クリスタル・ロード 0076 遺跡の不思議
そこには金銀財宝も彫刻も無く、贅を尽くした場所ではなかった。
ただ厳かな様子で神秘的というのか、正面奥の上から光がカーテンと霧のように広がり動いていて、風が僅かに吹いてくるような気がする。
温かいような涼しいような微妙な肌触りで、空気が動く。
奥からの光はまるで天から来ているような感じがするし、清浄さが際立たせ言われずともそこが神聖な場所として使われていたことを想像させる。
「これは何とも・・・・凄いですね、これほどの教会は初めて見ましたよ」
フレアがようやく口を開いた。
宗教を象徴するものが無いが、そうとしか思えない佇まいである。
「ここも素材や仕組みが不明だが、他とは手の掛け方が段違いだな」
グロフがあちこちをじっと見つめながら歩くが、仕掛けはわからないようだ。
奥へ行くと床が数段分高くなっていて、上がるとそこが更に明るくなった。
舞台で照らされているかのようだ。
床にマークのような紋が有ったので何か意味があるかと触れるとその部分がゆっくりとせり上がって来て胸のあたりで止まった。
講演台のようだ、たぶんそうなのだろう。
「あらネビィ、牧師様のようね」
「へえ、ホントいろんなしかけあるんだねえ」
フレアとジョーイが見上げて面白そうに言うが、こちらは台の上の仕掛けが気になるのだ。
それはやや膨らんだ円盤状の水晶だろうか、魔法陣のようなものが描かれていて、見る角度により紋が違って見える不思議な加工がしてある。
触っていいのだろうかと思いつつ、触れてしまうと台の両脇に文字が現れた。
しかし古代文字なので読めない。
そう思った瞬間意味が頭に入って来て、使い方がなんとなくわかった。
表示の片側は強さだの体力だのが示されて、もう片方は特別な力を付けるための仕組みとなっている。
しかしこちらを使うには他の物?を必要とするようだ。
それは・・魔石かコインのようなものだが、なにかイメージがはっきりしない。
古代文明にしか無い物だろうか?
それはどこにあるんだろう? 魔物を倒しても出てこなかったしな。
それを皆に話したが何だかわからないようだ、それはそうか。
「たぶん、報奨のような物でしょうね、メダルとか」
「へえ、それがあると特別な能力が付くんだ、いいね! 探そうー !!」
「なるほど、それも宝だな、それにしてもここは色々あるな」
「でも他のパーティに取られるとまずいよね、独占したいところね」
それはそうだがどうやってと思ったら、あれがあったか!
ムーアさんから貰った結界の札があったのだ。
教会から出てドアに札を張っておく、これで他の人には見えないはずだ。
「では行くか!、しかしどこを探せばいいのやら」
「魔石でないなら、造られた物かしら? だとしたら与えるのは人? どんな?」
「牧師とは別の人? それなりの権威? ギルドのような軍隊のような?」
「そうだろな、報奨を与える人がいて、それを教会に持っていくと能力を得る・か」
「とにかく探しましょう、大体はわかったし後は探すしか」
「そうだな、それしかない」
後は皆でひたすら歩きまわってそれを探すが、やはり魔物は出るし、他の物も色々見つけるのでなかなか進まない。
マッピングもしなければならないから、手分けして行うことになった。
やはり魔物を倒しても報奨が出ることは無い。
それにふと思ったが、ここは魔物がいる割には荒らされていない。
崩れたり割れたりしたところが無いのが不思議だ。
この街は破壊を防ぐ機能でもあるのだろうか?
それとも魔物との関係性なのか、街を壊さない習性でもあるのか?
そんな謎がある・・・・ この遺跡は本当に不思議な場所だ。




