クリスタル・ロード 0049 目覚めるとき
ベットに潜り込んで、すぐに深く深く眠りに沈んでいく。
静かな闇の底に、でも嫌な感じはしない、温かく穏やかな底へゆっくりと沈んでいく。
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闇の中に 光っている物がある、あれは・・なんだろう。
細長い物が置いて・・・飾ってあるのか? 鈍く銀色に光る金属 剣か?
ずいぶん良さそうなものだ。
手に取ってみるとずっしりと重く、冷やりとした感触、鈍い艶、なかなかの品、抜くと刃の落ち着いた輝き、たぶん名刀だろうと、そんな気がした。
これをずうっと前に使ったことがある、自分の手の一部、体の一部となり、野山を駆け巡り振るったことがある。
この重さ、手ごたえを心強いと感じて、信頼して命を預けた日々があると確かに感じる、これは間違いなく自分の剣だと信じられる。
自分はその時子供ではなかった、確かに大人の体、それも屈強な鍛え抜いた体躯、何者にも負けぬように鍛錬を欠かさなかった体であった。
たとえ素手であっても並みの相手になど負けない自信があって、剣を持てば無敵と感じ実際に負けなかった。
自分の名は全土に広まり挑んで来る者を次々に倒した。
そして遂に一国の主となった。
そうだ、自分は領主、王だったのだ。
やっと思い出した、なぜ忘れていたんだろう、大事な事のはずなのに。
自分の強さ、戦い方も思い出した。
子供の体でも強さは発揮できるだろうし、これから鍛えるのも成長もできるだろう。
元の強さを取り戻せるし、その先もだ! 他の事も身に着ける。
それがやるべき事だと知った。
そう思ったとき、持っている剣が光の粒となって消え始め、粒はゆっくりと登っていくのが見える。
「仕方が無いか、こちらは別の世界。 剣を持ち込むことはできんな」
だがここの父に貰ったものが有る、まずはそれからだ。
「今まで世話になった、 達者でな!」
光となって、徐々に薄く、消えていく。
その向こうにかっての仲間たちの顔も見えた、彼らも徐々に消えていく。
「お前たちも達者でな、 安らかに暮らせ・・・」
そして、朝が来た。
あのおばあさんは怖い夢を見るかもと言ったが、怖くはなかった。
懐かしくて、また出会えてよかったし、別れも言えたのがありがたい。
あの人に会えたのは幸運だったと、つくづく思う、 あとでお礼を言えるといいが。
まだ朝早く、父さんは寝ているので外で素振りをするかと、剣を持って出ることにし、玄関へ向かうとちょうどあの人に出くわした。
「お早いですね、昨日はありがとうございました」
「年寄りは朝早いよ、 怖い夢は見なかったかい?」
買い物に行くところだったのか、かごを持っている。
「怖くはなかったです、大事なことを思い出しまして懐かしかったです」
「そうかい、そりゃ良かった、 子供なのにさ、つらいことだったろうにねえ」
ずいぶん優しい人だ、知らない相手なのに。
「いいえ、ありがとうございました」
頭を下げる。
「ああ、それと・・あんたの中の小さな魂、ありゃ生まれるはずだったあんたの双子なんじゃないかな? そう思うんだがね」
「ああ・・・」
双子じゃないけど・・ね。
「そうですね 」
そう言っておこう。
「もし何か困ったことがあれば、ギルドで聞きな 私は元呪術師のマギア・グラナダ 、そう言えば探せるよ」
その後すぐおばあさんは買い物に行ってしまって、自分は宿の裏庭で素振りをしに行き思い出した剣技を振るう、朝なのでなるべく静かにだが。
剣を持ち、まずはゆっくりと振る、縦に、横に、大きく、小さく、自然に身体が動く、剣を回し歩を進める、前へ後ろへ、斜めへ、重心を感じ取り、歩法をなぞり、呼吸と気の調和を図り、動作が流れる、 向こうでさんざんやったことだ。
すべて思い出せた、自分の剣技だ、 体に力がみなぎっていく。
剣が空気を斬る音がする、今は小さな音だが懐かしい。
剣が自分と一体になっていくのがたまらなく嬉しい。
夢中でしていたら日がすっかり登っていて1時間以上たっているようだ。
父さんは起きたろうかと部屋に行くとなんとか起きていて、酒が残っているのかぼうっとして、少しふらついているか?
「目が覚めましたか?、朝食、食べられそうですか?」
「ん、ああ」
「じゃ、今持ってきますから」
用は済んだし、早めに帰り支度をしないと夕方までに着けない。
宿の受付で、あのおばあさんに「帰ります」と伝言を頼もう。
またどこかで会えるといいがと思う、ギルドを通せばわかるそうだけどどうだろう?
この街へ来たことでずいぶんな収獲で、転機となった。
元はと言えば妙な依頼のおかげか?、何が幸いするかわからない。
それと、みんなお土産、気に入ってくれるだろうか?
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