45 再訪
翌朝、改めてキジェとカダチには巻き込んでしまったことへの謝罪と、今日一日を自由に過ごして欲しいという旨を伝えました。
二人とも不満げな顔をして、最後まで折れてくれませんでしたが。……いえ、三人とも、ですね。
「すみませんでした」
「どうしてあなたが謝るの?」
「私のせいであなたが彼の要望に応えることになったからです」
「あなたが責任を感じることではないでしょう。良いのです、私がしたくてしていることなのですから」
責任感が強いのは悪いことではないと思いますが、ディールスは肩の力を少し抜いても良いと思います。彼もまた、私の説得に最後まで折れず、同行することになりました。
ウィリアムの家の扉に手を掛けた時、屋根に積もっていた雪が落ちました。大きな音をたてながら、滑り落ち、地面に積もった雪の中に、冬服の袖が――
走り寄り、雪を素手のまま掻き分けました。何処?何処何処何処⁉
まずい。いくら防寒しても、雪に埋もれて窒息なんてすれば意味がありません。長い日数を掛けて屋根に積もっていた雪なら尚更硬いでしょう。
四人で深い、深い雪を掻き、袖を引っ張り続けました。そしてようやく、頭と思わしき場所が見え、そこを掘り続け、埋もれていた少女を引きずり出すことが出来ました。
耳まで赤くなった顔が雪から出た瞬間、彼女は陸に打ち上げられた魚のように必死に酸素を取り込み続けました。
カダチと同じくらいの年齢の少女。蜂蜜と夕焼けを溶かしたようなニンジン色の長い髪、青白い顔、涙ぐんだ 鈍い黄色のパイライトのような瞳、紫になった唇。今は息を整えることで精一杯のようですが、年頃の女の子は砂糖菓子で出来ている、というが言葉を体現したような、カダチとはまた違う愛らしさを兼ね備えた少女でした。
「えぇっと、……は、初め、まして。助け、てくれて、あり、がとう」
まだ咳をしているが、少女は謝罪を忘れませんでした。まだ苦しいでしょうに弱弱しく笑い、こちらに気を使っています。
「ふふっ、アナタたちにびっくりして、こんな所にかくれちゃった。もうメイドにバレちゃったかと思って」
「大丈夫?どこか痛い所はありませんか?」
真っ先にキジェが声を掛けながら、手を差し伸べました。意外にも、彼は子供好きなのでしょうか。
「うん、もう平気。ありがとう」
少女は手を握り、ゆっくりと時間を掛けて立ち上がり、服に付いた雪を払いました。
「アナタたちもウィルに用事があるの?」
「ボク達、というより、リディアさんがウィルさんに頼まれ事をされたんです」
キジェがこちらに手を向けます。少女の視線がこちらに向けられたので、軽く会釈しました。
「おねえちゃん綺麗だねぇ。妖精さんみたい!」
「ふふっ、ありがとうございます。ウィリアムさんとはどのようなご関係なのですか?」
「ウィルはね、いのちのおんじんなの!昔アタシのこと助けてくれたんだ。……アナタたちもだね!」
そういうと顔の火照りがまだ治まっていない彼女は私の手を取って再び、困ったように笑いました。まだ幼い少女なのに、まるで諦めた大人みたいな笑い方。カダチの方が外見相応の笑い方をしている気がしました。




