クリスタル・ロード 0007 実戦投入!
彼らは沢を登り出したが冒険者の割には遅く、もどかしい。
体を鍛えていないの?
目を移すと魔物がゆっくり動き出している もう回復したのか?
それを伝えて急かしても、皆たいして違わない。
足を滑らせて焦っているだけのようだ。
雷玉は残り1つ、いつでも投げられるよう握ってはいるが魔物が近づく。
と、そのとき一人が荷物を落とし、岩で止まった革袋から動く物が出て来た。
獣?だろうか、手の平に乗る程度の小さいものだが。
落とした男は慌てて拾うが、もう皆に見られている
。
「ちょっと、それ持ってきたの! バカー!!」と、女の子が叫ぶ。
「そ、そんな、だから追われてるのね」
お嬢様風の子が言った。
すると、しんがりの大きな男が身を乗り出し長い槍を向けて、荷を落とした男の顎の下に先を当てて言った。
「すぐに放さなければ、お前ごと下に放るぞ」
顔が怖い。
「わ、わかったよ」
袋ごと軽く投げると斜面を転がってすぐ小さな木に引っ掛かりモゾモゾと出ると、小さいながらも元気に駆け下りて言った。
そうか、あの魔物の子供なのか! だからこんなところまで追って来たと。
なんて事を! 街まで来たらどうする気だったのか?
「何考えてるの! おかげで死ぬとこだったでしょ」
「だからこんな所まで来たの、どうりで・・・・・・」
疲れたお嬢様の溜息。
「金になると思ったんだよ! 今回獲物が少なかったからな、これぐらいと」
「ここまでバカとは思わなかったぞ」
まだ言い合っている。
けど、まだ安心はできない 魔物がこれで帰るとは限らないのだ。
そう言ってさらに急かして登らせ、街まで彼らを追い立てて走らせて街の門にたどり着いたときは皆、疲労困憊だった。
すぐに衛士に説明し門を閉めてもらうと、警戒を知らせる笛の音が街の中へと伝わっていった。
つ、疲れた・・・ 自分も限界、 呼吸だけで精一杯。
そこへ 「おーい、何の騒ぎだ」と、父さんがやって来た。
・・・・・これって、怒られる流れ?
怒られました ・・あの4人組、特に袋を落とした一人が。
仲間3人からも責められ、まさに袋叩き状態。
自分は状況を聞かれたが無罪放免、 助かった。
父さんは護衛騎士の一員なので今日は残業になりそうだ。
彼らは罰金刑になるらしい・・お気の毒に。
翌日、街中で彼らにばったりと出くわした。
一晩立って3人は元気になっているが、あと一人はかなり絞られたのかぐったりとしている。
3人からあの光玉は何だとか何処で買ったとか、いろいろ聞かれたうえ、お礼がしたいからと強引にレストランへ連れ込まれた。
まるで誘拐だ。