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34 約束

ふと、広場の奥でこちらを見る少女の姿が目に入った。

彼女を待たせるのも気の毒だ。キジェに一声かけて、少女の元へ戻っていった。


「カダチ!ごめんなさい、待たせっちゃって。……先にいいかな?」


少女は黙ったまま。しかし、何処にも行かないということは、「YES」なのだろう。


「――これからは弱い所も見せて。頼って。どうか無理だけはしないで。いつもありがとう、カダチ」


腰を落として、視線を合わせる。


彼女の髪色に似合う薄緑色のベレー帽を取り出し、彼女の頭にそっと被せた。白いリボンが無くなってから、彼女の後ろ姿が何だか寂しそうだとずっと思っていたのだ。


カダチはプレゼントに一瞬、驚いた顔をしたが、すぐに表情がなくなった。何か言う訳でも、要らないと押し戻る訳でもなく、ただ、両手で存在を確認するように触っていた。


雰囲気を変えようと、チップの入ったバッグの中身を見せるように開ける。


「これだけあれば絶対足りるよね。使って頂戴」


「……使えない」


目の前の少女の言葉に言葉を失う。

何がいけなかったのだろうか。それとも、要らないお節介だっただろうか。


彼女の希望を聞かずに自分勝手に行動したことを、リディアは心から悔やんだ。


「お前が稼いだお金なのよ。横取りみたいにカダチは使えない」


目を伏せて、少女が呟く。彼女がそう言うなら、きっとどんな言葉をかけても受け取ってもらえないのだろう。


「だからっ、今度……、舞を教えて欲しい、のよ」


少女はまるで手探りで言葉を探すように、たどたどしく言葉を紡いだ。

不器用な子だ。その言葉を言うのにも、彼女なりに相当勇気が必要だっただろう。だが、彼女の口からその言葉を聞けたことが、彼女がそう思ってくれたことが、堪らなく嬉しかった。


「えぇ、もちろん」


「約束、約束よ!ぜぇったい、教えてね!」


カダチがそう言った瞬間、今まで見たことがない程華やかな笑顔を見せる。花が満開に咲き乱れるように、年相応に見える可愛らしい素敵な笑顔だった。


その笑顔を見た時、リディアは心から願った。


――あぁ、この子が笑って生きていけますように、と。

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