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クリスタル・ロード ~失われない大国の王を目指して~ 【22000PVを感謝します】  作者: 前田  裕也
2 目覚めの章

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クリスタル・ロード 0051  衛士隊本部へ

 宿屋での訓練を見られていた?


なんで? 父さんは寝ていたはず 音で起きたのか?

なるべく静かにやっていたつもりだが、甘かったか?、 剣の音には敏感か。


 まさか見られていたとは、~~~~~ どうする?


 「そのですね、あれは・・その、適当に、でたらめなイメージでやっただけで」

「・・・・・ 違うな、あれは型になっていた、 剣筋が定まっていたのが見えた、あれがでたらめの訳が無い、達人レベルだ」


 うう~ん、やはりごまかせないか? 素人じゃないからな、無理か?


「あ、あれは・・そう、夢で見まして」

「夢?」    


「夢です、夢であの動きを見て、その動作が見事だったので真似(まね)ただけで」


「夢?  夢でだと?・・・・」


これでも騙せないかな? あながち嘘でもないんだけどな。

「夢で? 夢で見たと・・・   夢での動作・・」


 無理があるかな~  、これでだめなら何と言ったらいいのか?


「夢、そうか!」

ん?


「つまり、武芸神の降臨(こうりん)だな!」

は?  武芸神?  降臨?


「そうか、降臨とは・・・神からの祝福を賜ったか、・・・そうか」   

何か一人で納得しておられるが?   え?


「私でさえ、それは(かな)わなかったが、そうか・・・、祝福とは・・」

「・・・・・・・・・ 」


納得してくれるなら、それもいいか、 納得だよね?


「よし、それなら冒険者登録だな、それとも衛士の推薦枠か・・それもいいな」

え? 

「どうりで最近のお前の上達ぶりは目を見張った、そうか!」


 そ、そうですか、まあそうか、うん。

冒険者登録ね、それも悪くないと思う、衛士登録は? 宮仕えか・・どうだろう。

実力を認められれば、昇進なり人脈作りができるか?    


 どっちにしろ、まだ子供の体だしやれることは限られてしまうだろうが、状況をよく見た上で考えるとするか。


  ------------------------------------------------



  翌日、父さんにいきなり衛士隊に連れて行かれる。


「職場に息子を連れて行くとは、いいんですか? 親バカと言われますよ」

「狼討伐の件があるしな,構わんのだ、皆が連れて来いと言ってた」

 

 そんな事鵜呑みにして良いのだろうか? 

職場の冗談程度では?  

まあ仕方がない、父さんがそれで満足するのなら。



 衛士隊の宿舎に入ると、10人ほどの衛士から注目される。   


「狼討伐の息子さんですか」

「思ったより小さいな、これで群れを全滅させるとは凄い」


父さんの部下達で、見知った人もいるが、ほとんど初対面だ。


 「衛士の推薦枠でテストを受けさせようとな、取りあえず連れて来た」

「おおお」


周りから声が上がる。


「普通はもっと大きくなってからだよな?」

「隊長の息子さんならとは思うけど、強いしな、でも確かに小さいし」


「まあ、駄目なら仕方ないが、 試しに受けさせてみるさ」


などと言いながら、父さんはかなり自信ありげだ。

やはりあれを見られたからだろうな。   


 こことは別の場所に衛士隊の本部があるそうで、そこに連れて行かれるという。

大隊長や他の隊の隊長などが試験を見るそうで、そんなの聞いていないんだけど、ホントに急な話である。


そりゃ、やれと言われれば、やりますけどね。


 本部は街の中心部にあり、ひときわ高く丈夫そうな建物で、役所関係と併設だろうし領主の邸宅にも近い、ここはめったに来ないところだ。

父さんはすたすたと入っていくので、遅れないように付いていくがゆっくり見て回りたい所なんだけど。


 進むほどに辺りは広く、立派な造りになっていく、城ほどではないが金のかかった建物で、床や壁が輝いているのは普段の暮らしでは見ない場所で新鮮だ。   


だが、同時に懐かしい感じがある、ずっとずっと昔の事だが。


 本部の一室、会議室だろうか、誰もいない部屋で待っているよう言われ一人になる。

15人ほどが入るスペースで、座って待つが手持無沙汰である。


持っている剣、父さんから貰った短めのものだがこれで試験となるのか、取りあえず抜いて素振りをしてみようかと思う。


 少しテーブルを動かし場所を作り、剣を構え振り始める。

傷をつけるとまずいので、その場での型だけ、動作の小さいのを行う。


準備運動程度から、徐々に気合を込めて、早くしていく。

昨日したよりも、ずっとカンを取り戻しているようだ。   


 気が体を流れていき、血や肉と合流して力となるのを感じていく。

呼吸とタイミングが合い、今までと違う(みなぎ)りとなる。


父さんから習ったこととは少し違う、向こうの世界の剣術を思い出す。

これを使っていいのだろうか、父さんは戸惑わないだろうか? 今まで教えてくれた事を思い出す、自分が来る前の事もだ。


 物心ついた頃からずいぶん懇切に指導されたようで、細かい指示まで覚えている。

肘や足の位置や、向き、力の入り抜きまで、様々な情景が思い浮かぶ。


自分が習ったのはもっとおおざっぱで、荒っぽかった。

少々のケガなど当たり前で、痛みがあるのもしょっちゅうだったのだ。

  

 仲間などは練習で大けがをしてしばらく動けなかったこともある。   

噂では死んだ者もいるとの事だった。


 そんなことを考えていてら、少し胸のあたりが痛んだ気がした。


「?」

手が止まる、 この程度で筋肉痛など無いはずだがと、胸を触るが異常はない。


 「自分は弱いから」


その時、そんな声が聞こえた気がした。




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