クリスタル・ロード 0093 お土産は宝箱
宝物庫から歩いたような、動いていないような感じで出て廊下を少し進んだかと思うと何度か辺りの様子が変わり、気付くと仲間の近くまで来ていた。
すぐそばまで行くと、向こうも気付いてこちらを見る。
「宝箱? そうよね!」
「おお!」
「・・・・・・・!!」
「やったか!?」
「そうですよ」
あとは阿鼻叫喚の大騒ぎで、しばらく話が出来なかった。
これは、もし全部を見せたらショック死するな、・・見せないけど。
これこれ、お金をばら撒かないように。
一枚でも無くしたらもったいないんだから。
自分は冷静に、魔物など来ないか見張っていよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「落ち着きましたか?」
皆、ハアハアゼイゼイと息を切らしている、騒ぎすぎて呼吸の不足だ。
「「「「な、なんとか・・」」」」
「何でネビィは冷静なの?」
「向こうで騒いで来たので」
嘘だけど、 それは一部だからね。
「これだけあれば俺達一生分だよな」
「領主にも取られるが、まあそうだろうなこれほどあれば」
「ね~~~~」
「そうですね」
「じゃあこれで、取りあえず戻りますか? トラブル有ると困るし」
「そうだな、そうしよう」
「賛成~~ ♪」
皆納得し、戻ることになった。
あの黒い信徒の事は何て話すかと考えながら。
帰りは何事も無く、来た道を辿っていくだけだ。
杖が大方導いてくれた。
一層にたどり着いて他の人達と話すと思ったより時間がたっていた。
あの迷った時から時間が少しずれているようだ。
あれは時をも超えていたのだろうか?
あの宝物庫へは杖が無いとたどり着けないのか・・・・、場所も時も?
そうでないと困るか? 偶然でも、見られるとまずいからな。
一晩以上過ぎていて、転移盤の準備が出来たそうだ。
すぐ街に戻れるという。
「じゃあ戻るでいいか?」
「賛成~~~! 帰って野菜いっぱいのご飯~~~、スープ」
「果物とお風呂も~~~ですね ♪」
「はいはい」
転移盤の出口は領主の城だった。
荷物も一緒に転移できた、あの宝箱もだ。
領主に見せると驚かれたが、それより書物の方が重要らしく目の色が変わった。
始めに見つけた書庫より、杖に導かれた部屋の方が良い物があるようだ。
調べるのは領主と専門家に任せよう。
宝物は2割を税金として取られたが、後は自分達のだ。
本来はもっと取られるが、書庫を見つけた報奨で2割に減額となった。
「「「「やった~~~~」」」」
4人は大喜びである。
しかし杖は渡せない、これは自分を主としたので隠しておいた。
様々なアイテムは後でまとめて鑑定し、払ってくれるそうだ。
その分だけでもかなりの額だろうから楽しみである。
などと喜んでいたが、確かこちらでトラブルが起きていたのではなかったか?
母さんは? リーシャ達は無事なのか? 父さんは・・まあ大丈夫として。
「そういえばその件があったな」
「すぐ帰りましょう、無事だとは思いますけど」
「そうだね」
急いで馬車で帰ることにした。
もちろんお宝は忘れずに、お土産でもあるから。
************************************
「「「おかえり~」」」
母さんとムーアさん、リーシャが出迎えてくれる。
リーシャの母さんも無事だそうで、何事も無く良かった。
街で被害者が数人出たそうだがここは父さん達が警戒しているからだろう。
ムーアさんの結界も有るしな、ほっとした。
お宝を見せると、皆、息をのんだ。
税金で2割減っているとはいえ、かなりの量だし。
4人組と等分しようと思っていたが、彼らは少なめで良いという。
「見つけたのはネビィだしな、俺達は3割ってとこか?」
「うむ、危うく殺られるところを救われたし、そうだな」
「そうだね、3割もらえればね」
「賛成です」
「本当にいいんですか?」
冒険者には彼らの矜持が有るという、それを守りたいとは・・・。
後はムーアさんやリーシャの家へ分けることになった。
リーシャは慌てて先生を呼びに行った。
あちらには宝石もいくつかあげようか?
母さんにもな。




