ちょっと問題考え直すわ」


そうすると良い。




「モール、今日は良い問題が出来たぜ!勝てる!」


最近ではこの勝負、競る程になったな。


人間が神と並ぶ日も遠くはないかもしれぬ。いつか、我は梯子を降りて貴様と肩を並べる日が来るやもしれぬ。


貴様と勝負をする毎日を我は好ましく思っているぞ。


今日も受けて立とう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ