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97 『面影の鏡』、其の六

「それこそ、そこの『騎士』も適任者の一人だよ。『騎士』もまた、英雄の家系の者。生まれながらに、世界を救うのに適した存在であり、その血を継いでいる。彼の弓の腕前はワタシが知る中では、忖度無しに一番。それにどんな敵が現れようと、彼なら冷静に殺せる。アンタ相手であろうと、何度でも、ね」


一際強い風が吹く。髪で顔の大半が見え隠れしようが彼女はそれを気にも留めず、話し続けました。

残酷な真実ではない。何処まで行っても正論であり、覆しようのない事実。置かれた状況の再確認と、逃げ道の提示。彼女はいつだって、状況が良く見えている。


でも、おかしい。


「『騎士』!アンタはどう思う?」


『魔術師』が彼に問う。『騎士』はお菓子を食べることを止め、口元を乱暴に拭いて、彼女を見据えて真剣に言いました。


「――あんたが行けと言うなら行きます。あんたが救えというなら、世界の一つくらい救ってみせます」


「言うねぇ。流石騎士の家系の子だ。肝が据わってる、とは違うか」


『魔術師』は、私が罪悪感で苦しんでいたことを理解してくれた。理解して、共感して、慰めてくれた。それがすごく嬉しかったのに。でも、なんか今分かった。ずっと感じていた違和感。


心の奥底から、理解して、共感して、慰めてくれたけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

体の距離は近いのに、心は何処か別の所に囚われていて、こちらを見ていない。彼女が見据えているのは、私じゃない。他の誰か、だ。


だって、()()()()()”同()()”し()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

真にこの苦しみを同情するなら、この苦しみを他の誰にも与えようとしない。だって、同情した本人自身、やりたくないと痛感するから。


「さて、『騎士』はああ言った。アンタはどうする?」


意図しない彼女の言葉のお陰で、改めて思い知った。


この旅は何処まで行っても一人だ。一緒に罪を被りたい愚者は居らず、心の奥底からの共感者も、罪を赦す人も、私を好いてくれる人も居ない。パトロンなんてもっての外。親切にしてくれた人が居たのは嬉しかった。……あと、一人だけ、逃げようって言ってくれた物好きは居たなぁ。


私のことを知っている人やこの旅の全てを知る人の方が少なく、知らない彼らの中では、わがままで凶悪な悪逆非道の稀代の悪女として語られる存在なはずだ。人の噂も七十五日なんて言うけど、私の眉唾の噂は何年続くだろう?


常に旅の障害か、罪悪感が襲ってくる。気の休まる時は無いけど、前者の方が一時だけ罪悪感から逃げられるから、そっちの方が好きだ。事態はマズイはずなのに、何処か気が楽になる。


怪我をしていない時の方が珍しい。戦って普通だったら死ぬ怪我を何度も負ってきたし、凍傷で足の指が取れた。草木で脚を切ることはいつもだったし、不器用だからたまに料理なんか指を切った。

不死というのは、引っくり返せば何度でも死に近付くことが出来ることと同義だ。でも、何度でも死にかけられるのに、やり直しは出来ない。この旅は一度きり。


あぁ、そもそも、旅の始まった理由が最悪だ。個人の私怨で神を殺して、その罪を償うためよりも大切な人を取り戻すために続けている。多くの人を巻き込んで、嘘をついてきた。言い訳をするなら、私に深く関わらせないようにするためだった。


前途多難で、嫌なことばっかりで、敵が多くて、道しるべもおぼろげで、ゴールが今どうなっているか知ることは出来ない。


この旅は何処まで行っても一人だ。……そう、本当なら一人で償うべきだった。


でも、例外の存在が居る。

ディールス、キジェ、カダチ、オーウィル。


こんな未熟な私を信じて、好いて、付いて来てくれてありがとう。それが、どんなに嬉しかったか、あなた達はきっと知らない。いえ、知られなくて良いです。


だからせめて、あなた達の隣に立っても恥ずかしい私で居たい。かっこつけさせて。

あなた達は絶対守るけど、これからは私も傷付かないように頑張ってみるから。


「いえ、——気分が悪いので、結構です」


私は赦されません。だからといって、赦しを請わなくなる訳ではない。


そうですよ。物事を決めるのって、意外と単純で良いんです。最善を突き進むと決めた自分の信念を、信じましょう。


決して揺らがない決意の炎を、灯しましょう。もう、誰も迷わないように。

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