クリスタル・ロード 0072 遺跡探索
冒険者の一団が山間の地に向かっている。
総勢50名ほどだろうか、領主の肝いりなので報酬が高めでこの数となったが、危険度は不明なので割に合うかはわからない。
道案内は4人組で、そこに自分も加わり先頭を進んでいる。
装甲馬車に5人が乗って、グロフとレフが御者台に座る。
早朝に出発し、遅くとも夕方には着くとのことで、それ程遠くない所だ。
「あんなとこにお宝なんてあるのかね」
等のレフが言う、確かに本当に探すのは宝ではないけどね。
「でも前にネックレスは見つけたし、本格的に探せばあるんじゃない?」
「そうですよね、前は地表を少し見ただけだし、潜れば宝飾がいっぱいかも」
女性陣は金の装飾などお望みのようだ。
「ダンジョンがあるとしてもどこから入るかだよな、前は入り口らしき場所は無かったしな」
「それに関しては、探索の専門家がいるそうですよ」
実は領主がダンジョン探索や遺跡に詳しい人など、一団に加えているのだ。
そして呪術の記録などを探す担当も冒険者に扮して入っているそうで、自分はその人等と協力することになっている。
つまりお宝に惑わされずに探すのが任務の仲間である。
「そうか、そっちは任せときゃいいんだな」
「そうだな、こちらはそこまでの案内だ・・・ ここから右奥だったか?」
「そうそう、この先に小川があったはずだよ」
そうしてそこから2時間ほどで現場に着いた。
左右には山が数百メートル離れてあり、そちらは木もあるが、ここは大きな岩がごろごろしていて辺りは丈の長い草が伸びて、見通しが悪い。
一団は馬車や馬から降りて伸びをする、少し疲れたが、すぐ探し始めないと。
「明日からと言いたいところだが、領主様がお急ぎなんだよな」
「そりゃそうですよ、お宝の噂が広まれば他の街からも来るだろうし、取られてしまいますからね」
「ネックレスを見つけたのはあの岩のあたりだったっけ? 草が伸びてわからなくなっちゃったね」
「前はこれほどじゃなかったんですけどね」
そう話していたら、すぐ後ろにいたリーダー役の人が来た。
「じゃあ、ここを中心として捜索を始めようか? みんな取りあえずあたりの草を刈ってくれ、遺跡や入り口らしき物を見たら報告の事! では作業開始!」
休む間もなく捜索が開始されたが、お宝目当てとあって皆文句を言わない。
なるほど、そのための名目かと少し感心する。
「この草、全部刈るの?」
「いっそ燃やしちゃいましょうか? 火魔法で一気に!」
「火事になるとやばいだろ、水魔法で消したって遺跡が埋まりそうだ」
などと不穏な事を言いながらも作業が続く。
それから数時間後、遺跡の入り口らしき部分が見つかった。
その頃には日が傾いて夕方近くなっていた。
そこは3mほどの大きな岩の下の地面が少し崩れて穴になっていたが小さく、細い人がギリギリ通れるかの程度だ。
「穴を広げるから、皆離れていてくれ、爆破する!」
リーダーがそう言うと、すぐ担当者?が手際よく準備を始めていく。
領主の部下の一人だろう。
「もう入るのか? 今日は徹夜作業かな?」
「徹夜まではしないだろうが、野営にしても外より安全だろうし、取りあえずは入るだろうな」
レフとグロフはそう言うが、街に迫る危険を考えるとかなり急ぐかなと思う。
リーシャたちは大丈夫だろうか?
あちらは領主や衛士がいるから問題ないとは思うが。
ドン! と音が響き土煙が上がると、どよめきが広がり皆が集まっていく。
そこには大きな穴が開き、石造りの通路が左右に伸びている。
遺跡のようだと、歓声が上がる。
まず斥候役が調べると、皆が続いて降りていく。
グロフたちと自分も続くと、中は思ったより広く通路というより部屋のようだ。
しっかりとした造りで、入り口以外崩れた所は無く整っている。
これなら野営には十分な広さだろう。
「では皆、休憩と食事の準備開始、それと各チームから1名づつ周辺の探索を少しだけ頼む、100mほどでいいから、罠に注意してな!」
リーダーがすぐにそう言った。
自分が行こうとすると、ジョーイが立ち上がった。
「私行くよ! ご飯の準備よろしくね♪ 」
「やばくなったら逃げろよ」
「では私が火を起こしますね」
「じゃ、自分は食材を切りますか」
すぐに探索に行きたいが、食べないわけにはいかないし仕方ないか。
辺りから徐々に料理の匂いが広がり始めた。
探索前のひと時の安らぎだ。
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そして約1時間後、休憩が終わり探索開始となった。
今のところは魔物などの危険は無いそうだが、この先はどうなるか。
ダンジョンというより、遺跡、地下の街の様で広そうな所だ。
よくこれほどの場所が崩れずに残っていると思う。
よほどの技術なのか、そのあたりも調べたいがそんな時間はなさそうなのが惜しい。




