クリスタル・ロード 0075 下の階層へ
遺跡に金属的な音が響くが、相手は金属ではない。
だが堅くて刃が弾かれる、動きは遅いがとんでもない防御力だ。
しかも体力が有るのか、まるでひるまず向かって来る。
「矢も弾かれるよ」
「物理攻撃はだめか、魔法ならどうにかなるかな?」
「火炎魔法はダメだぞ!、地下なんだから」
地下だと空気やガスの問題があるか、それなら・・
「水はどうですか? 水で覆っておぼれさせるのは?」
「フレアの魔法はパワーがあるが、制御が苦手でな、無理だ!」
「そうなの、ごめんなさいね」
だとすると、どうするか?
「爆弾を使うのは? 」
「遺跡が崩れるとまずいぞ、ここはまだしも下の階層がやられると」
痺れ薬入りの煙幕は・・・自分らもやられそうか、屋内だし。
剣を振るいながら、急所は無いかと探すがまるで刃が通らず跳ね返される。
「どうすればいいの~?」
早くしないと皆のスタミナが切れる、何か方法は? と焦って来る。
何か方法は? 何か? そう思っていたら一つだけ思いついた。
先ほど見つけた剣、不思議な素材の剣があったのだ。
荷物から取り出して鞘から抜くと、やはり妙な色で輝いている。
魔物に向かって軽く斬りかかると、ジンッ と変わった音がして、手ごたえも
不思議な感じだった。
斬れたのか? と思うとそこから青い血が噴き出した。
「「「斬れた?!」」」
自分も驚いたが、皆驚いている。
軽く振っただけなのに、あっさりと斬れた、さっきまでが嘘のように。
刃を見るが、欠けている様子は無い、これなら全力で問題ないだろう。
魔物の首を狙って振り切ると今度は首が落ちた。
これならいける!
次々に首を狙って振り切っていき、全てを倒すことが出来た。
剣を振って血を落として鞘に納めると、皆茫然として見つめている。
剣の事を説明すると皆ようやく納得したようだ。
「やっぱりここの物はお宝だな、剣さえ普通と違う、こりゃどれほど金になるか」
「でも他のパーティは大丈夫かな? こんなのがいるんじゃ」
「他を心配してもしょうがない、自分らが生き残らないとな」
「そうですね、でもここの宝持ち出すのは大変そう、何度も来ないと」
確かに、この量では馬車でもないと何度になるか気が遠くなる。
それに本当に探しているのは呪術の本なのだ。
「これはよほどいい物だけ持って、後は記録に徹しながら探索だな」
「じゃあ、そろそろ降りますか? ここのはとりあえず置いといて」
「そうするか、それに俺達もいい武器を探すのが良さそうだ」
「全くだ、そちらを優先するか」
レフ達もこんな武器を持ったら、かなりの戦力アップだろう。
下ではどれほどの魔物が出るかもわからないし、その方がいい。
でもあの武器庫で珍しく感じたのはこれだけだった。
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階段を下りていくと、どこからか水の音がしている。
「川か? こんな所に?」
音に向かって歩いていくと、細い水路が有り、その先には噴水がある。
しかも小さな音で鐘が鳴っている、 仕掛けがあるようだ。
「いい雰囲気ですね、貴族の区画でしょうか?」
「ずいぶん早くないか? 一つ降りただけで・・・」
「でも上層よりは良さそうですよ、床や壁も質が上みたいですし」
艶のある素材で、装飾的な明かりもある・・仕組みがわからないが。
そして噴水の先には、厳かな雰囲気の区画がある、あれはどこかで見た?
「あれ、教会かしら?」
そうだ、教会の感じに近いのだ、装飾は違うが雰囲気が。
「行ってみるか」
レフが先頭に立って向かうと、両側からコロ~ン コロ~ンと控えめに金の音がした。
まるで迎えられているようだが、人影は無い、 これも仕掛けなのだろう。
少し階段を上がると両開きの大きな扉が有り、細かい装飾付きで、不思議な質感で輝いているが、金属のような陶器のような妙な手触りだ。
それは軋むことなく、触れただけで滑らかに開いていく。
奥からさわやかな空気が漂って来るかのようだった。
締めきってあったはずなのに、そこの方が良い空気かと思うほどなのだから。
「これは・・・・・」
フレアがそう言って茫然としているが、無理からぬことだ。
元貴族のフレアさえ茫然とするその場所は、空気も光も外とはまるで違っていた。




