クリスタル・ロード 0088 更に下の階層へ
杖の材質は金属だろうか? でも鉄ではなく錆は無いし軽い方だ。
長さは1mほどか、フレアの物より短いが全体に高級感があり貴族か司祭の物かのようだし頭には鳥の精密な彫刻が付いている。
しかも威圧するような存在感がある。
「どんな力があるんでしょうね、試してみたいですけど私では無理だし・・」
フレアは笑顔で期待するように囁き、遠慮がちに見つめている。
「それ私でも感じるよ、何かすっごい能力ありそう」
ジョーイまで目を輝かせている。
「おいおい、ここで試そうとするなよ、遺跡が崩れると洒落にならんぞ」
「しませんよ、大丈夫」
大体、使い方がわからないし。
「先生なら使えるかしらね、帰ってから見てもらいましょう」
しかし、意志が有るらしいのにあれから話しかけてこない。
こちらから話すべきなのか? だがむやみに話して暴走されるとまずいな。
怒らせたらどうなるやら・・・・。
この杖の前の主はどんな人だったのだろう?
こんな良い杖をなぜ置いていったのか?
書物も・・・。
しかもこの部屋は二重に隠されていた。
一体どんな人だったのか?
それなりの地位の方だったと思うのに、上流階級の階層ではなかったようだし謎だ。
書物の中に手がかりになりそうなものが有るだろうか?
でも古代語では自分には読めないし。
グラナダさん達、呪術師になら読めるだろうか。
領主に渡す前にあの人達に見てもらいたいな。
「これで荷物全部だよね」
「そうだな、では移動するか」
考え事をしているうちに積み込みが終わったようで、部屋はカラになっている。
では行くか? いいかな?
そう思うと、杖が一瞬悲しんだような気がした。
声は聞こえなかったので、自分の思い込みかもしれないが。
今度はグロフがゴーレムを操り、進んで行く。
荷台の空きはまだあるのでもう少し探索ができるから、下の階層にも行けそうだ。
「ねえねえ、今思ったんだけど、これって階段の上り下りできるのかな?」
「そ、それもそうだな、階段か? 階段な・・・ う~ん」
「もっともだな、考えなかったが・・斜面ならまだしも階段か? どうするか」
「私が魔法で下ろしましょうか?」
「「フレアが微妙な制御を? ・・・・・無理だろ?」」
「ひっくり返りそう・・・・・」
「みんな、ずいぶんな言いようですね (# ゜Д゜) 」
フレアが出来るかはともかくとして、確かにこれは階段不可なのか?
でもこれほどの道具を作る技術を持って、階段を使えないのだろうか?
どうにも納得いかないんだが・・・・・。
「じゃ、試しに降りてみますか?」
予定を変更して下の階層へ向かってみることになった。
階段のある方へ行き、そこから降りられるかの実験だ。
それともこのような大きい物を下ろせる仕掛けでもあるのではと思う。
有るとすれば階段の近くのはず、その方が街として効率的な構造だから。
階段が見えた。
近くには・・・それらしい物は有るだろうか?
壁に目立たない線がある、これだろうか?
降りて壁をよく見ると押せそうなところがあり、触れると凹んで壁が動いた。
「開いた!」
「「へえ!? 」」
そこは広めの部屋だが何も置いていなく、床に大きな円盤のような部分が2か所ある。
何やら図や文字が有るが読めないのは今まで通りだ。
でも意味がなんとなく分かった。
一度皆降りてカラの台車で試すことにしてそこへ押していき、ゆっくり乗せた。
すると円盤部が分割されながら沈んで行き、大きな螺旋階段のように変形し台車を回転させながら下ろしていく。
「やっぱりか!」
「へえ~ ! こんな仕組みがあったんだ」
「なるほどな、ネビィ、よくわかったな?」
「ほんと、すご~い!」
「あらあら」
「自分達も降りますか?」
「そうだな」
「行こう、行こう!」
まだ2層を全部見たわけではないが、皆ついでに降りたくなったようだ。
台車もゴーレムも乗せるが、問題なく皆降りていく。
もう一つの円盤は上りかな?
それにしても動力は何なのか、とても静かに動いている。
下の階層が見えてくると、やはり上より上流の環境なのが感じられる。
壁や床の艶や深みが違う、そろそろ貴族用の地区だろうか。
着いて部屋を出るとなおさらそれを感じた。
雰囲気が違う、通路の広さや明かりも厳かになっている。
「へえ~、 ここいいね~」
「住みたいですね、こんな所に ♪」
しかしそう言って見とれていると、通路の先に人影が見えた。
フードを被って顔が見えない一人が。




