クリスタル・ロード 0066 あいつらは何だ?
尾行開始である。
失踪につながりそうな人物、ここで逃すわけにはいかない。
ギルドから出て街の中心部へと向かっている。
距離をなるべく開けて、のんびり歩くふりをしながら付いていくが、相手は全く警戒心が無い様なので楽である。
この人は単なる友人で、失踪には関係なさそうだ。
街の中心部を抜けて反対側に行き、徐々に人が少なくなっていく。
やがて一軒の小さな家にたどり着いた。
離れて様子を見ていると、彼はドアをノックししばらく待っていたが留守の様で誰も出てこないので、どうするか迷っているようだ。
見上げて二階を見たり、窓を見、そのうち家の横へ回って、入れるところか中を見られるところを探しているのでは?
気付かれないように隠れながら、距離を詰めていくと声が聞こえて来た。
「変だな、この時間ならいるはずなのに・・」
そんなことを言いながら、家の周りを歩いている。
裏口まで来ると、ドアの横にあるタルをずらし、何かを拾っている。
「あった あった」
どうも鍵の様で、それでドアを開けて入っていく。
まあ友達らしいからいいか。
更に近づいて家のそばまで行き、気配を探ってみると、・・・?
彼の他に誰かいるような感じがする。
しかし、呼んでも誰も出なかったはずだが。
家主(友達)は、寝ていたのだろうか?
そう思いながら聞き耳を立てていると、ドスっと音がしてから小さな音が続く。
まるで人が倒れたような?・・・・。
そうして小さな声がするが聞き取れない・・・・二人で話しているのだろうか?
どうも不穏な空気である。
常に武器は携帯しているので、用意をしておこう。
屋内なのでリーチの短めの物がいいだろうと思うが、二人相手か?
ならばヌンチャクに近い物を2本だ。
あの人が倒されたとすれば、命が危ういので仕方なく進む。
違ったなら逃げるか?
声が更に聞こえてくると、少し慌てているようだ。
「邪魔が入ったな、まったく」
「こいつはどうする? 運び出すか?、それとも」
「ここでは使えない、不純物だ!、運ばなけりゃならん」
不純物? 何のことやら・・・。
見つからないように、そっと彼らの近くまで行き、ドアの隙間から見ると倒れた人と
他の二人の足が見えたが、上半身は隠れていて見えない。
しかしそれより気になるものが有った。
妙な文様の描かれた布が、床や壁に貼られているのだ。
あれは一体なんだ?
その時倒れていた人が声を出して動いた。
まだ生きている!
しかしそれはいいが、今起きるのはタイミングが悪い、敵を刺激しそうだ。
案の定、棍棒を振り上げ殴ろうとしている。
仕方なく飛び込む事にし、ドアに体当たりをする。
敵は二人、こちらは両手に武器を持っているので仕留められると思ったが、少し誤算があってもう一人いた、それも大きくごつい男だ。
3人の目がこちらに向く。
一人が即座に反応し、こちらに何か投げつけて来た。
黒い糸のようなものが数十本広がるが、何だ?! 網か?
武器で絡めるようにするが、ねばつくように巻かれ、しかも丈夫だ。
引っ張るが切れない。
とっさに袖からナイフを出して切ると、次は大男が動いた。
捕まえようと腕を伸ばしてきたので、しゃがんで脛を一撃する。
「あうっつ」
「サンド!」
他の二人には魔法で砂をかけ、目つぶしをする。
「「うおっ」」
大男は足を抱えてしゃがんだので、両手の打撃武器で肩に打ち込む。
ゴスッと音がした。
普通なら鎖骨が折れるはずだが、手ごたえが違う? 折れていないか?
「ちっ」
舌打ちと共に最初の男が別の物を床に叩きつけると黒い煙が広がる。
「出るぞ!」と叫び、すぐに部屋に充満した煙の中を走っていく。
煙の中、ナイフを足元目がけて投げるが、3人とも遠ざかって行く。
その時煙の刺激臭に気付いた。
これはたぶん毒入りだ。
倒れている人を置いていけば、死んでしまうだろう。
追いかけるわけにはいかないか。
抱えて避難すると、すぐに衛士用の笛を吹いた。
すぐに衛士隊がやって来るだろう。




