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クリスタル・ロード ~失われない大国の王を目指して~ 【22000PVを感謝します】  作者: 前田  裕也
2 目覚めの章

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クリスタル・ロード 0054  地脈と風水

 翌日、家の近くで露天商さんと出くわした。


「あれ? なぜここに」

いつもは街中で突然現れるのに、普通に歩いているぞ。


 「おっはよう! この間はお土産ありがとね~」

「ああ、いえいえ 今日はなにか?」


父さんへの品物だろうか? また変な物買ったかな?


「 あ~ それがね、ちょっとややこしい話で・・・」

少し言いにくそうにしているが、何だろう、自分への売り込みだろうか。


「あ、もしかして、前に冒険者4人組の見つけた首飾りの事かな?」

しばらく預かっておくと言っていたものだが。    


「うん、それも有るんだ、それでどこかで落ち着いて話せないかな、時間ある?」

「それじゃあ、自分の部屋で?」


珍しく真面目な話のようだ、差し迫っているのか?

「上がりこむのは気が引けるかな、お母さんもいるよね?」


ああ、女を連れ込んだように思われるかな? なるほどそれはまずいかな。


 では少し離れた所に軽食屋があるのでと、そこでと二人で向かうことにした。


 「ねね、前に渡した災い感知のあれ、使い方わかった?」

「ああ、うん、これね!」


取り出そうとすると慌てたように止められた。


「ちょ、ちょっと、出さないで、だめ!」

「? ?」   


 「これ実は、やばいのよ、秘伝の物なの、秘密よ秘密!」

「あ、そうだったんだ、知らなかった」


何度も人前で出した気がするが、今更仕方ないか、黙っていよう。


「大体の方角や、距離はわかったと思うけど、程度は今一つかな? それに小さく出たと思ったら消えてしまうこともあって、あれの意味が?」


 「あ~、それは不安定なことも有るからね、状況が変わるし、他の要素も有るし」

「他の要素? ・・・」


「もっと大きなことが起きるとか、地脈が変動とか」

「地脈? なんですか?」


「聞いたことないかな、魔力だって似たようなことだけど、生命力をつかさどる力が地中を流れていて、動植物へ影響とか」


 「そうか、そんなのがあったような?」

向こうの世でも、地脈だか龍脈だとかあったか、怪しい話とは思ったが。


 店に入ると、まだ昼前なので他に客がいない。

奥の席に座る。


「何か食べる? おごるよ、お土産もらったし 好きなの頼んでよ」

「昼には少し早いし、パンと果実水でも・・・」

「じゃ、私もそれで」


 ここにもリーシャ考案のパンが来ているのか、見覚えのある物が出される。


「ちょっと変わったパンだけど、美味しそうだね」

そうだろう、そうだろう、自分も関わってるのだ、たんと食べなさい。    


 「それでね、どこまで話したっけ? 地脈・・かな?」

「はいはい、その地脈が?」


「地脈が災いに影響、つまり動物や人間に作用して問題を起こすって説があってね」

「はあ」


風水(ふうすい)というのは聞いたことがあるが、あれと似てるのか?


 「今持っているあれは、軽く感知する程度なんだけど、本来はね・・」

そう言って、前かがみになり声が小さくなる。


「本来は、大掛かりな物で、ずっと広い範囲で、数か月先の災いを知る技術なの」


「大がかり?」

こちらも声を小さくする、やばい話らしく、店員を横目で見ながら。


 「そうよ、元々は国の行く末を探る為の術でね、国家機密の事案だからね」   

「なるほど、戦に使えるということで」


占星術が使われたこともあるとか、政治がからむと何かと厄介になる。


「私はそんなことに関わりたくないのね、そのせいで国に幽閉された人とか争いに巻き込まれて一族皆殺しなんて歴史もあったしね」


 ここで凄く嫌な顔で、果実水をあおる、本来は酒を飲みたいのでは?


「だから誰にも言わないでよ、言ったのは君だけだからね? 秘密よ!」

「なるほど、 でも、そんな大事なことを何で・・教えてくれたんですか?」


ここで、迷っているように眉間にしわを寄せ、手を当てて黙っている。


 「それね、君には何かを・・・感じるのよ、普通と違う魂を・・ね」

「魂?」 ドキリとする、何度か言われたことだ。   


「予言も有るんだ、大いなる災いに対し現れる、特別な魂うんぬん・・ってね」


特別な魂・・・ 自分か?

考えてみると自分がここに来たのは、神が自分の為にしてくれたとは限らないか、それはうぬぼれなのか?  何か役目があると考えるべきなのか?


 「魂、魂か・・そういえば隣町のお婆さんにもそんな事言われたか・・」

「え!? 」


なぜか目を見開いて、驚いて?いる。

「魂がずれてる、とかなんとか、言ってたな、直したとも」


 「ええ? 隣町? お婆さん?  ホントに?・・・・」

「確か、呪術師? だとか言ってたような?」


 目を見開いたまま、硬直しているようだが、何だろう、 知り合いで?   


「その人、マギアって言ってなかった? マギア・グラナダって?」

「ああ、確かそんな名前で・・」


 ここでお姉さんはずいぶん顔色が悪いことに気付いた。


「お知合いですか?」

一応聞くが、どうも嫌な相手らしいのは想像がつく。


「隣街? 隣町にいるの?」

「はい」


「この街に来るって言ってた? 来るの?!」


両腕を掴むように言われた。

少し声が大きくなっていて、店員がいぶかしげに見ている。


 「声が大きいですよ、 ここへ来るとは言ってませんでした」

「あ、そう?」

 

少し安心したようだ、力が緩む。   

「しばらくはあの街にいるそうですが、数日かも?」


 「・・・・・・・・・・・・・」

何やら悩んでいるようだが、聞くべきか、否か?  触れない方がいいのか?


 「露店はまずいかな? 来たらすぐ見つかる? 他の街へ行くか? でもそこへ来たらどうする?  隠れるか? どこへ?」


ずいぶん悩んでおられるようだ、なんて声をかけるべきか?


「お願い! (かくま)って、君の家で私を雇って!」



妙な事を言い出したぞ・・・・。




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